【私たちのこと】なぜAID治療が必要になったかの話。

 今日は、具体的な治療の話ではなく、なぜ私たち夫婦がこの特殊な妊活をするに至ったか。その話をしたいと思う。

 結論から言うと、私の夫はFTM、つまり性同一性障害の当事者だ。

 FTMの彼と私の間に、両者の血が繋がった子どもを授かることは物理的に(いや、生物学的に?)不可能だ。普通、妊活をする場合は段階を経るので、さまざま選択肢がある中で選んだ先がAIDということになるけど、私たちの場合は違う。はじめから不妊治療、はじめからAIDだ。(子どもを持たないという選択について&養子という道については機会があれば考えを書きたいと思う)

 結婚する前から、ドナーによる精子提供で人工授精することは決めていた。実は当初は、彼の親族(義父、義兄弟)からの提供をと考えていただけど、結婚してみるとそれは難しいなとすぐに実感した。提供者になるであろう人に出会う前と出会った後では、考え方はまるで変わってしまったのだ。

 考え方は人それぞれなので親族間の精子提供を否定するつもりはないけど、義理の家族となり普通に接している人から精子提供を受けてそれを自分の体内に入れるという行為は、私にとってはあまりに受け入れがたいことだった。見ず知らずの誰かの場合に比べて、遥かに抵抗感がある。

 私はずっと子どもが好きで、将来はあたりまえに結婚をして、あたりまえに子どもを授かると思って生きてきた。だから、夫との結婚を考える際、子どものことを思って躊躇する気持ちが無かったといえば嘘になる。でも、私の背中を押してくれたのは他でもない、夫自身だった。

 彼は本当に、こちらが拍子抜けするくらい自分の身に起こっていることをあまり大ごとに捉えない人で。これまで歩んできた人生のこと、今の状態になるまでにしてきた治療のことについて、それはそれは淡々と、ただ冷静に話してくれた。

子どもについても、自分を卑下するのでも、いたずらに不安を煽るのでもなく、「今はこういう治療があってね、」「最近の判例ではこういうことがあってね、」などなど、彼の知りうる知識をただ丁寧に教えてくれた。これが私にとってはよかったんだと思う。

 私の不安も次第に薄れていき、また思っていることや自分の希望も素直に話すことができ、とてもスムーズに話が進んだことを覚えている。うまくいかないことに嘆くのではなく、それを受け止めてじゃあどうしようかと、前向きに未来を見つめる彼の考え方は、今でも尊敬している。彼の人生を思うと、本当に強い人だなといつも思う。

 そんなわけで、結婚前から決まっていたAIDに予定通りに進んだというのが今の状態だ。このポストを機に、同じ境遇のどなたかが読んでくれるといいなと思っています。

正直私は、FTMの妻であることも、それによる不妊治療、ましてや倫理的側面から度々議論されるようなAIDの治療を受けていることも気軽に話せる人は周りに一人もいない。とても仲の良い友達も、私のことを、ふつうの男性と結婚していずれは子宝に恵まれるであろうふつうの人と思っている。私が選んだ道だから、もちろんそれでいいんだ。

いいんだけど、たまには気を使わずに話せる相手がほしいなって思ったりするんだなあ。

 コメントやメッセージ、ぜひぜひお気軽に。よろしくお願いします。

33歳♀東京在住。AID(非配偶者間人工授精)に挑戦する夫婦の記録です。※ただいま試験的にはてなブログと並走中