見出し画像

ピナ・バウシュ『カフェ・ミュラー』ヴッパタール舞踊団(映像)

1978年初演の『カフェ・ミュラー』。ヴッパタール舞踊団のダンサーたちによる公演で、振付のピナ・バウシュ自身も踊った。以前も映像で見たことがある作品だが、オンラインで公開中の今、あらためて視聴。

薄暗い、閉店後(?)のカフェを模した舞台セット。

目を閉じているらしい、薄いワンピースをまとった女性ダンサー2人が、夢遊病者のように歩き回る。ウェイターのような男性が、1人の女性の動きに合わせて、彼女が椅子に激突しないよう、並べられたたくさんの椅子をよけていく。それでも女性は椅子にぶつかり、男性が椅子をよける音もして、物音が騒がしい。女性2人は壁に衝突したりもする。

所々で、オペラのような歌が流れる。音楽が途絶えると、ダンサーたちの荒い息遣いや足音などが響く。

最もよく言及され、映像が抜粋上映されることが多いのは、女性と男性が抱きしめ合っているのを、別の男性が2人の腕をほどき、2人をキスさせ、男性の両腕に女性を乗せる、が、男女は人形のようになっていて、男性の腕が緩み、女性は床に投げ出される、が、その瞬間に男女は再び抱きしめ合い、先ほどの男性が戻ってきて、男女の腕をほどき・・・、というのが何度も繰り返されるシーンだろう。

数えてみたら、9回ほどこれが繰り返され、10回目から20回目は、男性の「操作」なしに、男女が自ら、操られるように同じ動きを繰り返していた。この場面が終わってからも、終演までに、同じ動きが1回ずつ、三度行われていた。

たぶん同じ男女で、女性が別の男性に持ち上げられて、横たわっているカップルの男性の上の空中を歩くようにする動作も印象深かった。女性は夢の中を漂っているよう。

ほかにも、男性数人や、ヒールの靴をカツカツ鳴らしながら、おどおどと男性を追い掛け回す女性などが登場する。その女性は、黒いコートと靴を脱いでワンピース姿になり、ゆっくりと踊ったりもする。

痛ましさや滑稽さ。愛は盲目?愛の不可解さ?

見ていて心地いいわけではないが、クセになってしまう、ピナ・バウシュ作品の摩訶不思議さがよく表れている代表作の一つなのだろう。

作品情報

Pina Bausch
Café Müller (1978)
Duration: 49 minutes

Café Müller
A piece by Pina Bausch
Music - Henry Purcell
Director and choreographer - Pina Bausch
Set and Costume Design - Rolf Borzik
Collaboration - Marion Cito, Hans Pop

Malou Airaudo, Pina Bausch, Meryl Tankard, Rolf Borzik, Dominique Mercy, Jan Minarik

Premiere 20 May 1978, Opera House Wuppertal

▼動画

▼ダンスのレビューなどは「ダンス評.com」にもまとめています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?