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輝かしい世界

【輝かしい世界】
う…うう…まさか。まさかでしょ。
あああ!わたしは今、夢を見ているのか?
わたしの目の前に立っていたのは、先日亡くなったはずの彼氏だった。
あのときは、つまらないことでケンカした。
言い合いになり、言ってはいけない言葉を無意識のうちに発していた。
今ではとても自分自身のなかでは後悔していた。
ごめんなさい…と謝ろうにも謝れない状況下になっていた。
やり直せるものならやり直したい。
そう願っていた。
ああ…なんてわたしはバカで愚かだったのだろう。
そう思えてき…た…。考えていたらわたしは意識を失っていた。喋ることさえもおぼつかない。
わたしはいったい何がしたかったんだろうか。
なぜ?なぜひとこと謝れない?
なぜ謝ることが謀れるのか。
わたしのプライドがそれを邪魔する。
いったい今わたしの身に何が起こっているんだろう。
やり直せるの?チャンスをくれたの。神さま。
今日はクリスマスだ。
きっと神さまからのクリスマスプレゼントに違いない。
先ほどまでの血溜まりは跡形もなく消し去っていた。
後頭部を殴られてうつ伏せに倒れていた彼氏が今わたしの目の前に立っている。
これは夢なのか?いや、夢であるはずがない現実だ。
それならさっきまでの出来事はなんだったのだろう。
あ…あの…さ。賢一…大丈夫?
は?おまえ何いってんだよ。さ、クリスマスだろ。
ケーキとか買ってきたんだぜ。乾杯しようよ。
う…うん。ありがとう…
なんだか、わたし自身は正直いって何だかスッキリしない気持ちだった。
それはそうだろう。さっきケンカして口論になり近くにあったガラスの一輪挿しの硬い部分で思い切り彼の頭を強打したんだから。手にはまだ微かに感触さえ残っているし。
時間が戻ったの?いや、戻されたと言った方が早い。
リモコンの早戻し押したように。
シャンパンあるんだろ?冷蔵庫に…
え?ああ、そうね。あるわよ…
恵子は賢一に促されてキッチンに向かう。
…あれ?わたし、シャンパン買ってあること賢一に言ったかしら…?
シャンパングラスとシャンパンを持ちながら、考えていた。
リビングに向かうと賢一は姿を消していた…
…け、賢一?どこ…
すると背後から突然、首を絞められる。
う…うう…く、苦しい…わたしはそのまま、意識を無くして倒れこんだ。
顔を床に当てながら、苦しみながら背後を見ると、賢一が物凄い形相で睨みつけていた。
さっきのお返しだよ。恵子…
わたしは、そのまま死んでしまった。
わたしはフワフワと宙を浮いてるようだった。
なんだか、軽い…身体の重さを感じない。
何なのかしら…わたしは部屋の中で浮いていた。
あッ…わたし。
わたしは床に倒れて白目を向いている。
え…わ、わたし?死んだの?
よく見てみるとそばに賢一が立って微笑んでいる。
さっきはよくも俺のことを死なせてくれたな。恵子。
賢一…わたしは、わたしは反省したのに。
あなたを殺してしまったと心から悔いて反省したのに。
あなたは…あなたは…あなたはそういう気持ちだったの?
何だか…虚しい…空しい…悲しい。
わたし…このまま、天国にいくのかしら。
そんなことあるわけない。一度は賢一を殺してしまった身。
わたしに天国なんてない。
行くのは…真っ逆さまの地獄の闇の中。
わたしは堕ちる決心をしていた。すると…
パァ…と眩いばかりの光の輪に包まれる。
なんだろう…すごく温かい。この優しさに包まれる感じ。
ごめんなさい…ごめんなさい。わたし間違っていた。
人を欺いたり騙したり憎んだりしたこともあった。
でも、それはいけないこと。やってはいけないこと。
人は人として生きていく上で人のためになることをしなければいけない。そのためにこの世に生を受けてきたんだ。
そう思った瞬間にわたしは、身体に戻っていた。
はッ!目を覚ますとわたしは部屋の中に佇んでいた。
わたしは今まで何をしていたんだっけ?
思い出せない。そのときだった…ピンポーン、ピンポーン!
入り口のインタフォンが鳴った。
カメラをみると彼氏の賢一が荷物を抱えてカメラを見ていた。
おーい恵子ぉ…開けてくれー。俺だよ俺。
クリスマスだろ?いろいろ買ってきたんだよ。開けて〜。
そうか…今日は彼氏とクリスマスだからって約束してたんだっけ?何だか夢を見ていたみたい。なんだっけ?
ちょっと待ってね〜賢一、今開けるから…
わたしは今とても幸せだ。左手の薬指がそれを物語っていた。
わたしの未来は明るい。輝かしい世界がこれからは待っている。
入って…どうぞ。いらっしゃい…痛ッ!
どうしたの?恵子…
ん?あ、ガラスの破片が落ちてたみたい。
大丈夫?ちょっと見せてごらん。
賢一は丁寧にガラスの破片を取り除いてくれた。
ありがとう…賢一。優しいね。
ほんとに大丈夫?気をつけてね。
「人生何がこの先に待ち構えているか分からないからね…」
と不適な笑みを浮かべてこっちを見つめていた。

〜Lime〜

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