シュークリームはもともと、礼儀作法にうるさいフランスの貴族が、客人を試すために考案した菓子だという。

ーー　えっ、シュークリームって、食べ方とかに何か作法があるの？

あるんだよ。ナイフとフォークが一緒に出てきたら、君ならどうする？

ーー　使わないから横によける。

おやおや、そのままかぶりつくのかい？フランスの貴族の前ではやめた方がいいと思うよ。まぁ、君は可愛いから何をしても許されるとは思うけれどね。

ーー　ふふふ。可愛いは正義よ！でも、あなたから「可愛い」なんていうセリフが聞けるなんて… 一体どうしたのかしら？（ドキドキ）

まぁ、話しは最後まで聞きなさい。シュークリームの皮の横に切れ目が入って、フタみたいになっているだろう？そのフタの方の部分をまず手にとり、そこにフォークでクリームを載せて食べる。フタを食べ終わったら、ナイフで一口大に切りながら食べるんだよ。

ーー　そうなの？面倒くさいわ。そもそも、フランスの貴族とシュークリームを食べることなんか、一生無いと思うから、関係ない話だわ。そんなことより、今日はどこへ行くのかしら？あなたのお友達に会うような話は聞いていたけれど。

そうだね。海外出張で知り合った人なんだ。とても気が合って、彼が今度日本に来て「君の可愛い彼女を是非見たい」と言っていたから、今日呼んだんだよ。

ーー　私って、あなたの彼女なの？えっ？本当に？？？（嬉しくて興奮）

気がついてなかったの？僕の気持ち… それは、かなりショックだな。言わなくても、伝わっているかと思っていたんだけど。ごめん。なんか今頃みたいだけれど、僕と付き合ってください！大事にします。

ーー　そうだったらいいな、とは思っていたけれど。ううん、とても嬉しいです。こちらこそ宜しくお願いします。キャッ、晴れて彼女として堂々とあなたの隣にいられるのね。あなたに恥をかかさないようにしなくちゃ、だわ。ところで相手の方って、外国の人？

うん、フランス人なんだ。彼は食後のデザートに、必ずシュークリームを食べるんだよ。だ・か・ら… さっき言ったシュークリームの作法、覚えておいてね。なんか親戚が貴族の末裔らしいし。

［約700字］

Sheafさんの『ストーリーの種 20』から書き出しをお借りしました。
シュークリームの食べ方にマナーがあるのは本当ですが、マナーのために作られたお菓子ではないです。手で半分に割って食べてOKだと思うし、一口シューをナイフとフォークで…なんて逆にギャグだと思うし。

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