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ちょっと学問的なフェミニズムのお話【7分でわかるフェミニズムの波】

おはようございます!
昨日投稿したフェミニズムの記事に対して
いくつかのコメントを頂きました
記事を読んでもらった上にコメントいただけるのは非常に嬉しいです
ありがとうございます!

さて、前記事の内容はフェミニズムのほんの一部分であり
かなり掻い摘んで説明させていただきました

今日はフェミニズムについて予備知識がある方向けの
少しマニアックなお話をさせていただこうと思います

今回は高橋幸さんの『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど—ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(2020)を参考に
【現代のフェミニズム】についてお話します

■多様化するフェミニズム

前記事では過激派フェミニズムと
そうでないフェミニズムがあるとお話しました

*社会学的の性格上どうしても一般的な事象を取り扱う為、全事象を網羅することはできません。なので「こんなフェミニズムのグループだっているよ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これから話すのはあくまで全体を俯瞰した時の傾向としてお考えいただけると幸いです。

実はフェミニズムと一言にいっても
考え方は様々です

例えばチママンダ・ンゴスティ・アディーチェさんがTEDx語ったスピーチ「We Should All Be Fminists(男も女もみんなフェミニストでなくちゃ)」が一躍有名になりました

彼女のスピーチの一部が歌手ビヨンセの「Flawless」という楽曲の歌詞に取り入れられたり、有名ブランドDiorがスピーチのタイトルを印刷したロゴTシャツを発売しました(なんと発売当初は7万9000円!)
ちなみに同じくGUもこのロゴTシャツを発売しました
(お値段は790円!)

フェミニストといえば外で働いて男性と同等の賃金を得ることを目標としていることが多かった中、

「いやいや、専業主婦として家庭を切り盛りするのだって大切なことだよ」
「女性よ家庭に戻ろう」

とハーバード大卒のフェミニスト、エミリー・マッチャーさんは著書『ハウス・ワイフ 2.0』(2014)で主張します

フェミニズムの思想は多様化してきているのが現実です
これらの思想の多様性を理解するには
フェミニズムの歴史を知る必要があります

■フェミニズムの歴史(第一派フェミニズム〜第二波フェミニズム)

まず、【第一派フェミニズム】についてです

第一派フェミニズムとは、19世紀から20世紀初頭までの女性の権利獲得運動を指す。女性の相続権や高等教育機会・就業機会、参政権の獲得といった形式的平等の獲得を目指した。(高橋 2020: ⅲ)

第一派フェミニズムとは参政権や財産権など、
現代の女性が当たり前に持っている権利を求めた運動を指します
一番わかりやすい為、フェミニズムを説明する時によく用いられているのはこの第一派フェミニズムであるかもしれません

現在80歳以上の方々が経験されたのがこの第一派フェミニズムです

次に、【第二波フェミニズム】についてです

1960年代後半から始まる第二波フェミニズムは日常生活の中の実質的な男女平等を求める運動と理論的営為のことを指す。運動は「ウーマンリブ(women’s liberation movement)」とも呼ばれた。(高橋 2020: ⅲ)

少し定義が難しくなります
「The Personal Is Political(個人的なことは政治的なこと)」
をスローガンとするウーマンリブが中心とされています

第一派フェミニストたちが目指した参政権や教育の平等がある程度実現された結果、女性の社会進出が進みました

しかし、社会進出した女性たちは

「大切な仕事を任されず、出世ができない」
「男性の同僚や上司から心ないことを言われる」
「上の世代の女性から働きに出ることを理解されない」

など新たな問題に直面します


これらは個人が経験したことであり、
自分が我慢すればいいと考えた女性もいましたが
周りの女性も同じ問題に直面していることに気づきました

したがって個人的な問題だと思っていたことは1人の問題ではなく
皆が抱えている問題であり、解決しなければとなったのです

スタートが個人的なことであることや
社会進出をした後の問題である為

この時代のフェミニストは
男性社会や目の前にいる上司や同僚に対して
意見を発信する必要がありました

また、個人的なことと片付けられることも多く
第二波フェミニストは強い主張をすることが求められたと言えます

そしてこの時代を経験したのが年表的に見ると
大体現在40歳〜60歳以上の方々に当たります

つまり、フェミニストの思想はどの時代に生き
影響されたかによって特徴があることが考えられます
そしてもちろん第一派フェミニズムと第二波フェミニズムの間に生まれたフェミニストたちがどちらの影響をも受けたことはあり得ます

全てのフェミニストが
第一派、第二波と分けられるとは限らず
フェミニズムの思想もスペクトラム化していると考えられます

■第三波フェミニズム

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では、現代のフェミニズムの特徴を見ていきましょう
ここで大切なのは第二波が第一派の影響を受けたのと同様に第三波も第二波フェミニズムの影響を受けています

第二波フェミニスト達が社会進出をし、様々な問題を挙げ解決に尽力した結果、現在目に見える女性差別はありません
そんな時代の第三波フェミニズム(90年代以降)の説明です

✔︎第一に、第二波フェミニズムの運動が中産階級の白人女性中心だった点を反省的に捉え直し、多様な人種やエスニシティ、経済的状況、セクシュアリティによる異なった「女性」としての経験という多様性を包括した運動を目指すという特徴が挙げられる。
✔︎第二に、フェミニズム運動が一枚岩的なものとして想定しがちだった「男性」や「女性」という二分法的概念や、「セックス/ジェンダー」という二分法の脱構築によって、既存のフェミニズム哲学を乗り越えた新しい思想的可能性を探究するという特徴がある。
✔︎第三に、女らしさを肯定的に捉え、多様な女らしさのあり方を実現していこうとする文化政治的運動(カルチュラルポリティクス・ムーブメント)としての第三波フェミニズムがある。(高橋 2020: 29-30 ✔︎は筆者付け)

ここでわかる特徴は
①色々な人種や民族、貧しい人も富のある人、皆の意見が反映されるフェミニズムを目指そう
②そもそも男性対女性という二元化した対決構造はやめよう
③女らしさを認めよう。色々な女らしさがあっていい
というものです

第二波フェミニズムが男性社会への主張を主としてきた為、どうしても男性対女性といった構図に陥りがちでした

それを見て育った第三波フェミニストたちは
そもそも性別って男性と女性の二つじゃないし
(ジェンダー*詳しくは別記事)
もっと皆で協力していこうと考えています

ここで注目していただきたいのが③の特徴です

【女らしさを認めよう。色々な女らしさがあっていい】

これは第二波フェミニストたちが男性社会に果敢に挑む姿を見て育ったことに大きく影響を受けています

第二波フェミニストたちは男性社会への強い主張をせざるを得なかった為、どうしても「怒っている」というイメージが付与されています
その「怒り」なくしてフェミニズムは成り立ちませんでしたが、その怒りが男性から距離を取られることとなったのが事実です

フェミニスト=モテない

ということもこのことに少なからず影響を受けているでしょう

このことを受けて
「私は男性が好きだし、距離を取られたくない」
「そんな差別する男性ばかりじゃないし仲良くしたい」

そう思った第三波フェミニストたちは
第二波フェミニスト達が男性社会へ進出する時に女らしさを手放した(*女を捨てた訳ではありません)ことに対して
女らしさをフェミニズムにも取り入れ始めました

男性への親和性が高いのも第三波フェミニズムの特徴です

■まとめ

多様化するフェミニズムでお話したことは
第三波フェミニズムの特徴と照らし合わせると理解ができます
第三波フェミニズムの最大の特徴は
「第二波フェミニズムから影響を受けて派生」
していることでした

第三波フェミニズム③の特徴である
【女らしさを認めよう。色々な女らしさがあっていい】
が示すように
第二波フェミニズムが社会進出を目指したことから専業主婦や家庭については注目しませんでした

しかし第三波フェミニズムは第二波が
注目しなかったことにスポットライトを当て
「専業主婦も素晴らしいことである」
と考えたり、

社会進出の際に
男性と対立しなければならなかった
第二波フェミニストたちが男性から
距離を取られたことを省みて
「女らしさを捨てずに男性とも仲良くやっていこう」
と考えるようになったのです

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フェミニストと一言でいっても
このように年代としての縦の多様性
考え方の違いとしての横の多様性

があります
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一つのフェミニズムと他のフェミニズムが相反することだってあります
矛盾があるからといって批判するのは
こういった背景が認知されていないことが原因です

多様化するフェミニズムは確かに理解しづらいです
この記事が少しでもその理解の助けとなれば幸いです

長い文章となりましたが、
最後までお付き合い頂きありがとうございました!

最後に引用させていただいた内容のリンクを貼っておきます
興味がある方はぜひご覧ください


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