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【SS】放課後ランプ|#毎週ショートショートnote

「そろそろ研究所入り口脇のドウダンツツジを剪定しないといけないな、井上」
「西側に咲いている花が終わったらします、博士」

植物学者の木下教授と助手の井上は、窓の外を見ながらそんな会話を交わした。

「そう言えばこの間、立方さんがドウダンツツジのドウダンって何のことですか、と聞いてきたぞ。井上、教えてやれ」
「ええっ?」

博士は最近、自分と立方さんを何故か縁結びさせようとしている…と井上は思った。確かに立方さんと自分は中学が同じで縁があるといえばあるけれど…

一方、立方さんも中学時代のことを思い出していた。校内の花壇や植樹を支えていたのは、一学年上の美化委員井上。放課後、一人黙々と作業する井上をいつも窓から眺め感心していた。

窓下のドウダンツツジのスズランに似た花に手を添え水やりする井上に、まるで自分が労わられているような感覚を覚え、スズラン型ランプシェードのように首を下に向けて頬を染めていたあの頃のことを。

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久々の『博士と助手』シリーズです。
季節の植物として、ドウダンツツジを出しました。
漢字で書くと『灯台躑躅』…で、この『灯台』の読みがトウダイからドウダンに変化したようです。何故灯台なのかは、この木の枝分かれが昔夜間の明かりに用いた灯台(結び灯台)の脚部と似通っていることに由来しているそうです。
さて、井上は立方さんに説明する機会があるのでしょうか…

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