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『目上の人には歯向かうけど、後輩には歯向かわない』という先輩の背中を見て育ったわたし

社会人になりたての頃、メンターだった先輩が少し変わった人でした。
大手ハウスメーカーの営業をしていたので、上司や先輩は皆割と派手だったり口が立つタイプが多かったのですが、
その先輩は営業っぽくないというか、口下手で、どちらかというとマゴマゴした感じの話し方で不器用そうで、シュッとしたタイプではなくて。

でも、わたしはその先輩に、営業とはどうあるべきか、人としてどんな時も忘れてはいけないことは何かをたくさん学びました。
一緒に仕事をした人のはたった1年ほどでしたが、わたしはその人に教わったことを今でもずっと忘れずにいるので、今日はそのお話を書こうと思います。

先輩(以後Aさん)は、わたしより7つほど年上だったと思います。
新入社員として入った時、30歳くらいだった記憶があります。

彼女のような存在もなく、結婚が早いその業界ではいつもそのことをいじられていました。

とっても不器用で失敗ばかりしているように見えましたが、後輩にもお客様にもとても優しくて、誠実さで契約をとってくるタイプの営業マンでした。


わたしの入った支店は当時『北○鮮』と呼ばれていて全国でも厳しくて(理不尽で?)有名で、とても売れているか、もしくはどんなに罵倒されても聞き流せるマインドを持っているかのどちらかの人しか残っておらず、毎月一人ずつ失踪者や退職者が出るような支店でした。
当時のわたしはなぜAさんがこれまで辞めずにこの会社に残っているのか不思議でした。

新人の時は、最初の1棟を契約するまで社用車がもらえず、どこまでも自転車で行くor先輩に車に乗せてもらって営業するのですが、
Aさんはいつも「行きたいお客さんいない?乗せてくよ」と言ってくれて
よく長時間車で過ごす時間がありました。

口下手なAさんはあまり話をすることなく、
ミスチルなんかのアルバムを割と大音量で流していた記憶しかないのですが
ひとつだけものすごく記憶に残っている会話があります。


『俺変だし大人しく見えるでしょ?でも、基本的にわざと目上の人には絶対歯向かうようにしてるんよ。喧嘩するし、意見する。あと、後輩には絶対偉そうにしたりしない。』

『だって、目上の人の言うことをハイハイ聞いて、後輩に偉そうにするのってめちゃくちゃ簡単やん。でも、それしてたらお客さんも後輩も守れないでしょ。営業しかいないからね、お客さん守れるの。』

『上司や上の人に嫌われるのなんて全然いいよ。俺はいつでも辞めてやるし。でもお客さんや後輩には迷惑かけたくないし、自分を信頼してくれてる人のことは絶対守りたいんだよね。』

新人だったわたしは、『へ〜、この人やっぱ変わってるな〜』くらいにしか思いませんでした。
だってその支店では、上に歯向かうなんて自ら死にに行くくらい、1意見したら100で文字通り殴られるような風土だったのです。

でも、後々このことばがわたしの中でリフレインするようになります

自分より立場が上の人に意見をする人の少なさ。みんなおかしいと思っていても言わない。
お客さんに不利なことも、平気で要求してくる会社。
そしてそれをさも正しいかのように説明する営業。

長く仕事をするうちに、そんな場面はいつしか当たり前のようになっている気がしていました。
でもそんな時、Aさんは必ず上司や会社に意見していました。
『黙っていうこと聞けよ!会社の決定だぞ!』と言われても、『いやいやおかしいですよね』と言って一人戦っていました。

今となってはそのAさんの行動がどれだけ大変で、でも愛に溢れていたのか理解できます。
だから多分わたしは先輩の中で1番彼を尊敬しています。

結局Aさんは、30歳の節目に別の業界でチャレンジしたいと言って転職しました。
今はもうどこに住んでいるのかも分かりませんが、でもわたしはそのマインドをいつも忘れずにいるようにしています。


自分より立場が上の人には、嫌われたとしても臆せず意見を言う。
後輩のことは頭から否定しない。理解しようとする姿勢を忘れない。

これは、そのあと意図せず色々な業界に転職し社会人生活も約15年になりますが、
わたしが仕事をする上で必ずこころに置いています。

Aさん、どこで何してるかな?
久々に会ってまた夜中の中華行きたいな。

そんなことをたまに考えます。

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