見出し画像

犬と猫のワクチンQ&A

Q.ワクチンの種類とは、どういう意味?

A
まずワクチンは、入っている「病原体の状態による分類」と、接種の「必要性に応じた分類」があります。

病原体の状態による分類ですが「生ワクチン」「不活化ワクチン」「mRNAワクチン」などがあります。動物病院で使用されるワクチンは、生ワクチン、不活化ワクチンがほとんどです。
ワクチンは免疫力をつけるために接種します。免疫を付けるには、免疫が反応する相手(病原体)が必要です。ワクチンは、この相手側を担ってくれています。
生ワクチンは、病原体が弱った状態で組み込まれています。弱い相手に対して、本番さながらの練習ができるため、強い免疫が付きます。しかし、病原体が生きているため、免疫抑制剤などを使用しているときは制限されます。不活化ワクチンは、病原体が感染力を失った状態で組み込まれています。生ワクチンに比べると免疫反応はゆっくりおこりますが、免疫力を獲得するためには十分に働いてくれます。
免疫反応を活性化させるためのアジュバントと言われる添加物が加わります。生ワクチンのような制限はないものの、添加物にアレルギー反応をもつ動物は接種できないこともあります。
mRNAワクチンは、病原体のもつ遺伝情報の一部を組み込んだワクチンです。病原体が感染したあと、この遺伝情報を使って、増殖しようとしますが、これを抑えるための免疫を付けます。
必要性に応じた分類とは、「コアワクチン」か「ノンコアワクチン」かです。
コアワクチンはガイドラインで「すべての犬猫に接種すべきワクチン」とされています。世界中で感染例があり、致死的な病原体で、これらから動物を守るために接種が推奨されています。
ノンコアワクチンは、生活スタイルや地域によってリスクがあれば接種した方が良いワクチンです。
犬のコアワクチンは「犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス1型・2型、犬パルボウイルス」
猫のコアワクチンは、「猫汎白血球減少症ウイルス、猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルス」です。
また、「狂犬病ワクチン」はコアワクチンに含まれませんが、日本では狂犬病予防法により、接種が義務とされています。

Q.予防接種は、毎年必要なの?

A.
ワクチンのガイドラインでは、

すべての動物にコアワクチンを接種することを目指す。ノンコアワクチンは、必要と思われる頻度を超えて接種してはならない。

WSAVAワクチネーションガイドライン

とされています。
私たち獣医療関係者の考え方も、「不必要なワクチンは接種しない方が良い」です。
しかし、免疫が無ければ致死的な病気から守るためのワクチンなので、免疫が無くなる前に次のワクチンを接種しなければいけません。
日本のワクチンメーカーでは、年に一回の追加接種が推奨されているため、毎年接種する人が多数です。
しかし、免疫があれば追加接種しなくても良いので、間隔を開ける場合は抗体価検査をお勧めします。十分な抗体価(免疫力)があれば、接種間隔を開け、無ければ追加接種する、とすれば良いでしょう。

Q.高齢で外に出ないのにしないといけないの?

A.
高齢になると、免疫力は落ちる
といわれています。免疫力が落ちるので、あえて接種間隔を空けて、感染リスクをあげない方が良いといえます。
しかし、接種後に体調が悪くなる場合や、治療中の病気がある場合は、獣医師と相談して接種するかを決めましょう。
外出しないのに感染症のリスクがあるか?については、人の流行する感染症と同じです。外で他の動物に接する機会が少ない方が、罹るリスクは低いと言えます。ただし、家族が家に持って帰ってくることも、病院の待合室でもらう事もあるでしょう。備えていた方が無難です。

Q.一気にできないの?麻酔中にできないの?

A.
理屈上はできないこともありませんが、確実に体の負担にはなります。
また、もし合わないワクチンがあっても、どれが原因か特定できません。
あえてリスクを負う必要はありません。
この来院が唯一のチャンスだから、どうしても!という場合は、獣医師とよく相談してください。

Q.接種してはいけない場合とは?

A.
ワクチン接種でアレルギー反応がおこった場合は、原因のワクチンを含めて全てのワクチンが要注意になります。もちろん、全てのワクチンでアレルギーがおこるわけではありませんが、特にアレルギー反応がアナフィラキシーショックと言われる、重篤な過敏症であった場合は、ワクチン接種を控えるケースに該当します。ワクチンはもちろん、動物病院で治療を受ける場合も、アナフィラキシーの経験があることは伝えましょう。
また、生後2-3週齢の若齢すぎるケースでも、ワクチンは接種できません。体には血液脳関門といわれる、脳に薬品など有害なものが入らないよう制限する関門があるのですが、若すぎるケースではこの関門が未発達です。ワクチンによる脳の成長障害などがおこらないよう、注意が必要です。保護した場合など、正確な週齢が分からない場合は、その点を獣医師に伝えて接種時期を相談しましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?