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【富士山お中道を歩いて自然観察】番外編 用語集

専門用語が増えてきたので、記事中で使われている用語を集めてみました。
関連記事へのリンク集を兼ねていますので、記事の振り返り、あるいはまだ読んでいない記事の発見にご活用ください。


アントシアニン

 植物の葉、茎、花、果実などに存在する色素で、アントシアンとも呼ばれる。 春、新芽が出るときや紅葉の時の赤い色はアントシアニンによる。生育環境が 悪化し光合成が抑制されるような条件でも作られることがあり、これはアントシアニンが太陽光を吸収し、クロロフィル(→クロロフィル参照)を保護するためといわれている。

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カロテノイド

 カロチン(カロテン)とも呼ばれ、赤、黄、橙色などの色素である。光合成を担う葉緑体内にあり、太陽光を捉えると同時に、クロロフィル(→クロロフィル参照)が過剰な太陽光を吸収するのを防ぐ大切な働きをもっている。

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芽鱗痕 [がりんこん]

 樹木の枝先には冬芽ができるが、その付け根のスジ(横枝の跡)は芽鱗痕がりんこんとよばれ、樹木が成長しても消えずに残る。今年と去年の芽鱗痕の間が今年の成長量である。この芽鱗痕を過去にさかのぼることで、毎年の成長量や枝や幹の年齢を推定することができる。

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ギャップ、ギャップ更新

 森林の樹木が寿命や台風の強風などで倒れて枯れると、その樹木が占めていた場所があいて、太陽光が射し込んで明るくなる(ギャップ)。すると、親木の陰で成長が抑制されていた稚樹の成長は促進される。このようにして稚樹が成長し親木の跡を継いで森林が世代交代を続けることをギャップ更新という。

コメツガ林にできたギャップ
倒木により林床に光が差し込んでいる。

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共生 [きょうせい]

 生物界でよく知られている異なる生物種間の関係で、共に相手から利益を得て共存する場合を特に相利共生という。マメ科植物と根粒菌、マツ科やラン科植物と菌根菌の関係などがよく知られている。

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極相、極相林、極相種 [きょくそう、きょくそうりん、きょくそうしゅ]

 植生は、何らかの原因(自然災害または人為的な開発など)で破壊されても自ら復元する能力をもっており、植生が回復する過程を遷移という。遷移が進んで、最終的にそこの気候に最も適した植生に達すると安定して維持され、その植生を極相という。日本列島は十分な降水量に恵まれるため、極相は森林(極相林)となる。主に極相林で生育する樹木を極相種(→後継樹参照)と呼ぶ。

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クロロフィル

 植物の光合成を担う色素で、太陽光のうち青と赤の光をよく吸収するため緑色にみえる。クロロフィルは太陽光を吸収して、エネルギーの高い化学物質をつくる働きをする。この化学物質は大気中の二酸化炭素を取り込んで、炭水化物を作るのに使われる。

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後継樹 [こうけいじゅ]

 極相林(→極相参照)を構成する樹木の種子から成長した若木のことで、親木の陰では成長は遅いが、耐陰性が高いので、ある程度の期間は生き続けることができ、親木が枯れて明るくなる機会を待っている。親木が枯れてギャップ(→ギャップ参照)が形成されると成長が促進されて、次の世代の親木となることができる。後継樹は極相種と同義。

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スコリア

 火山の噴出物で、火山礫(直径2 ㎜~64 ㎜)のうち、玄武岩のマグマが上昇して冷えて固まるときに、含まれていた水などが蒸発して多孔質となったものをいう。

スコリアの上で休むジャノメチョウ

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先駆種 [せんくしゅ]

=パイオニア植物

側枝 [そくし]

→頂枝・側枝



窒素固定細菌 [ちっそこていさいきん]

 窒素固定(大気中の窒素を吸収してアンモニアをつくる働き)を行う細菌を総称して窒素固定細菌と呼び、ハンノキ類の根に共生する放線菌やマメ科植物の根に共生する根粒菌などが挙げられる。放線菌や根粒菌は根に根粒を形成し、その中で窒素固定を行う。

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頂枝・側枝 [ちょうし・そくし]

 樹木の先端の上方に伸長成長している枝を頂枝、 横方向に成長している枝を側枝という。

シラビソの頂枝と側枝
シラビソの葉の一枚一枚は、頂枝では螺旋状に生えるが、側枝では平たく生える。

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凍裂 [とうれつ]

 冬季、幹の水が凍ると体積が増して、幹が割れて樹皮が裂ける現象。凍裂はシラビソなどのモミ属のみに起こり、カラマツやコメツガには起こらない。

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パイオニア植物(先駆種)

 遷移(→遷移参照)の過程で、初期のまだ植生が十分に発達していない段階で定着・成長できる植物種のこと。一般に、明るい場所を好み、乾燥や栄養不足に強い。富士山のように雪崩が頻発して地盤が不安定な場所では、傷害を受けても地下茎や萌芽(→萌芽参照)で再生できる植物がパイオニア植物となることが多い。

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ハタ型樹形

 高い山の森林限界や尾根など風当たりの強い場所では、マツ科針葉樹(シラビソやカラマツなど)が風上側に枝のないハタ型となっていることが多い。その枝の向きから、その地域の卓越風(年間を通じて最も多い風向き)を推定することができる。
 ハタ型となる原因として、風上側に枝を出さない、または枝が伸長できない、枝が伸長しても強風による損傷で枯れてしまうことなどが提唱されている。風上側では強風によって砂礫や氷雪が吹き付け、葉や樹皮がこすれて傷がつき水分の消失が増加する。冬は幹・枝が凍っているので失われた水分は補給を受けられずに、枝が乾燥死することが知られている。

ハタ型樹形のカラマツ

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萌芽・萌芽更新 [ぼうが・ぼうがこうしん]

 広葉樹を伐採した後、切り株にあった休眠芽が成長を開始し、やがては新たな幹を形成することが多い。この枝を萌芽という。これがさらに成長して森林を維持することを萌芽更新という。ブナ科やハンノキなどでよくみられる。

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陽樹林 [ようじゅりん]

 明るい場所で多くの光合成を行い成長の早い陽樹と、暗い場所を好み成長の遅い陰樹とがある。一般に遷移の初期のパイオニア植物は陽樹で、陽樹林を形成する。親木の元では、陽樹の稚樹は暗すぎて成長できないので、陰樹にとって替わられるのである。

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離層 [りそう]

 葉が落葉する前や果実が成熟して落下する前に、枝との間に特殊な細胞層である離層が発達し、植物体との水や養分のやり取りは遮断される。

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林冠、林冠木 [りんかんぼく]

 森林の最上層を占める高木の葉の集まりをいう。森林に射し込む太陽光のほとんどが最上層の林冠で光合成に使われてしまい、その残りは木漏れ日として下層に射し込む。 

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林床 [りんしょう]

 森林の地面のことをいう。林床は、親木の後継樹(→後継樹参照)、草、ササ、コケなどで占められている。親木の林冠(→林冠参照)によって太陽光は吸収されてしまうので、よく成熟した森林の林床は暗い。

カラマツ林の林床
林床はコケモモに覆われ、カラマツの後継樹となるシラビソの稚樹が点在している。

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