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かもめ

by 長女14歳









私は真っ白な砂浜を歩いていた。白い砂が日光を反射して眩しかった。歩くたび、しゃく、しゃく。と音が鳴った。
この砂浜には、きっと果てがないのだろうと思った。
そうしていると、水平線からカモメが現れた。カモメの目は蒼かった。カモメは、水面近くをするすると飛んで、一直線に私に向かってきた。鴎は私の頭の上を通りすぎると、砂の上をするすると飛んでいってしまった。カモメとは、あんなに大きな物なのかと思った。
私はまた白い砂浜を歩いた。
砂が靴のなかに入ってきた。靴のなかで足にまとわりついて気持ちが悪い。そろそろ正午だから、首筋に日が当たってチクチクする。砂は相変わらず白くて、半透明だ。ラムネの瓶を磨り潰したようだ。
ふと、白い砂浜の上に赤い屋根を見つけた。赤い屋根の建物は売店だった。「かき氷」と書いた札がかけられている。その他にも、あめ玉やら、ラムネやら、水中メガネやらも売っている。
待っていると、奥の方から白い髪の老婆が現れた。老婆は蒼い目をしていた。私は老婆からあめ玉を一つ買った。あめ玉を私に渡すとき、老婆は ここの砂が何故白いのか知っているかと尋ねた。知らないと答えると、ここの砂は皆、海で死んだヒトの骨だよ、と言った。
私はまた砂浜を歩いていた。さっき買ったあめ玉はもう食べてしまっていた。只、あめ玉の酸っぱい味が口の中に残っているだけだった。
潮が満ちて来たのか、白い砂と、蒼い海との境界線が、だんだんと近付いて来るのがわかった。
日が落ちてきた。太陽が朱い光を出し始めている。白い砂は朱く染まった。朱い砂と、蒼い海との境界線は、私のすぐ足許で、さらさら、さらさらと波打っている。波の音は、波が鳴らす物と思っていたのだが、あれは砂の音だったのだとそのとき気がついた。少女は靴を脱いで裸足になると、そっと水に足をつけた。冷たい水が足に染みた。そしてまた、一歩、一歩と沖を目指して歩いていった。水が腰まで浸かったところで、スッとそこが抜けて、少女は海に沈んだ。底が見えない。沈んだ時、驚いて海の水を飲んだので、少女はそれがラムネだと気がついた。いくつかのラムネの泡がつうっと首筋を伝って、キラキラ光りながら水面までのぼっていった。少女は爪先の方からだんだんと泡になっていった。ブクブクと音が鳴って、キラッと光ったかと思うと、少女は泡になって消えた。そうして骨だけが残った。

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