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大好きなものを語る恐怖|読書好きと言えない私

好きなものでつながるのは怖い。

私は読書が好きなのだが、それをなかなか言えない。ましてや読書が好きだと明言している人に「私も好きだよ!」なんて言うことは昔は恐ろしくてとてもじゃないけどできなかった。最近はずいぶんできるようになってきたけれど。
 これは、己のプライドと警戒心がなせる業だと思う。
 プライドの面においては、己がかなりの量読んでいる、という自負や小学校に行っていない時間の多くを読書に費やしたのだから、そこらの読書好き、趣味の一つが読書、なんて人とは一緒にしてほしくない、という思いだろう。
 警戒心に関してはもっと単純だ。自分が一番大好きなもの、ということは自分の一番の弱点にもなり得る。それをさらけ出すのが怖いのである。
 だから、今でも「読書好き」として話が盛り上がっても、ほんとうに大好きな本の話はしないことが多い。怖いからだ。それを否定されたら必要以上に対抗してしまいそうだし、逆に意見が一致したらしたで、「わたしたちわかりあえるねっ!」と重たい期待を向けられそうで怖い。自分で書いておきながら思うが、なんてめんどくさい女(笑)。
 また、昔、我が家がかなりの読書家の集まりだということを自覚していなかったころ、「読書好きです」と言っている子に「ほんとっ」とテンションが上がり、おすすめの本を貸したら一ページも読まずに返される、というようなことがあり、失望するのを恐れている一面もある。
しかも、読書というのは一緒にすることができない。サッカー、バスケ、野球などのスポーツや、将棋、囲碁などの盤面競技においては、一緒に試合を行うことでプライドだなんだのを超越して仲良くなれることがある(のではないか)と思うが、読書はそれはない。
 ともに経験を分かち合おうとしたらどうしても己の言葉で己の感覚を、己の内側を語らねばならず、それはまあまあ怖いことだと思う。

「友達できひんねん」というと、母に「SNSで好きな本紹介でもしたら」なんて言われるけれど、そんな恐ろしいことをして友達ができるのだろうか、なんて思う。
 それと同時に、そんなちゃちなプライドや恐怖をとっぱらって、そろそろ自分の大好きなものを堂々と大好きだと言ってもいいと思うのだ。
 そんな葛藤に苛まれ、私は読書好きは公言しつつも、あんまり読書の話題は持ち出したくない女、という難しい立ち位置にいる。
 
 堂々と、正面から、己の好きなものは好きだと言い、それについて己の感覚を含めて語り、それで繋がる。
 そんな関係にあこがれを抱きつつも、私はまだ怖くて踏み出せていない。
 

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