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シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』の感想

改めてコピペして思ったんだけど、このタイトル…なんなんだ。そんなわけで初のるひま感想です。なかなか予定が合わず、結局4日間1公演ずつ行く感じでした。それでも4日間明治座に行き続けることになるとは…て感じでおもしろかった。

・配信
https://eplus.jp/sf/detail/3931450001?P6=001&P1=0402&P59=1


るひまと私

知り合いががっつりハマっていたりしたので、SNSでの受動喫煙でなんとなくこういう催しが行われていることは知っていたんですけど、基本的に観たことがあるのは相葉裕樹さんがゲストに出た『忠臣蔵 討ち入・る祭』(2019年 ※実は配信で2部しか観てなくてすいません…)、「笑う門には福来・る祭『明治座でどうな・る家康』」(2022年)、あとこないだYouTube無料配信の時にざくっと見た「シン る・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『明治座で逆風に帆を張る!!』」(2021年)かな。相葉さん主演の、最初の『新春戦国鍋祭 ~あんまり近づきすぎると斬られちゃうよ~』(2011年)はDVDで見ました。

そんなるひまの新作に相葉さんが出るんじゃないか?ということは、ファンとしてはけっこう前から予想してて「るひまあるんじゃないですか??」とか言いいまくってたので、発表の配信もリアタイしてましたし、「やっぱガチじゃねーか!」ってなりました。割と周囲の相葉ファンも含めて「るひまか〜…」(よくわかんない催しだしなんか怖い)という感じの反応だった気がするけど、ふたを開けてみたら尊氏フィーバーでした。ありがとう、るひま…。

なんかでも改めて「るひま」自体のファンがたくさんいるんだなと知って不思議でしたね。だって年によって出演者もキャラクターも題材も脚本も演出も違うわけで、何が出てくるか謎じゃないですか。私にはわからないけど、今作でも過去作とのつながりなども感じられたりするみたいで、制作・プロデュースの方がよっぽど根本を握ってなきゃクオリティコントロールできないよなと思いました。

第1部について

私は初日2日前くらいに『逃げ上手の若君』既刊13巻くらいを読んで臨んだのですが(ギリギリすぎ)「進研ゼミでやったところだ!!!」という感じでとてもよかったです。尊氏もいろいろ矛盾を抱えたキャラクターなんだなということを念頭に置いて観ることができました。ふつうに4日間明治座に通う予定だったから初日くらい何の予習もなしに臨んでもよかったかもしれないとは思いつつ、初日→『逃げ若』13巻分読破→2日目…とか、さすがに無理だったので…。

事前インタビューとかでもだいぶ期待値があがっちゃって…。もともと相葉さんの男男クソデカ感情ミュージカル観たいな〜と思ってたところでもありましたし、もちろん相葉さんと内藤さんはアンジョとマリウスでもありますし、脚本の池田テツヒロさんが観応の擾乱を「兄弟の仲が良すぎるが故の悲劇」と捉えてるという発言があったので、やばそうだな!?と。

池田:でも、内藤さんとばっちの良さみたいなものを考えると、「すごく仲の良い兄弟が故に」みたいなことにしないと、この物語は報われないだろうなと思っているので……
https://spice.eplus.jp/articles/320926

「4日間だけの“狂宴”をお届けします!」~祭シリーズvol .13 シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記』池田テツヒロ・相葉裕樹・内藤大希インタビュー

私まあ兄弟萌えみたいなのはないんですが「光の王(概念)を輝かせるために臣下が暗躍し、すべての罪を背負って死んでいく」みたいな展開がツボで……これを「君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる展開」と勝手に呼んでるんですけど。割と物語の核心になりがちなので、近い作品を挙げるとスーパー大ネタバレになってしまうんですよね。でも特に好きなのはこれと、これ

それで、この展開になったらどうしよう…好きすぎる…でもこの展開を期待しすぎて違ってがっかりするのもおかしい…と思って事前に意識的に期待値を下げにかかってたんですが、見事に冒頭から““それ””という親切設計だったので、泣くとかじゃなくてずっとニヤニヤしてしまった。4日間ニヤニヤし続けた…。まじで冒頭からというのが優しいよ。「そこに向かっていくんだな」と思えるし、ネタバレ気にせず「この展開です!!好きな人観て!!!」とSNSで言えるという。あとなぜか初日の2部コントで内藤さんが「空と君とのあいだに」を歌ってたのでびびりました。歌は日替わりだったし、リコーダーの“間”をくっつける展開だったからかなとは思いながらも、直義として何か共感するとこありました!?

まあそんなこんなで早々に最高〜♪になってしまったんですけど、全体の物語的にも、何回観ても「よくまとめたな!」という感じで拍手でした。とはいえ、2時間強のミュージカルをプリンシパル18人でやるというところにちょっともったいなさも感じ、もっともっと掘り下げてほしい!と思ったところもあり、でもこれ以上公演が長かったらつらいというところもあり。そもそも脚本も削って削ってこの形になったとのことだったので、削ってないバージョン読ませてください!「さらっと進んでるが実はシーン間で十数年空いてます」みたいなとこもありましたよね。

がっつりミュージカルやってたなと思いながらも、食べた味が「小劇場系大劇場エンタメ」(今作った言葉)に近いとこあったのも、不思議でした。ありていに言ってしまえば、割と新感線とかの味に近いというか。茶化しの感じとかかな?とはいえ新感線ほど業界の評論の俎上にのらなそうなところ、もったいなくも感じる。別にそれを求めてないかとは思いますが。

相葉尊氏について

なんとなくるひまってジャンルとしての小劇場系と思っていたので、そこで相葉さんが何を求められるんだろう…というのはあり、そっち方面を求められるのかな〜向いてるかな?という一種の懸念みたいなものもあったものですけど、蓋を開けてみたら「戦う姿が美しい」「戦場の華」「天性のもののふ」だったし、翼生えたし、みんな尊氏に魅了されて人生狂っていったので、ファンでもびっくりしました。イケテツさんは当て書きだというし、そんなに相葉さんのこと好きだったの!?

優一さんはアンジョ経験者(しかも旧演出)だし「マリウスとアンジョルラスをるひまに引き込む」宣言してたから、レミゼを通った客がどれだけアンジョに夢見ているか知ってるだろう…みたいなところもあって期待してたけど、1幕最後で尊氏にあんな翼生やしてくれるとは。あそこ相葉さんの動作もめっちゃ美しかったし、その前の「ああ〜♪」も一番よく響いていて最高最高。しかもバックスクリーンだけでなくサイドの映像も合わせると6枚羽根のようにも見え、「セラフィム(熾天使)!?」にもなりました(厨二発想)。相葉さん自身の「異様に舞台映えし、キラキラとして見える」という性質が尊氏に昇華されてて、「イケテツさんも原田さんも役者の良さを見抜いててすごい」と思いました。

でも相葉尊氏全然すんとしているというか、当然みたいな感じで受け止めてるのですごい。相葉さんはよく「兄の方がモテてた」とかエピソード話していますが、やっぱりずっとイケメンとして生きてきた人特有のてらいのなさみたいなものを感じ、だからこそ尊氏が「離縁はしません。愛されてるから!」とか言ってもまったく嫌味にならないんですよね。作品として「イケメン役者のキラキラ感を消してこそ演劇だ!」みたいにもなってないし、制作者全員こじらせてない!と思ってとてもよかったです。でもあえて言うなら、2部も含めて醜女ネタは入れなくともいいんでは〜とは思ったかな。

尊氏は優しくて周囲の人のために力を発揮できるけど、あんまり相手に依存しない感じも、愛され慣れすぎてる…て感じの光の怖さがあってよかったです。あれで尊氏がもっとよっかかるタイプだったら、直義はもう絶対絶対共依存まっしぐらじゃん。それでもクライマックスで刀を向けながら「直義、いやだ!!!」っていう相葉さんの声の悲痛さ、今まで観てきた中でもトップレベルだったなあ。あと実際のところ、「戦えば楽しい」というドラゴンボールの悟空的性質を無意識に優しさで抑え込んでいる感じも逆に怖くてよかったな。気づいてないのか!?と。なのに周囲はそのリミッターを外したところを求め続けると…。

歌もとてもよかった!さすがに4日間8公演(公開ゲネ入れて9公演by本人)なので中日あたりが声の伸びも1番よかった気がしたけど、毎回大拍手でした。尊氏&直義の歌唱は、それぞれ声の性質も違うのに、ハーモニーが重なり合うと一瞬「どっちがどっち!?」という感覚になる程混ざり合っていて「兄弟〜!」という感じで不思議でした。

結末について

これはまあパンフレットでイケテツさんが「マルチバースでハッピーエンド軸を匂わせる」(意訳)と明言していたので、素直に受け取りました。ループ説もわかるんだけど、それならそれでもう少しはっきり「ループです!」と示さないと、ループものの旨味がないかな〜と思う。もちろん作品の解釈は自由だけど、パラテクストで構造が明示されてるので素直に…最後ちょっと記憶持ちっぽいのは、別世界とじんわり記憶や感覚を共有している尊氏なのかなという感じ。逆にループとかマルチバースとかの要素を考えないでそのままラストを受け取ると、直義から自立して1人で道を歩まなければいけない尊氏の心象風景というか、「こうであってほしかった」という夢みたいなものなのかな…という解釈をしていたかも。

ループじゃないなら、冒頭の尊氏の「♪この結末から逃れたくて 幾度も流れにあらがい続けた」「♪なのに何故 この向かい風は 俺たちを この結末に 連れてくるのだっ!」という歌はなんなんだ…というところでもあるんですけど、素直に受け取ると、戦いが引き起こす悲劇から逃れたくて、いつだって「戦いたくない」とあらがってきた尊氏の心境を表しているのかな〜。そこからすると、最後のハッピーエンド軸で「♪流されてもいいよな」というのは、むしろ流された方がいい結果になるよ!ということなのかもしれない。

本編の尊氏を「流されている人」と捉えると、最後の「♪流されてもいいよな」で、「よくないよ!また悲劇だよ!」と思うんですけど、時代に選ばれたのに「流れにあらがおうとしていた人」でそれ故に悲劇を迎えるのだと捉えると、ちゃんと流れに乗る方がハッピーエンドになるよということなのかも。これはけっこうきれいな読みな気がする。とはいえ、単に「ハッピーエンドが待ってるなら、流されてもいいじゃないか」ということなのかもしれない…という気持ちもある。どうなんだろう。

2部について

ちょっともう疲れてきたので駆け足ですいません。みんなやばかったし鯨井さん司会がとにかくすごかった。

・鹿るGENJI『ナラダイス★銀河劇場』

オープニングアクトと言われるだけあり、きれいにまとまっていてよかった。でも6人なんですか!?7人ではなく!?鹿るも思春期だし、リーダーズも小学生なので、なぜかもじもじしている子が多い2部。

・ActSTONES『イミネーッショ・レイン坊』

すとをパロった結果「だりぃぜ!」という謎キャラにされててウケた。むしろやる気まんまんでうるさい方というイメージ。14歳設定ってなに?と思ってたら厨二病てことだったんですね。ウジーは爆イケ。千秋楽でMORRY(りょがくん)がウジーに「ラブパワーくれ」とか言って絡んでて爆萌えたけど、本当は「ラブスイートパウダー」だったのもじわった。うろ覚えすぎるだろ!相葉さん「#今日のりょうが君」続けてくれてもよかったんですよ。

・新しい都のリーダーズ『キゾクブルー』

なんだかんだ一番完成度の高さを感じていた。小学生が憑依していたKAZYU(広井くん)にいい意味で恐怖を感じた。SHIGENON(はるちゃん)はパッとリミッターを外せる割に、意外とまともなのが逆に怖い。カウントダウン公演がとにかく怖すぎて、途中でエンリコ(エンのリコーダー)の上半身を持ってくるASHIKA(内藤さん)、「これ2024年にやることかなあ?」と正気に戻るENN(加藤さん)などほんとにやばかった。

・ミュージカル『ナラジン』より「三種のジンギー」「ア・ホーリュー・ジ・ワー(あ、法隆寺は?)」

アラジン(内藤さん)の母音法おもしろすぎたけど、こんなわかりやすくいじっていていいのかなと四季ファン兼相葉ファンの方を心配したら「あれ大好きです」と言ってたので安心した。意外とビジュアル出オチで奈良ネタは弱かった(ごめんなさい)。ジンギーは自分のキャラが定まってないことを心配してて、たしかにそうなんよね。完全にジーニー寄りだったし。アラジンはジャスミンティーを助けたいと言ってるけど、特に捕まったりしているわけでもなかったのでなんだったんだ。あとジャスミンティー普通に美人だからあ…。

ナラジンは奈良人なのでジャスミンティーと共に奈良を愛している感じで、うまくやってけそうじゃんと思いました。相葉さん、他の役の時結構着込んでるので、ナラジンの時はスタイルの良さがよくわかる。一方でいい感じに音楽に乗せて「とにかく女がほしい♪」「お前の女を奪って俺のもの♪」とかクズいこと言ってるのが割とツボだった。

・THE ZEN 『JI-AI』

まさかこれが大問題作とは思わなかったじゃん。みんなの心に恐怖を植えつけた愛・尊氏よ…。カウントダウン公演での、KAZYUとのじゃんけんのやりとりは一生面白くて、どーよ(いざーさん)が普通に常識人に見えるほどでした。いうて愛・尊氏、途中の公演でも拳を握って抑えたり、「さあ準備だ……」がラスボスすぎてやばいやつだとはわかってましたが、最終日でKAZYUに「おい小僧」とか言い出したのは、GANTZで大仏が襲ってきた時みたいな笑いが出ました(わかりづらい喩え)。でもあれ、「新テニミュの時にもベンチで金ちゃんの胸ぐらつかんでたな…」という懐かしさもありました。相葉さんがこっちでこんだけ暴れられるのを見ると、日比谷でもなんか見れない?求められる笑いって種類違ったっけ??とも思う。まあ実際全然違うかもしれない。

あと「愛・高時(松田岳)、めちゃくちゃ愛・尊氏にウケてるじゃん」と思ってたら、最終日に「こんなに愛に溢れた人はいません最高です大好きです!」と告ってたのでびっくりしました。初代座長と言っても12年空いてるし「どんなもんだ〜?」と思われてそうなところでもあったけど(想像)認められた感あってよかった。愛・義貞(まえかーさん)も体折るくらいウケててかわいかった。

ちなみに明かっち家さんまミーアちゃんの返しは初日の「確定申告が複雑そうなのでごめんなさい!」が好きでした。あれが即出てくるのすごすぎる。ダーリン(伊藤裕一さん)はシンプルに好き。

そして『JI-AI』は本当に良曲でした!愛・尊氏と愛・直義の肩についてるひらひらがシンメになってて、向かい合ってひらひらがついてる方の腕を上げるのが最高でした。30代半ばのミュージカル俳優がこんなアイドルやってくれるなんて夢があるな。

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