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くま最初のメキシコキャンプ②: スクラフィが崖から転落した!

順調にスタートしたかのようなキャンプでしたが、4日目の夕方に大変なことが起こりました。

夫がぐったりしているスクラフィを連れてキャンプに戻ってきたのです。息はしているものの、まったく応答のないスクラフィ。崖っぷちに止まっていた鳥を目指して猛ダッシュしたあと止まることができずそのまま崖から約30メートルほど転落してしまったとのことでした。夫が崖の下へ降りていくと奇跡的にぐったりしていたスクラフィーを発見。引き潮だったので波にのまれることはなく発見できたのはラッキーでした。

この先は崖。多分こんな感じにとまっていた鳥めがけて猛ダッシュしたのだと思います。

一番近くの街サンクインティンまでは車で約3時間。すでに日が暮れていてこれから出ても病院が開いている保証はないうえ夜間のガタガタ道を2時間も走行するのは危険すぎました。たまたまキャンプに来ていた人間のお医者さんに診てもらいましたが、もしも内蔵が破裂していれば病院へ行っても手の施しようはなく朝までもたないと思うといわれました。

眠れない夜を過ごしました。タオルに包まれて苦しそうに息をするスクラフィを見つめることしかできない無力感。

明け方少しだけうとうとして目を覚ますとスクラフィはまだ息をしていました!夫とともに急いでキャンプを片付け、夜明けとともにサンクインティンへ出発。獣医が一軒だけあるとのことでした。

国道に入るまでの60キロのガタガタ道は私たちにとって地獄の道のりでした。車の揺れとともに痛みにうめくスクラフィといつまで生きててくれるのかわからない恐怖に戦う私たち。2時間の道のりが永遠のように感じられました。ようやく舗装された国道に入りそこから約1時間かけてサンクインティンに到着しました。

終わりが見えなかった60キロのガタガタ道

ところがやっと病院にたどり着いたものの、ここにはレントゲンの設備がなかったのです。ここから車で3時間のエンセナダまで行けばレントゲンのある動物病院があると教えてもらい急遽エンセナダへ。ゼーゼーと喘ぐスクラフィを乗せてドライブは続きます。

崖から墜落して約20時間後にスクラフィはやっと診察を受けることができました。レントゲンの結果骨や内臓に異常はなく痛みは打ち身からきているとの診断でした。痛み止めの処方をしてもらい、その日はエンセナダに泊りました。痛み止めが効いたのかそれまでずっと続いていた呻きがなくなり私たちもやっと眠ることができました。

エンセナダの動物病院

翌日はアメリカに入国。でもここから自宅までは約800キロの距離があり、少なくみつもっても9時間以上のドライブになります。

スクラフィの容体が安定するまで長距離ドライブは無理との判断で、サンディエゴに数日滞在することになりました。2日間はトイレ以外はベットで寝た切りのスクラフィでしたが。3日目からはよろよろと歩くようになりました。でもすぐに座り込んでしまいます。

サンディエゴのハーバーで夫の肩に乗るスクラフィ。
ほんの少し歩いてすぐお休み。

この怒涛の数日を生後5か月のパピーだったくまは文句も言わずに静かに寄り添っていてくれました。長いドライブでお散歩の時間もまともに取れなかったのに黙って付き合ってくれたくま。

パピーなりにスクラフィ兄ちゃんに何か大変なとこが起きてるみたいだ、と感じているようでした。いつもは一緒に遊んでくれるお兄ちゃんがずっと寝たままで変だなあと。

荷物に埋まってすやすや。
スクラフィ兄ちゃんの様子が変だぞ?
くまも一緒にお散歩だよ。

数日後、自宅のあるバークレーに戻りましたが、スクラフィの容態はあまり改善しませんでした。念のためにとかかりつけの獣医さんに連れて行ったら、首の骨に2ミリほどの小さなひびが入っていることがわかりました。

実はスクラフィが崖から落ちた日に、カイトサーフィンで大けがをして親指を失いかけたという人と話をしたばかりでした。スクラフィーを診てくれたお医者さんがとりあえず縫い合わせてくれて応急処置はしたけれど、すぐに病院へ行くことはできず翌日にサンディエゴに戻るチャーター機が飛んでくるのを待つしかないと言っていました。

完全に外界から孤立したリモートでのキャンプは素晴らしいけれど何か起きた時には対処が難しいというリスクがあります。このリスクを私たちはスクラフィーの経験から初めて学ぶことになりました。

ウインドサーフィンというケガの可能性もあるスポーツをやっているのに、実はそれまではケガのリスクを考えたことがなかったのです。大変な思いをしましたが、いろいろ学ぶことができた旅となりました。

次回からはヨット暮らしで始まったくまのパピー時代のエピソードです。

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