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まだまだ出来る。何度でも。諦めることのない不屈の精神~アネット・ベニング~

ACTORS PROFILE Vol. 34

アネット・ベニング
「ナイアド ~その決意は海を越える~」


1958年アメリカ生まれ。まだまだ出来る。何度でも。諦めることのない不屈の精神。

 ダイアナ・ナイアドは60才を迎えて決心する。キューバからフロリダまでの164kmを泳いでやる。彼女は20代の時に挑戦し、失敗した無謀な遠泳に30年ぶりに立ち向かう。

 ▲ベテラン俳優であるベニングにとっても、この役柄はチャレンジングなものだったに違いない。強靭なフィジカルを要する役だからだ。今までの作品では見せてこなかったアスレチックな姿をベニングはここで明らかにする。2013年に前人未到の大記録を達成させたダイアナ・ナイアド。彼女の挑戦には困難がつきものだった。キューバとフロリダにある海を渡ること、それは何万回も水をかき、何十時間もの泳ぎで幻覚が見えるものだという。塩のせいで顔も腫れる。もちろん天候によっては、凶暴になり襲いかかってくる海、サメやクラゲなど危険な海の生き物も気にしなければならない。

また、命懸けの挑戦をやろうというナイアドが一番に厄介で傲慢で自信家な人間であることも見逃さない。興味深くもあり、心配をかける存在だ。無理を言っては協力してくれる周囲の者と衝突を繰り返す。

泳がせて!

 ▲心配してくれるフォスター演じる親友にしてコーチのボニーや、船から指令を出す航海士ジョンから何度も無理だと言われても、どれだけ意見が揃わなくても、自身の思いを貫き通すナイアドの不屈の魂をベニングはしっかりと捉える。

 ▲演じ方によっては自己中心的な共感し得ないキャラクターになりそうなところをベニングは、持ち前のカリスマで乗り越える。まだまだ若いもんには負けちゃいない。彼女が美しく荒海を泳ぎ渡る姿に感動し、また勇気をもらうことだろう。


アネット・ベニングとアカデミー賞

・第63回アカデミー賞(1999)助演女優賞候補:グリフターズ/詐欺師たち

 1988年に映画デビューしてから僅か2年後に、名匠スティーヴン・フリアーズ監督の「グリフターズ/詐欺師たち」で初のオスカー候補に。詐欺師親子の危険な関係を描くサスペンス映画で、息子詐欺師の恋人を演じた。アンジェリカ・ヒューストンとジョン・キューザックと共にハラハラさせる駆け引きを見せて批評家賞でも好評だった。受賞したのは「ゴースト/ニューヨークの幻」のウーピー・ゴールドバーグ。ファンタジーロマンスの甘い展開の中でインチキ霊媒師役で笑いを振り撒き、作品を違う角度から輝かせた。

・第72回アカデミー賞(1999)主演女優賞候補:アメリカン・ビューティー

 サム・メンデスの驚くべき監督デビュー作で9年ぶり2度目の候補入りを果たしたベニング。不動産会社で働くものの、夫とは倦怠期&高校生娘も難しい年頃で、浮気をしているという役柄。家庭が崩れていく様をスペイシーバーチと共に恐れることなく演じた。作品はこの年の作品賞にも輝くほど勢いがあったが、主演女優賞は「ボーイズ・ドント・クライ」のヒラリー・スワンクに渡った。トランスジェンダーのブランドンの短くも壮絶な人生の物語を演じ切ったスワンク。見終わった後疲れます。

・第77回アカデミー賞(2004)主演女優賞候補:華麗なる恋の舞台で

 30年代ロンドンの舞台役者ジュリアを演じて、3度目の候補入り。華やかな舞台に立ちながらも仕事や私生活で満たされない毎日を過ごすジュリアを魅力的に演じた。ベニングが作品ただ一つの見どころだそうだが、受賞は「ミリオンダラー・ベイビー」のヒラリー・スワンクに渡った。イーストウッド演じるボクシングジム経営者に弟子入りするハングリーな主人公を演じた。また作品はこの年の作品賞を受賞するほどの熱気があった。またしてもスワンクに受賞を阻まれた時のベニングの顔が怖かったです。

・第83回アカデミー賞(2010)主演女優賞候補:キッズ・オールライト

 子どもたちの高校卒業を控えた同性カップル家庭に生物学上の父親が現れるという物語で、ベニングはジュリアン・ムーアとカップルを演じた。コメディとドラマの狭間でビリビリするような凄みの効いたパフォーマンスを披露した。もうすっかりベテランになった彼女の初受賞の機運も高まっていたが、この年は残念ながらナタリー・ポートマンの年でもあった。「ブラック・スワン」が凄すぎた。

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