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秋の野にて

にごりなきひかり淵には龍ひそむ

一山の風に裾舞ふ龍田姫

言の葉を編みてはほどき花野暮る

まんじゆさげ夜の水面みなもに身を揺らし

この淵を深く行くなら月の国

逢ひみてのさみしさ萩の花ほどの


竜淵に潜む(仲秋)/ 龍田姫(三秋)
花野(三秋)/ まんじゆさげ(仲秋)
月(三秋)/ 萩の花(初秋)

竜淵に潜む(りゅうふちにひそむ)
この季語を収録し例句を載せている歳時記は少ない。従ってここでは『角川俳句大歳時記(秋)』の小川軽舟氏の解説を引用する。

「中国後漢時代の字典『説文解字(せつもんかいじ)』に「竜は春分にして天に昇り、秋分にして淵に潜む」とあるのを典拠とする想像上の季語。秋の深く澄んだ静謐な水は、たしかに竜が潜んでいそうな神秘的な印象がある。古来の水神信仰とも重なって、日本人の感覚にも受け入れやすいのである。」

俳句コミュニケーションサイト『芭蕉会議』より

龍田姫(たつたひめ)三秋
【解説】春をつかさどる佐保姫に対して、秋をつかさどるのは竜田姫である。平城京の西にある竜田山を秋の女神にたとえたもの。「竜田姫たむくる神のあればこそ秋の木の葉の幣と散るらめ」(兼覧王) と古今集に詠まれたように、紅葉にかかわる女神でもある。

『きごさい歳時記』より

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