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天然石の伝説や物語

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天然石の伝説や物語をまとめてみました
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記事一覧

めのうの魔法

女神アフロディーテが木陰で昼寝をしているとき、 キューピッドが矢を放ち、その爪を切り取ってしまい、 有頂天で空を飛ぶうちに、インドに落としてしまいました。 ハラハラと落ちていく赤い爪。 それが石になり、めのうとなりました。 アラビアン・ナイトでは、ジェノバに住むマリアム姫は、 水晶に映った男に恋をし、めのうを使って呼び寄せます。 あちこちで採れるインターナショナルな石。 日本でも『日本書紀』にその名が出てきます。 人づきあいをよくして、友達を増やす石、 似た者同士を惹

夏の妹、アクアマリン

エメラルドの親しみやすい妹、アクアマリン。 鉱物学上は同じ緑柱石(ベリル)の一種。 ラテン語で『海の水』を意味する、 船乗りたちのお守り石。 アクアマリンの原石は、たいてい緑がかっているので、 研磨するときに熱を加え、わずかな緑をとりのぞき、 純粋な青に仕上げます。 アクアマリンは、若さと知性を象徴する石。 血なまぐさい伝説などもない、イノセントな夏の石。 古代ローマでは、昔の恋人の愛を取り戻す石とされていました。

黄金に狂う

ミダス王 ―― 触れるものすべてを黄金に変える男。 ある朝起きると、ふれるものすべてが 黄金に変わることに気づきました。 王は狂喜し、城中のあらゆるものに触れては 黄金を増やしていく。 なにもかもまばゆくきらめく黄金の城。 ある日「お父さま」と走り寄ったかわいい王女を、 思わず抱きとめてしまう。 刹那、キンと乾いた音が響き、 黄金の少女像が立っていた。 黄金という欲望に狂った王と、 一瞬それを忘れさせた清楚な王女。 黄金らしいといえば、黄金らしい伝説。 熱に強く

銀と3人の女神さまたち

銀は月の金属。はるか古代からの伝説。 勇壮な月の女神ディアナは、銀の衣服を 身にまとっているとされています。 19歳のバースデーに、 銀の指輪を贈られると幸せになる 「恋の矢」という伝説。 大人になる一歩手前の年齢が、いかにも銀らしい。 一方で、オオカミ人間を殺すのは銀の弾丸。 ケルトの女神、アリアドネが住まう『銀』のお城。 そのお城は、死んだ英雄の魂が昇る場所。 少女の金属でもある『銀』 勇敢な金属でもある『銀』 静かに、冷たい光をたたえる『銀』 その多面性も3人の

英雄が零した、赤い血の珊瑚

ギリシャ神話によると、 ペガサスに乗った英雄ペルセウスは、 通りすがりに絶壁に鎖で繋がれた美女、 アンドロメダを救います。 その時に流れた怪物ゴルゴンの末っ子、 見た者すべてを石に変えるメドゥーサの血が 海へ流れ、海藻がメドゥーサの血で 赤い石 ―― 珊瑚になった と言われています。 紀元前2万年前の頃まで 歴史を遡れるさんごは、 日本では『七宝』のひとつとされ、 昔は僧侶か武将しか持てない貴重な宝玉でした。

狩人の夢、オパールの鉱山

狩人が昼寝をしていたところ、夢の中で 虹のようにきらめくカンガルーを見つけました。 狩人はさんざん追い回して漸くしとめることができ、 お腹いっぱい食べることができました。 ところが、さすがに一度では食べきれず、 狩人は丘の上に穴を掘って残りの肉を埋め、 目印に槍を立てました。 そこで目が覚めた狩人は、あまりのリアルさに 夢の中での道をその通りに駆け出しました。 すると、夢で見たままの丘があり、 目印の槍が立っていたのです。 その場所を夢中で掘っていくと、 土の中から

エジプトの夜、ラピスラズリ

ラピスは、ラテン語で「石」。 ラズリは、ペルシャ語で「青」。 日本語でラピスラズリは「青金石」。 ラピスラズリは数種類の鉱物が混じり合って あの美しい青を作り上げています。 金は、黄鉄鉱。古代エジプトで崇められた石。 主神オシリスにささげられ、 死者の旅路を守るとされていました。 エジプトに伝わる『死者の書』 その140章にラピスラズリが登場します。 ラピスラズリを目の前に切り取り、 黄金でふちどった『ラーの眼』が護符として強力だと。 アッシリアやバビロニアで出土した

奴奈川姫の翡翠伝説

高志国の奴奈川姫は、翡翠を加工する人々の長として、 祭祀をも司っていた美しい巫女で、 自分の領土でとれる翡翠の勾玉を首飾りにして、 いつも身につけていたそう。 出雲国の大国主命が、奴奈川姫に激しく求婚。 しばらくの間、高志国で奴奈川姫と仲睦まじく過ごします。 大国主命は、父の死をきっかけに 奴奈川姫と共に出雲国へ帰ろうとしますが、 奴奈川姫はそれを拒みます。 しかし、大国主命は、奴奈川姫が寝ている間に舟に乗せ、 高志国から連れ去りました。 奴奈川姫は、なんとか舟から逃げ出

護符のターコイズ

真夏の宝玉、ターコイズ。 アメリカ南西部に住むプエブロ またはナバホ・インディアンたちの護符。 母なる大地と父なる大空の申し子。 神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の侍医は、 ある日落馬したのにケガひとつせず、 かわりに石が割れていたと文献に残っています。 中近東では、王様や貴族が旅の護符として珍重。 持ち主に危険がせまると、まっぷたつに割れて 身代わりになってくれるとも。 濁った土耳古玉の空へ かるく輝く風船だまが 繻子の月の浮き沈み 絹の胡蝶のやうに浮く ―― オスカー

暗闇を照らす赤いガーネット

ガーネット ―― 和名『ざくろ石』。 岩の割れ目からのぞく結晶が、 はじけたざくろのつややかな赤い種子に似ていることから、 この名がつきました。 古代エジプトでは、ペンダントとして首にかけると、 暗闇でも目が見えると言われた石。 ノアの方舟を明かりの代わりに照らしたのも この石だったとか。   いつもはこわがりやのスニフが、 たったひとりで暗い谷間に降りていく。 赤い光に誘われて。――『ムーミン谷の彗星』より

狂気をいやすムーンストーン

インドでは聖石とあがめられたムーンストーン。 僧侶たちはこの石をしまうのに、 黄色の布しか使わなかったとか。 イギリス国王エドワード6世、法王レオ10世は、 不思議なムーンストーンを持っていたと言われています。 石にひそんだ銀の光が、月の満ち欠けに従って 大きくなったり、小さくなったり。 そればかりか、月の運行そのままに、 石の表から裏側へ光が一回転したそう。 和名は、月長石。 中世の宝石書によると 月長石は、月に恋している石 なのだそう。 昔から、満月の日には人

トパアズの起源

黄色い石の代表、黄玉(トパーズ)。 トパーズの語源『タパス』は、 サンスクリット語で『火』を意味します。 古代エジプトでは、この石を 太陽神ラーの象徴 として崇めました。 エジプトの美人王妃アルシノエI世が、 夫のプトレマイオスII世の殺害をたくらみ、失敗。 その流刑地が、紅海に浮かぶ小島トパゾス。 島の太守はこの優雅な囚人をなぐさめるために、 太陽のように輝く黄金の石を贈ったと言われています。 それがトパーズ。 タパスではなく、島の名前『トパゾス』が、 この石の名の

エメラルド聖杯伝説

はるか昔の天上界のお話。 大天使ミカエルが天使の軍団を率い、 ルシファー率いる悪魔軍団と戦い、 まばたきを三度する間に戦争は終結。 最後の一撃でミカエルの剣が ルシファーの冠にはめ込まれた 大きなエメラルドを叩き落とし 勝敗を決したのだとか。 天使たちは、とある山の頂にこの戦利品を隠し、 配下の騎士たちに守らせました。 キリストの最後の晩餐に用いられた聖杯は、 このエメラルドをくりぬいて作ったものだという説も。 イエス・キリストが磔にされたとき、 傷口から流れ落ちる

アメシストの悲劇

ある日、酒神バッカスが酔った勢いで トラ(ピューマという説も)をけしかけ、 最初に出会ったヒトを襲わせようと 待ち伏せをしていました。 そこへたまたま通りかかったのが、 美しい少女、アメシスト。 驚いたアメシストは、主であった月の女神 アルテミスに助けを求めます。 すると、アルテミスはアメシストに魔法をかけ トラにかじられそうになった瞬間、 彼女を水晶にかえて守りました。 その後、酔いから醒めたバッカスは、 罪を懺悔してその水晶に極上のぶどう酒を注ぎます。 すると、水晶