助け合う組織か、成果重視の組織か。人間関係で大事なこととは―『論語』
「周(あまね)うして、比(ひ)せず」
数年に及ぶコロナ禍を体験して、人づきあいのありようが、かなり変容してしまいました。
仕事における望ましい人間関係とは、どういうものをいうのでしょうか。
相手先(クライアント)、仕事の発注先の場合は?
チーム内や社内の他部署との場合は?
リアルとオンライン(ネット)で関係性の違いは?
2500年以上前に、孔子が人間関係の本質について語っているので、それを参考に人づきあいついて考えてみるのも、いいのかもしれません。
『論語』本の訳出が、いろいろとあるので、それら参考に意訳してみました。ちょっとこなれていなくて、申し訳ございません。
誰とでも親しくつきあい、特定の仲間と派閥をつくるようなことはしない。そういう人づきあいができる人物が、人の上に立つのにふさわしい。
損得を第一に考えて人とつながろうとする。なので、深い信頼関係に発展することは少ない。才能はあるけど、思いやりにやや欠ける人のつきあい方に多い傾向。
読み下し文をみてみましょう。
「周」は、あまねく偏りがない、損得がない、ということ。「徳」による結びつき。
「比」は、損得や好き嫌いでつながる関係のこと。利益が一致しているときはいいけれど、利害が反すると、仲間割れや離反がおこりやすい。
好き嫌いといった感情、人との相性など、いろいろあるけれど、人間関係は、「比」であるよりも「周」でありたい。
「周」を目指そうよ。それを孔子が思い描くの理想の関係ですが、さて、あなたは、どうしますか? そう問いかけているのです。
助け合うチームか、成果重視チームか
これをチームや組織で考えてみると、どうでしょうか。
「比」の価値観のチーム(組織)と「周」の価値観のチーム(組織)。
心理的安全性の高いチーム、助け合う関係性が強いチームは、「周」の価値観のチームといえそうです。
一方、タスクフォースのように、短期で達成する目標がはっきりしているときには、「比」の価値観をチーム(組織)のほうが、高いパフォーマンスを上げられるのではないでしょうか。
中国文学者の守屋洋先生は、孔子の言葉「周」と「比」を、友情というキーワードで解釈し、組織に与える影響を次のように述べています。
遠慮のない批判があってこそ、ほんものの友情と言えるのかもしれない。
だが、実際問題として、これはむずかしいように思われる。特に閉鎖的な社会(組織)ほど、成り立ちにくい。
(ただ、孔子が指摘するように、その対立を恐れて)仲間ぼめや、庇(かば)い合いばかり横行するようになると、必然的にその社会(組織)の活力は衰えていく。
「周」=立場を超えた「信頼関係」。
こう置き換えて考えてみると、企業や組織での人間関係、地域社会やその他のゆるやかなつながりにも、あてはまりそうです。
相手の心の領域まで踏み込んだつきあいができる。それがベースにあれば、集団や組織の利益を優先することが求められても、立場を超えた「信頼関係」を築き、実践していくことができそう。
互いの顔が見えるチームです。
もちろん基本となる価値観や理念を共有できる関係。それは自然とできるあがるものではなく、日々の話し合いを通して、またともに成功や失敗の体験をすることから、生まれていくのかもしれません。
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