ドーナツがうますぎる謎を解明するため、潜入取材を敢行。

私はドーナツにはまっている。
すっごくうまい上にとってもおいしい。それでいて美味であり、デリシャスでありながらも味が非常に良いのだ。

私は基本的に、ラブラブなカップルから「ま、このくらい勉強しておけば大丈夫だろ」と高を括る試験前の中学生まで、甘いものなら何でも好きである。
だが、中でもドーナツが一番好きかもしれない。
いや、もしかしたらバームクーヘンが一位かもしれない。

ここで非常に重要なことに気がつく。
私の好物には、中心部に穴が開いているのではないか。ひょっとすると私が食べているのは、穴の部分なのではないか。あそこに旨味や甘味がぎっしりと詰まっているのではないだろうか。

そう思い至った私は、現地への取材を試みることにした。
行き先はもちろん甘いもの王国「スウィートキングダム」だ。

運良く王国大臣のアポロがとれた。違う。アポだ。アポイントメントだ。いちご味の部分だけきれいにとれたわけではない。

私はお城へ向かった。
驚いた。童話でお菓子の家なるものがあるが、まさにそんな感じ。お城の壁にはびっしりと甘エビがくっついていた。ちょっと私の考える甘さとは違ったが、まあ世間との認識のずれというのはいつの世にもある。

城の中に入ると、皆さんお待ちかねのチョコレートの壁に生クリームの床。生クリームの床。ずぶずぶずぶずぶ。なぜ床にしたのかは訊けなかった。
大広間へ案内され、大臣へのインタビューが始まった。
当たり障りのない糖尿病や虫歯、肥満についての雑談を交えながらいよいよ本題へ。

私「本日お聞きしたいのは、ドーナツについてなのですが」
大臣「急にドーナツの話題なんてドーナツてるの(爆笑)」
私「ドーナツが大好物でして」
大臣「(まだ爆笑)」
私「個人的な考えなのですが、ひょっとするとドーナツの美味しさの秘密はあの穴の中に隠されているのではないでしょうか」
大臣「え、何言ってるの。怖。キモ」
私「いえあの…ドーナツって穴がありますよね」
大臣「キモキモ。キッモ。は? んなわけないじゃん。え? 穴に味が…?」

穴に旨みが隠されているという主張を真っ向から否定し、私がいかにとんちんかんなことを言っているかを大臣は切々と説いた。
そりゃそうかと思った。だが、念のため、私はもう一度訊ねる。

私「ですが、バームクーヘンにも穴はありますよね」
大臣「キモキモキッモのくだり、もう一回やる?」

ここで引き下がっては何のためにスウィートキングダムまでやってきたのかわからない。私は詰問口調で詰め寄る。

私「では、ドーナツの穴! あれは一体何のためにあるとおっしゃるのですか!?」
大臣「油であげるとき、中まで火を通りやすくするために決まってるじゃん」

私は驚いた。ズボンのふくらはぎまでクリームにまみれた男にど正論を突きつけられたのだ。

ショックのあまりその後の展開はよく覚えていないのだが、大臣が楽しそうにかりんとうの話をしていたこと、上白糖と三温糖の違いについて熱弁していたことはなんとなく記憶に残っている。

帰り際、大臣がお土産に好きなスイーツをあげようと言うので、私はもちろんドーナツをお願いした。
大臣が用意したドーナツを見て私は驚いた。直径が1メートルはあろうかという大きさだった。大臣は笑いながら言った。「浮き輪のように輪の中に身を通しなさい。すっごく楽しい気持ちになれるよ」
お言葉に甘えて、私は恐る恐る穴に上体をいれた。ぴったりはまった。すっごく楽しかった。

というわけで、冒頭にも書いたように私は今文字通りドーナツにはまっているのだ。
これだけ大きいと穴があろうとなかろうと本当に中まで火が通っているのか不安だが、好きな時に好きなだけドーナツをちぎって食べれる生活はすっごく楽しいのだった。

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