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ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 SeasonA~の感想(相葉ジミー)

ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 SeasonA~(@オルタナティブシアター 7月28日~8月14日)感想です。もっと早くあげねば…と思いながら千秋楽直前ぎりぎりになってもうた。

・あらすじ
ミュージカル映画の曲を書くという大ブレイクのチャンスをつかんでブロードウェイから夢のハリウッドへやってきたのは、作曲家の兄ジミーと、作詞家の弟ボビーのマーティン兄弟。
舞台はこれから二人の仕事場となるリハーサルスタジオのバンガローだ。
しかし、曲作りのために社長のガーナーから与えられた時間はたったの数時間!
しかも、楽曲が気に入ってもらえなければ、即クビ!!
そこに代わる代わるやって来るのは、社長秘書のミリー、年老いた音響技師ビックス、インターンのシーモア、エージェントのクイックリー、セクシーな美女レベッカなど…個性溢れる人物たち。
ときに協力し、ときに喧嘩して、仕事に恋に奔走するマーティン兄弟。
2人は無事に成功をおさめることができるのか…!?

全体の感想

「スリル・ミー」「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」「マーダー・フォー・トゥー」、あと最近ではLDHがやってる韓国ミュージカルなど、日本に来る少人数ミュージカル(特に男性2人の作品)はウェルメイドなものが多い印象で、どんどんやってほしいな~と思っていたので、まさか相葉さんが出てくれるとは思わず嬉しかったです。雑な分類をすると「スリル・ミー」「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」はずっと同じ人物2人の関係性を描いており、「マーダー・フォー・トゥー」「ダブル・トラブル」は2人で何役も演じる。キャストがピアノも弾いたりそのままで演じ分けたりするパフォーマンスが見られるのが「マーダー・フォー・トゥー」、キャストが着替えもして奮闘する様をメタ的にも楽しめるのが「ダブル・トラブル」みたいな印象でした。ちなみにしれっと今年のマーダー見たみたいな空気出したけど私が見たのは6年前の方じゃ…つい最近の気がするのに…。

舞台はハリウッドのMMG社、ということでもちろんMGMのパロディであり、MGMミュージカルの空気に溢れています。そもそも2人が呼ばれたのは映画「ブロードウェイ・メロディー」の曲を書いてくれという依頼なわけですが、これ実際には1929年に公開されてるMGM第1作目のタイトルなので、ある種のエモさとリスペクトも感じつつ、「オズの魔法使い」や「雨に唄えば」が存在するのに「ブロードウェイ・メロディー」はこれから作る(おそらくストーリーは全然違いそうですが)というのはどういう世界線なんだ!?と若干不思議な気持ちにもなったりします。そして私はプロデューサーズも好きなのでそちらと似た空気も感じたんですけど、プロデューサーズもMGMミュージカルのオマージュが散りばめられていて、しかも両作とも同年代にアメリカで初演を迎えていると思うと不思議です。そういうなつかしむ空気的なのがあったのでしょうか。それとも常に生まれててたまたま日本まで来てる作品が同年代だったんだよってことなのかな。

全体的な面白さとしては、やはり個性的な役の演じ分けと早替わり、そこに歌とダンスもガチなわけで、本当に贅沢なミュージカルです。ワンシチュエーションのセットを2人(とシャドーの2人)が出たり入ったりしながらどんどん役替わりしていくのですが、この面白さあんまり言葉じゃ説明できないんだよ~。見に行って!「譲りが出てない」というあなた、チケットはTwitterだけじゃなくてプレイガイドにもあるんだよ!!「当日券あるのかなあ」と言ってるあなた、気持ちはわかるが当日券なくなる心配ないから!

頑張って説明しようとすると、例えば最初の役替わり、ボビーがバスルームで歯を磨く音が響いているうちに、ガーナーさんという映画会社社長に扮して部屋を訪問したりするところに驚くと思います。すりガラスもうまく使っていて、シルエットだけで表れるときはシャドーの方だったりするんですけど、冒頭の場面では本役の2人もすりガラスの向こうに行って「すりガラスにいるのは不自然じゃないんですよ~」という提示がなされてたりするんですよね。上手く説明できてるか?これ。

意外に難しいのが、この役替わりが「お見事!」となるのがいい場面と、逆に大変そうで「やば!」になるのが面白い場面があるなあと。大半は「いつのまに変わったの!?」で正解なんですが、1幕ではそれぞれ1人で入れ替わりを見せなければいけない場面が用意されており、そこはバタバタしてる方が面白かったりする。弟・ボビーとアシスタントのシーモアが1人で入れ替わらなければいけないシーン、当初はけっこうスッと替わっていたように思うのですが、回が進むにつれて文ちゃんがわざわざドタドタと足音を立てるようになり、そっちの方が笑いが起こるんですよね。兄・ジミーと音響技師・ビックスがブースの中で交互に話すシーンも、スマートにこなすよりも服が引っ掛かってるだけとか慌てた感じになってる方が面白い。ほかにも2人が本気で笑わせ合おうとして、ちょっと吹き出しちゃうところに観客が反応している。パンフレットで相葉さんが「ウォーリーさんからどの役にも半分自分が入っていい、その方が面白味になると言われた」(意訳)と言ってたのがわかるなと思ったところでした。

で、それだけ作りとして面白いことをやってるのに、歌もダンスもめちゃくちゃガチで入ってるのがこの作品のやばいところであり、観客としては嬉しいところでもあります。タップとかも含めてMGMミュージカルみのある楽曲たちなわけですが、個人的にはJおたくの出自を持ち、履修のために一時期MGM作品をちょこちょこ見ていたので実家感、そしてCATプロデュースぽさ感じました。あんまり詳しくないけど宝塚もこの時代のショーアップされた作品多いと思うので、OGバージョンのダブル・トラブルとかあったら面白そう。兄弟はかっこいいだろうし女装(?)も素敵そうだし。

相葉さんの感想

さて今回相葉さんが演じるのはジミー(マーティン兄弟の兄)、ビックス・ミンキー(音響技師のおじいちゃん)、レベッカ・レフリューデルマガニス(セクシーな女優)、クイックリー・モリス(素早い動きの凄腕エージェント)、プレストン・クリースト(映画監督)、シュースター(クリーストの飼い犬)、ジーナ・ジャンパー(ラジオDJ ※声のみ)。全部楽しいしこんな見れるのほんと最高でした。

まず本役と言っていいのか、兄のジミーがめっっちゃくちゃかっこいい!!そんでもってかわいい!!!相葉裕樹、シンプル衣装で脚長スタイル際立つ(モデルプレスの見出し?)。ボビーが「兄貴は才能がマックス!僕はこのルックス!」歌うけど審議審議!兄貴のルックスもマックスやろがい!と思っております。そんなぱっと見で明らかにかっこいい兄なんだけど、ちょっと頼りなくて、情けなくも「ああ~~~~~」と出す声のかわいさがすごい。相葉さんもともとちょっとアイドル感あるルックスの上に、今回痩せられてさらに「僕、アイドル事務所から来ました!」感があり、それなのに口を開くとミュージカル俳優の歌声なので見るたびに脳が「え!?」とびっくりして面白いです。別にがっつり見た目を作ってるわけでもないのになぜか相葉さんが新テニミュに出た時と同じ現象起きてる。

ジミーは歌もダンスもたくさんありました。全部良かったけど、特に好きだったのは1幕「ファーストクラスの恋」の高音かなあ。聴いててこれこれ~になりました。「ハーレム・ナイツ」はやること盛り沢山で一生懸命さが見えてなんかかわいかった。タットがきれいなのにカップスが危うくてにやにやしてしまう(ごめん)。今の髪型が本当にかっこよくて、でも踊りながら刈り上げの上の部分がファサッとなってるのがかわいくてにこにこです。「なんでもできる リプライズ」の「わーーーーかったよ!!」の気持ちよさも異常。歌声がまっすぐ突き抜けてくる。そしてもはや歌が安定したとか言及するのも失礼かもしれないと思うほど安定しましたね。

踊る場面もいっぱいで、私は特に2幕最後の燕尾服ダンスが好きでした。燕尾服似合いすぎだし、背筋のすっと伸びたタップもいい。ピケターンみたいな感じでくるくるするところも首が切れててきれいです。キメの2回連続回転もアガる。2回転ピルエットじゃなくて、タッ、タッって2回決めるやつ好きなんですよ。他のどのキャラクターがすごくても、兄弟2人がちゃんと締めてくれるのがこの作品のよきところですよね。

各キャラクターについて

おじいちゃんのビックスは腰を曲げて登場するんですが、腰の位置が高すぎて「そこなの??」と驚きます。ツイステ6章のヴィル様でいっぱい聞いたおじいちゃん声も早速生かされとる。クイックリー・モリスは面白いはずなんだけど、着こなしまくってるから意外とシンプルにかっこいいし、歌も低音がしっかり出てて素敵。最後の「コールドセサミヌードール♪」がすごい響いてました。そんでクイックリーが浜中シーモアにボビーの服着せる時の「そっwくwりwだーwww」が頭から離れなくて困る。笑っちゃってるのに全然歌がぶれなくてすごい。あとジーナ・ジャンパーの声も色っぽくて好きです。

みんな大好きプレストン・クリーストは稽古場写真が出た時から「やべえ…」と思っていましたが、本当にやばかった。おそらく戦国鍋TVとかで発揮されてた、相葉さんの「様子のおかしいイケメン」芸の真骨頂なんだろうな…としみじみとしてしまいました。

しかも日に日に客席に向かって圧かけてくるから、もう怖すぎて目を逸らすよね。相葉さんが客席に向かってなんか叫ぶと必ず笑ってしまう。犬のシュースターに向けて「シューちゃん?シューちゃん?」と言うところとか、「なにこれバラード??バラード????私の映画ではぜったいつかわないぜったあーい!!!!」という声音とかも、名人芸を感じました。これで食ってきたんだな…(食ってきてない)。この記事では「直球熱演型の相葉と、それを抑えた演技で的確に受け止める浜中のコンビネーションが抜群」と表されておりましたが、クリースト監督を見ると直球でいいのか…?とちょっと疑問でしたし文一も別に受け止めてはいないという。波動球型みたいな表現が正しいかもしれません。

それで最後にとっておいたのですが…レベッカ!!181cm+7cmヒールなので、登場した時、そしてボビーと並んだ時にでっか!!と驚く。肩強!なのに手足が細く長く、特に美脚はちょっとずるいよな~と思ってしまうくらいすらっとしていた。レベッカの額縁写真、いやもう撮り下ろしグラビアください。

まあ実際みると本当に圧というか凄みがあるのですが、だんだん美女にしか見えなくなってくから不思議です…。仕草がかわいいし、割とぶりっこしてるし、ソファひっくり返しちゃった時もソファをぽかぽかしながら戻そうとしていてかわいい。もう声も本当に女性のように聞こえてくる…。それでいてドスをきかせるところで声色がガラッと変わる上に、ほんとに怖くて面白い。私は「チャチャ♡」の言い方を毎日楽しみにしておりました。ねっとりした日もあればツンと小悪魔に聞こえる日もあり、さらには踊る背中が意外に艶かしいという。浜中ボビーはガンガンお尻掴んで叩いてくるのでおい!となり、横山ボビーはかなりピュアで相葉レベッカも「おいでっ」と言ってたので、捕まる……と心配しました。でも自分も思春期男子のような気持ちで見ることができました(?)

共演者の皆さん

浜中文一ボビーにつきましては、私Jの村出身で、今は諸事情でかの事務所とは距離を置いておりますので、「まさかここで文一と交わるとは…」というところに驚きましたわね。とは言いつつ東の地方のものでしたから、見る機会といえば少クラin大阪とかまいジャニとか、SHOCKとか?雑誌では毎月見ておりましたが、そこまで触れてはいなかったはずなのに、すごく感じる…松竹座の風を!バンバンッ!!感じる。相葉さんに「名人芸だ」と思ったのと同じく、文一氏にも「文一のエキスだこれ」というようなことをめちゃくちゃ思ったのが面白かったです。もう芸通り越してエキスなのよ。浜中レベッカの「ああ~今日は潮の流れが速いですなあ」浴びたときはまじで声出た。相葉さんとは芸風が違う2人のコラボに見えながらも、奇声でゴリ押すとか似たところもありました。

でも文一氏って割と関西の後輩の笑いに対しては厳しいイメージがあったので、今回相葉さんの言動にけっこうゲラってるのが意外でした。たぶん相葉さんが勢いでどうにかしようとしてるのが面白いんだろうけど、ちょっと甘さというか、ちびジュに対する感じ?かわいいから笑っちゃうん??みたいなことも思いました。公開ゲネプロの前説で「僕が女性だったらめちゃめちゃ恋してます」と言ってたらしいので、そこんところ詳しく。

横山賀三ボビーについては、とにかく孫の一言に尽きる。いや刀ミュ「静かの海のパライソ」で見た時に「すごいうまい子がいる!ヤングシンバか!!」と思った覚えはあったんですが、こちらもまさかこういう形で交わるとは…。本当に演技も歌声も伸びやかで、ダンスや動きも体重がないみたい。達者なんだけどまだまだ少年感もたっぷりで、兄弟が並んだところかわいすぎた。あまりにも少年なので、ジミーは弟の彼女を取るなよ!!!!と思うくらいです。大人げねえのよ。そして横山レベッカは少女すぎて「こんなの見てていいのか…」と罪悪感が生まれるほどでした。

今回スケジュールのやりくりが大変すぎて、残念ながら日野さんジミーは見られなかったのですよね…。でも日野さんTwitterとかでも優しくてとても好きになりました。LE VELVETSって徳が高くないと入れないんですか???シャドーの皆さんも仲良しだし演者の動きを再現してくださってたし、ピアノも毎回楽しみでした。

ちょっともやもやするところ

男性ということをアウティングされ失脚?というレベッカのオチは…もうちょっとあんまり笑えないなあとは思ってしまいました。一応シーモアのフォロー?が入ってるのが2000年代の作品だなとは思いつつ…。会場でも帰り際に外で「あそこはちょっと…」と話してる人とかいて、そうだよなあと。怒ってるとか批判とかじゃなく、もう「あ~」と思っちゃって素直に笑えないんだよなあ。それでこの作品自体の楽しさが損なわれるわけではなく、ハイヒール脱ぎ捨てる相葉レベッカの図も非常に好きなんですけど…(好きなんかい)なんだか難しいなと思ったところでした。レベッカを男性が演じてるというところを逆手にとってのオチだと思いつつ、だからこその生々しさも感じてしまったのかな。ついでに言うとクイックリーさん、ハプニングでミリーのスカート覗いちゃうのはまだしもめくるのはやめて~~。

こういうのっていち観客として「ん?」となってしまうのもつらいし、めぐりめぐっていつか何かの時に推しの発言が燃えたりしてもつらいので学ぶ機会があってくれ…とも思う。こないだバズってた「LGBTQ 報道ガイドライン -多様な性のあり方の視点から -」とか、いろいろ言語化されててよかったです。

あとこれは外側の話で、今回J案件だからたくさん記事上がってたのは嬉しかったのですが、舞台映像が上がらないとか配信が絶望的だとか…共演者側のファンとしてもがっかりしちゃうし、舞台班の未来も先細りになるんでは~とは思っちゃいました。広がらないでしょ。配信ない代わりに全レベッカで「私のオキテ」〜2022夏〜ください(強欲)

とまあ最後にもやりも出してしまいましたが、本当にこのコロナ禍において楽しく何回でも観たくなる舞台でした。ありがとうございました!

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