おトイレ事情と膀胱炎

旅先で地味に困るものにトイレも含まれると思う。やはり旅先のトイレというのは誰しも初めましての一見さん。ましてや海外となると様式も異なり勝手が分からないことも。だが、モロッコの観光地では普通の洋式トイレも珍しくなくなった。ただし旧市街を除く、、、。

私の職場は旧市街全般がフィールドということもあり、毎回同じところのトイレを使うという訳にはいかず。ご丁寧に標識もあるところもあれば、この辺りのエリアのトイレはどこ?とトイレ迷子になることもしばしば。だいたい、私の統計上モスク付近(ここで言うモスクは地元民用のローカルモスク)にトイレがあることが多いのでそのあたりが狙い目。ローカルモスクのおトイレと言えど、ここはマラケシュの旧市街で日常的に観光客も溢れんばかりということからか、ご丁寧に1つは様式トイレが設置されていたりする。(足の不自由な方向けの可能性もある)時々この個室をめぐって外国人が列を成していることも。まぁ、大き目の観光施設や観光客向けレストラン、博物館・美術館などであればスタッフに声をかけるとたいてい併設のトイレを快く使わせてくれる。

さて、このローカルトイレではご存じの通り、チップ制なのだ。こともあろうか私のケチさがこういう時に発揮される。たかだか1回20円とかそのくらいなのに、何で用を足すのに、、なんて染みついた固定概念が邪魔をする。しかしふいにやってくる尿意には抗えないところを、移住当初は相当にがまんした。がまんしてがまんしまくって、家に戻って命からがら漏れる瞬間トイレに駆け込むなんて危ない行為を繰り返していたのだ。それが祟ったのか、人生初めての膀胱炎になった。これまでさほど珍しくない病気との認識はあったが、己のこととなると地味にじわじわ辛い体験であった。残尿感によるすっきりしない感、おトイレ中に患部が痛むなど。とうとう血尿が混じりだしたあたりでやっと病院へ。紹介してもらった病院がまたなんともひっそり個人経営しているところだった。歯医者とからなら分かりやすく入れ歯の模型やイラスト看板などでアピールされているのだが、個人の医院となると、え?本当にここに病院があるの?とうっかり素通りしてしまうようなレベル。見上げるとちゃんと看板はあるのだが。私が訪れたのは周辺にホテルも多く、普段観光客も大勢通る通り添いの階段を上った2階にあった。入ると、やたら薄暗い空間に床は大理石のようなピカピカでツルツルした石の床。モロッコは石の産地だったりするからこういうのはふんだんに使えるのかな、なんて想像。秘書兼受付担当のお姉さんに説明を済ませると、待合室でそのまま待機。実は当時、現地での初めて訪れた病院ということもあって密かに緊張していた。すると、若い女の子が母親と連れ添って診察室と思われる部屋から出てきた。次の診療日の予約を確認しいたので、通院中なのかな。まぁ見たところ、極端に裕福でもなく中流といった感じか。もちろん貧乏人は病院なんて通えないよな、と先ほどの道端でのたうち回っているじーちゃんの姿が思い出される。なにより、ちゃんと私の他にも患者がいて少し安心した。

それから間もなく私の番となり奥へ通される。入ると、でんっと角ばった大きな机に居座った身長の高そうな男性が現れる。机には分厚めの書籍と書類が整理整頓されて置かれ、プラスチック製のペン立てに数本のペンがおすまししている。ななめ後ろには小さ目の人体模型もあったような。なんというか、いかにもドクターという感じなのだ。日本の医者だと患者と最初から距離が近く、こんにちは~なんて医者からご機嫌伺いしてくれていた。しかし、こちらははじめに机を挟んでの無言の対面。いかにもドクターへ面会というような、患者とドクターのすみ分けがされているようでなんとも威厳がある。その後症状を説明すると、ドクターがひょいと腰を上げこちらの近くへ歩み寄り適当に脈などチェックした後、隣のベットで腹部を触られ痛むところはないかと問われた。後はお薬の説明で終わり。何ともスマート。初めは緊張したけど、終わってみると妙にあっさり。処方箋を手にすればもう無敵、というか街中には薬局が大量に溢れており迷う必要がない。薬の力ですっかりさっぱり治ってしまった。これぞ医学の力というものか。時々思うのが、こちらの錠剤のサイズが大きく、一回りから二回りは大きい。錠剤をがぶっと飲み干すが、結構な確率で喉にひっかかる。やれやれ、アジア人はここでは小人扱いかな、、。お国が変われば薬のサイズも当然変わってくるという地味な話。それなら錠剤を半分だけ服用したら、と思ったが通常の2倍速の効き目?とあってかとにかく治りは早かった。

余談であるが、膀胱炎の件を上司に報告すると、誰かと肉体関係があったかと真っ先に疑われたがはなはだしかった。息をするようにあらゆる対象に対して”疑う”というスキルを使いこなしているモロッコ人。(いや、世界中か?)ストレートに信じてもらえない、という文化にも必死に染まろうとしていた当時の私。失敗続きで、馬鹿正直だけは中々変わらず、、、またそのあたりも記していきたい。

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