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【読書感想文】出版禁止_死刑囚の歌

著:長江俊和

亀更新

 前回の更新からしばらく経ち、いつの間にか年も明けておりました。明けまして御目出度う御座います。

 この読書感想文を始めたのは「好きだからやってみよう」
だったのですが、次第に「やったら身になるかも」を求めてしまい、やがて「やらねば」になっていき、段々と意識が下流に落ちていった怠け者で御座います。

 新年を迎え、また「やっぱり好きだからやろう」に意識を取り戻しましたので、今年も亀更新で読書感想文楽しみたいと思います。

 今年も文字を通して色んな方に出会えたら嬉しいです。

 暫く更新していなかった間に、読むだけ読んでまだ感想文をまとめていない本がたくさんあるので、一月中に徐々に更新していけたらと思います。


放送禁止

 『放送禁止』というドラマをご存知でしょうか。

『放送禁止』とは、

「ある事情で放送禁止となったVTRを再編集し放送する」という設定の、“一見ドキュメンタリー番組だが実はフィクション”というフェイク・ドキュメンタリー(モキュメンタリー)(Wikipediaから引用)


「事実を積み重ねることが必ずしも真実に結びつくとは限らない」をテーマにしており、深読みせず見ると唯のドキュメンタリーであったとしても、作中の登場人物の行動や、背景に散りばめられた手がかりやアナグラムを解明することによって、視聴者が真実に辿り着く仕組みになっています。

 私は、昔から“人怖”や“オカルト”、“意味がわかると怖い話”が大好きで、こちらもそれに近いものを感じ、かなり気に入っているシリーズです。

 しかし、『放送禁止』シリーズはとうに全て観尽くしてしまいました。何度も繰り返して観返してはいますが、やはりこういった“意味がわかると怖い話”系は、意味を初めて解き明かした後のゾクゾク感を味わうのが最高だと思っていますので、何となく刺激不足を感じておりました。

 最近になって『放送禁止』の企画・構成・演出を担当した長江俊和さんが本を出版していた事を知り、「これは読むしかない」と思い、早速本屋へ直行した次第です。


映像、文章、どちらもそれぞれ最高

 しかし文章となると、「映像で味わうあの不気味さを感じる雰囲気や緊張感、背景に散りばめられた謎を見逃さないようにする感覚は味わえないだろうな」と思っておりましたが、
驚いた事に、文章でも禁止シリーズ独特の緊張感や感覚を十分味わうことができました!
 これは著者の長江俊和さんの文章力と構成力に脱帽でした。

 映像のシリーズと若干異なる点を挙げるとすると、
映像作品の『放送禁止』ではヒントは沢山散りばめられてはおりますが、どんどん場面が切り替わり、解明するには割と深くまで読み込まないと分からないので、全ての謎を解くには何週かする必要があります。

が、『出版禁止』は話が進むにつれてスムーズに謎が解き明かせたように思います。『放送禁止』とは媒体が違うからこその解り易さなのかな、と思いました。
 禁止シリーズが初めての方は、本から入ってみるのも良いかもしれません。個人的にはとても解り易かったです。

 ゾッと鳥肌がたつような“意味怖感”は、『放送禁止』の方が上でしたが、今作『死刑囚の歌』はゾッとするよりもかなり感動する話でしたので、またゾッとする感覚は別の作品の時に期待したいと思います。

 正直、今作は感動して泣きました。ゾッとする話も良いですが、こういう話も最高でした。

獄中歌人

「私達も、生まれたら死を宣告された囚人である。
しかし、人は他の動物とは違い、いつか死ぬ事実を知っている。
だから、死の恐怖に打ち勝つべく、祈り、拝み、救いを求める」

 今作には獄中歌人が登場します。死刑判決を受けた彼の、その生涯を追っていくのですが、彼が作った獄中歌がかなりゾクゾクします。
 第一印象としては、丸尾末広の『トミノの地獄』、カリガリの『君が咲く山』を思い出しました。かなりの不気味さを感じます。文章からここまでの雰囲気を醸し出せるとは、長江さんのセンスが素晴らしいです。

 生きること、信じること、死ぬこと、愛することー
様々な角度から人の生き様を見せつけられたように思いました。

 果たして、自分は本当の意味で生きられているだろうか。信じることができているだろうか。

裏切られる

 ネタバレに繋がりそうなのであまり今回の感想文に関しては深く書けないのですが、この話で1番面白かったのが、登場人物の印象が変わったことでした。
 話が進む度に読者は裏切られ続けます。今まで持っていた予想や偏見があれよあれよと覆され続け、最終的に行き着く先には読み始めとは違った景色が用意されています。

 この話はネタバレで真相を知るのは大変勿体無いです。
全てを自力で読み切る事によって最高のエンディングに辿り着くことができると思います。



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