最後の手紙
最後の手紙
わたしには祖母がいた。
祖母はわたしには厳しかった。
何でわたしだけ……と思ったこともあった。祖母には子供が5人以上いた大家族であった。
つまりわたしには親戚が大勢いる。
わたしの父は地元から出稼ぎで都内で働いていた時期に母と知り合った。
つまり父だけは他所者から嫁をもらったことになる。
ああ、そうか。だから祖母はわたしにも辛く当たるのか。そうずっと思っていた。
そんな祖母も身体を壊して入退院を繰り返していたが、とうとう入院することになった。
親戚はそんな祖母を煙たがり、介護をしようとしなかったため、わたしが祖母の面倒を看ることになった。
[人間の本質はいざというときにわかる]とはこのことを言うのだろうと若いながら実感した。
今まで厳しかった祖母が小さくみえた。
祖母は優しくなった。まるで小さな子供のように見えていた。
歳を重ねると子供返りするというが、あれは本当なんだと実感してきた。
しかし、祖母は亡くなる少し前から今までを振り返るように……。
あたしゃね。あなたが小さな頃からずっと厳しくしてきたことを後悔したことはない。
わたしがあなたに厳しくしたことは、これからのあなたに返ってくる。きっと役に立つ日が来ると信じて。
言われる側も辛いだろうけど、言う側はもっと辛いんだよ。分かるかい?
それが祖母と話した最後の会話だった。
雨の夕方、恵美は窓辺に座り、亡くなった祖母からの最後の手紙を読んでいた。祖母がわたしにだけ残してくれた手紙だった。
その手紙は介護ベッドのそばの引き出しの中にそっと身を隠していた。祖母の愛用していた花柄のハンカチに包み込まれるように、優しく抱かれるように。
彼女は、祖母とこれまで共有した瞬間を思い出して、涙が溢れてきた。
手紙には、祖母が人生の小さな喜び、自然の美しさ、そして毎日を大切にする重要性について語っていた。「人生は雨のようなものよ、愛しい私の孫よ」と手紙には書かれていた。「時には陰鬱に思えるかもしれないけれど、それが地球を潤し、新たな成長をもたらすの。」
その言葉の深い意味と祖母と最期に交わした言葉が私の頭の中を駆け巡っていた。
恵美は手紙を胸に「ギュッ」と抱きしめ、祖母の愛を墨で刻まれた言葉から感じ取っていた。
これまで、祖母への想いが覆されたようだった。
何でわたしだけ……?
そう思っていた自分に腹立たしかった。
祖母はすべてを見抜いていた。
人間、いざというときにその本質がわかる。
彼女は祖母の遺産を受け継ぎ、祖母から今までもらってきた愛情と勇敢な心で人生の挑戦に立ち向かうことを決意した。
窓ガラスに打つ雨粒の音に微笑みながら、恵美は気づいた。祖母はいつも彼女とともにあり、最も長くて暗い夜を導いてくれるのだと。
これからも辛くて悲しい日が来るだろう。
しかし、今の彼女には力強い祖母の愛情がある。
祖母はいつもわたしを見守ってくれている。
あの温かい眼差しで。
彼女は手紙を封筒に戻し、その中に込められた愛と知恵が永遠に心に刻まれることを知った。
半分はわたしの実体験です。
わたしの祖母は100歳以上生きた素晴らしい人です。
〜Lime〜
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