木造の家

<木造の家>
ダンゴムシ、ヤスデ、ナメクジ、時折ムカデ
夏の朝、台所や風呂場にはきっと夜の饗宴の名残があった
紙に包んで潰したり箒で掃き出したりする
始末の途中でクモがそそくさと逃げていく
築七十八年の木造家屋
雨樋からあふれた水で杉の外壁が腐り
風呂場の内側に滲みが広がる
時間とともに姿を変えていく家
崩れたり腐ったりした部分を補修して生き永らえる
それがこの土地この風土で暮らすということ

遮熱パネルで覆った家のように
風雨に対して閉じこもりはしない
受け流す、雨も風も時間も

雨も風も陽光も作り出せない私は
この木の家とともに日々を過ごす
時に守られ時に手を加えて支えてやる
家屋との対話の仕方がそのまま
この土地で暮らす流儀となる

庭の草取りは永遠に終わらない
腰を痛め蚊に刺され、どんなに鎌を振るっても
草はまた生えてくる
ときおり出てくる虫もまた絶えることはあるまい
紙に包んで握り潰す感触が残るまま
今朝もまた赤い朝顔が八つ咲いた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?