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Q&A ファッションデザイナーに必要なスキルについて

こんにちは。フリーランスでファッションデザイナーをしているchisatoです。

※以下は2020年8月に別サイトにて投稿した記事の転載となります。


遅ればせながら、昨年よりSNSで発信することを始め 他の方達との交流もさせて頂いている今日この頃、ファッションデザインの仕事について質問を頂戴する事が増えてきました。ご質問に対してはその都度お返事をさせて頂いていますが、同じ様な質問を他方から頂く事もあり、もしかすると他にも知りたい方がいらっしゃるのでは無いかと思い、このブログで内容を共有することと致しました。

ケース1.ファッションデザイナー志望の社会人の方より
Q : ファッションデザイナーである時にパターンと縫製のレベルはどの程度まで必要か?

この質問に関しては、まず前提として私のバックグラウンド(私はコレクションに参加する様なラグジュアリーブランドで働いた経験はないので、工業製品を作るアパレルの企業デザイナー、商社・OEMデザイナー、現在はフリーの経験)をベースに見解を述べていきたいと思います。(ブランドの在り方が違うと、デザインやパターンに対してのアプローチも変わり求められるスキルも各々で変わってくると思いますので、その点ご留意ください。)


A : わかりやすい指標を設定するとすればパターンはパターンメーキング技術検定2級位。縫製はシャツ/テーラードJK/ファスナーあきスカート/前あきパンツ/ 裏つきコート等のアイテム、素材は薄地/中肉/厚地/合繊/綿/ウール/ジャージー/革やドレス等の特殊素材、基本的なアイテムや素材感を企業に入る前に学校等で経験した方がベター、と考えます。


パターンについて...

デザイナーは立体や製品を見てパターンの形状を想像できる感覚が必要なので パターンの基礎知識は頭に入れておいた方が良いでしょう。働きながら現場で養う知識の方が多いですが、基礎知識がないと現場でのやり取りにすら苦労してしまうと思うので、学校で基礎知識を学びながら、ご自身でも積極的に作品づくりをし、その中で作図も行っていく事をお勧めします。

実務においては、自分がデザイナーである場合 デザインを型紙に起こす際にはパタンナーにデザインの意図を伝えながらどの様な仕様にするか、どの様なパターンが良いのか希望を伝える必要があります。

例えばテーラードの上衿、衿腰 (月衿、三日月台衿)つきと、上衿を折り返すだけの形状では前者の方が うしろ衿に高さが出て首に沿うシャープなイメージ、後者の方がナチュラルで優しいイメージと、衿ひとつにしてもパターンや仕様によりイメージが変わってくるのです。

テーラード上衿衿腰つき

テーラード衿_アートボード 1

https://zozo.jp/shop/bosch/goods-sale/52016308/?rid=1006


テーラード上衿折り返しのみ

テーラード衿-02

https://zozo.jp/shop/rosso/goods-sale/52149846/?rid=1006

パターンの知識があれば、自分のイメージを言語化することができ パタンナーとの意思疎通もスムーズになります。また一旦出来上がった立体やサンプル等の製品を修正する際も、パターンをどの様に修正して、どう着地させたいのかを明確に言語化することで より良いものが生まれるという事に関しては、パターンの理解度と基礎知識は必要になるでしょう。

また別のケースでは中国や韓国などの海外工場で生産をする際 多くの場合、現地工場のパタンナーが製図をします。海外のパタンナーだと文化の違いやトレンドの違いにより、日本側のデザインの意図の汲み取りが難しい部分が多々あり言語的イメージだけでは思ってもみない形が上がってくる事もしばしばなのです。

その為仕様図や展開図など図解が必要であったり、細かく寸法を示した数値的な指示が必要になってくるでしょう。こういう細かい指示を記したものは縫製仕様書と呼ばれ、海外生産をする際にデザイナーが縫製仕様書を作成する場合が殆どなので、パターンの知識は不可欠と言えます。


ちなみに コチラ↓ は私が過去に作成した縫製仕様書。大体の情報は画像の様な形で1ページ目に記載し、より詳しい説明がある場合や、刺繍等ガーメント以外のデザイン指示がある場合は2ページ目3ページ目に続けて記載していきます。

画像3

CAD等ソフトウェアを扱う東レACS(株)さんのページに海外生産における縫製仕様書についての記述がありましたので合わせてご紹介します。


私の服飾専門学校時代は この縫製仕様書の書き方までは学校で習わなかったのですが、商業デザイナーのトップクラスで頻度の高い業務が縫製仕様書の作成ではないかと、、昨今 専門学校のカリキュラムに入っているか存じ上げませんが、是非学校で習っておきたかったスキルだと個人的には思います。


縫製について...

極論、今のアパレル 産業における企業デザイナーの職種では縫製ができなくても働ける企業は沢山あると思いますが、縫い方を知っておく必要は絶対的にあります。アパレルメーカー、商社、OEMメーカー、どの企業にも共通して言える事ですが デザイナーがパタンナーに依頼をする際、デザイナーが縫製工場に縫製仕様書を以って依頼をする際、縫い方が理解できていないと第三者に依頼はできません。

デザインをする上でも素材の特製を考慮しながら適切な縫製仕様を選択する事は非常に重要だと考えます。例えば、薄手のシフォンスカートの裾始末。 ルイスにするか、三つ折りにするか、メローにするか、どの仕様を選ぶかで裾のニュアンスが変わってきますので、自身でデザインの方向性を見据えて縫製仕様を選ぶ必要があります。縫製仕様による仕上がり具合の違いの理解度があれば 想像力を膨らませる事ができ素材にマッチした素敵なデザインに繋がるでしょう。

ベストな選択をする為に、縫製仕様の原理を理解しておく必要があり、その理解は自分で縫ってみて、経験して得るものだと思います。

実務的なところで言うと、デザイナーが自身のデザインの部分縫いを作ってパタンナーや工場に指示を出したり、突貫工事でサンプルなどの修理を行う場合もあったり、、日々のちょっとした業務でミシンを踏む機会もある事を考えると基本的な洋裁スキルはあった方が便利であると言えるのではないでしょうか。


以上。
ファッションデザイナーに必要なスキル、パターン・縫製のレベルについてでした。最後までお読み頂きありがとうございます!

次回はハンドメイド作家を目指しておられる主婦の方からご質問頂いた内容についてお話させていただきます。それでは、また。



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