漫画家さんの仕事が尋常ならざる過酷さなのは、素人読者である私にも予想できます。物語を０から考え、キャラを決め、セリフを決め、表情を決め、それを絵で描くとか、一人何役ですかと驚愕します。そんな神のごとき漫画家さんを追い込むようなマネはしたくない。ひたすらにその恵みを待つのみだと思っています。が。が、ですよ。それは物語を最後まで見せてくれるという信頼関係、いわば完結の契約のもとにささげられた従順です。然したる理由もなく反故にされるのは、読者からすれば一方的な裏切り行為。その喪失感・消化不良感はトラウマレベルです。
今回は、完結契約不履行が起こりそうだけど、どうしても描ききってほしい神マンガ３選を考えてみました。

①『世界で一番俺が〇〇』　水城せとな

頭脳、容姿、人柄、それぞれにイイところを持つ幼馴染男子３人が我が身の不幸を嘆いていると、突然不思議な美女が現れた。「セカイ」という組織のエージェントを名乗る彼女は３人にゲームを提案する。それは「３００日後、３人の中で最も不幸になった者はどんな願いも叶う」という不幸比べのゲームだった。友達同士でユルくやるはずだったゲームは、「他の２人より幸せか」を意識した瞬間から思わぬ方向に進んでいく…。リアルな心理描写からくる意外な展開、緻密で先の読めない物語ですっごく面白かったのに、ゲーム終了まで100日を切ったあたりで連載が止まってしまいました。いやいや、ここからでしょ！　2020年7号掲載時に無期限休載が告知された上に、掲載誌が2023年6号をもって休刊。連載再開の目処は立っていません。
作者は他紙で新連載を始めてるし、多分もう描く気はないんだろうなー。でも最後どうなるのかあらすじだけでも知りたいっ！　プロットだけでも、SNSでだけでもいいので発表してほしいです。

②『ヒストリエ』　岩永均

紀元前4世紀ころの古代ギリシアやマケドニア王国を舞台に、実在の人物である書記官エウメネスを主人公にした歴史マンガ。このエウメネスをはじめ、マケドニア王フィリッポス、アレクサンドロス王子（後のアレキサンダー大王）など、全キャラクターが非常に魅力的です。知性と教養を武器に道を拓いていく主人公がたまらなくいい。史実と創作のバランスが絶妙で、歴史好きもそうでない人も文字通り時空を超えた異世界に連れて行ってくれる「歴史もの」のお手本みたいなマンガです。史実ベースなので物語の最後は分かっていると言えなくもないのですが、そこまでどう持っていくのかを天才岩永均の筆で見たいのです！
ものすごく読みたいのですが、遅筆の原因が作者の病気（不調）説があるので、あんまり強くもいえない空気です。でも、なにしろ物語が唯一無二なので、作画を別の人にしてでも完結させてほしいものです。

③『Under the Rose（アンダーザローズ）』　船戸明里

19世紀の英国を舞台に、ロラウンド伯爵家の長い歴史を繊細な心理描写でもって描いた物語。物語は数章に分かれ、「冬の物語」では庶子のライナス（でも侯爵）、「春の讃歌」では女性家庭教師レイチェルを主人公に描かれます。ミステリー仕立てで絵もキレイ、時代考証も丁寧と、英国好きにはたまらないマンガです。先に書かれた『Honey Rose』がこの『Under the Rose』の後日譚なので、広義では結末は分かっているのですが、キャラ設定など多少変えてあるので、この世界で物語がどう進んであのラストに繋がるのかをちゃんと読みたいのです。
掲載誌変更と休載を繰り返していてもはや現状を追えないのですが、今誤解が生じたところで止まってるので、ここで止められると非常にスッキリしない。せめて誤解を解いてから……というか、完結させてほしいと切に祈っております。

物語は終わらせるのにいちばん力がいる、といわれるくらい、物事を完結させるのは大変なのでしょう。まして長年続いた漫画ともなると、その労力は凡人には出来ないレベルなのだと思います。神様に選ばれるというのは、人間には重すぎる業なのかも知れません…。しかしそれでも、あのマンガを完結させてくださいと言わずにはいられないのです。だって好きだったから！　あのキャラが、世界がどうなるのか見届けたいのです。しかしだからといって、漫画家さんの健康や人生を損なってもいいと思ってるワケでは全然ない。むしろ出来ることがあれば何でもしたいと思っています。そんな気持ちを込めて、漫画は基本新刊で買ってます。
また、ここに挙げた３作を未読の方は是非読んでみてほしいです。どれもスゴく面白いですよ！　そして一緒に完結待ち地獄に落ちましょうや……ｸｸｸ。