小説家の連載「18歳高3娘の彼氏が35歳?!」第6話(最終話)

〈前回のあらすじ:アオイとヒロシは、ヒロシの姉の息子で、就職先が決まって暇しているショウに、探偵業を依頼する。ヒナコの事を妹のように可愛がっているショウは、叔父夫婦からの依頼を快諾。果たしてヒナコの彼氏、ヨウタの正体とは・・・?〉

 ショウの探偵っぷりはすごかった。
 時間を持て余しているだけあって、暇な時間を全部尾行調査に費やしたらしい。
 2週間の間、ヨウタの事を追跡し、結果を持ってやってきた。
 休日、叔父一家の家にやってきたヨウタは、まずは叔父夫婦に先に調査結果を伝える事にする。
 アオイとヒロシは、話を聞いて青ざめた。一通り話した後、ヒナコを自室からリビングに呼ぶ。
「叔父さんと叔母さんから頼まれて、お前の彼氏の調査をしていた。今日はその調査結果を伝えに来た」
「え、調査?!パパとママ、何やってんの?!」
 青天の霹靂に、ヒナコは顔を赤くしたり青くしたりして憤る。
「それもこれも、ヒナコがよくわからん男と付き合うからいけないんだろ。だから俺が探偵みたいな事しなきゃいけなくなるんだ。叔父さんと叔母さんを心配させて、楽しいかよ。一人娘なのに」
 ショウは呆れたように年下の従妹に向かって言い放つ。ヒナコは何か言い返したかったが、相手が兄のように慕っている従兄なので、何も言えない。
 ヒナコが黙ると、ショウは写真や書類をテーブルの上に広げた。書類はワードで作った、調査結果をまとめたものだ。
「まず、ヒナコの彼氏は35歳。職業は会社員だな。食品関係の会社で働いている。まあ、普通のサラリーマンだ。ここまでは何もおかしくない。しかしだ」
 ここで1枚の写真を見せる。そこにはヨウタと、5歳ぐらいの男の子、2歳ぐらいの男の子、そして、赤ちゃんを抱えた女性が映っている。公園で過ごしている姿は、幸せそうな5人家族みたいだ。
 ヒナコは訳が分からないという顔。アオイとヒロシは青ざめたまま黙っている。
「彼氏は既婚者、ではなく、ではないが、バツイチ子持ちだった。この写真は、たまたま子供達との面会日だったらしくて撮れたんだ。この男は3人の子持ちなんだ。しかも、末っ子はまだ赤ちゃんだ。この子はな、この男がヒナコと付き合いだす直前に生まれた。離婚が成立したのもこの頃のようだ。つまりだな、ヒナコがこの男と出会って、悩み相談をしてもらっている時は、まだ既婚者だった」
「そんな!」
 衝撃の事実にヒナコは真っ青になる。
「しかもな、公園での会話を盗み聞きしてわかったが、ヒナコの彼氏は、どうやら、定期的に面会させなければ養育費を払わないと元奥さんに脅迫している。だから、イヤイヤ会わせてるって訳だ。子供達は懐いているみたいだが・・・更に、元奥さんに、今彼女が居るから養育費を減額しろとか、いろいろ言っていた。どうだ?ここまで聞いてもまだ、彼氏の事が好きか?」
 従兄の問いかけに、ヒナコは声を震わせながら答える。
「そんな・・・でも、イマドキ離婚は珍しくないでしょ?付き合う頃に離婚してたなら、不倫ではないし・・・・」
「そっか。じゃあ、もしお前が3人の子供を育てる事になったらどうする?」
「えっ?!」
 この問いかけにはぎょっとしたヒナコ。
 ショウは平然として続ける。
「だって、ありえなくはないだろ。元奥さんに何かあったら、彼氏が子育てする事になるよな。彼氏の子供なんだから。それで、このまま彼氏と交際してたら、子供の面倒を見るの付き合わされたり、下手したらヒナコが彼氏の子供を育てる事になるかもしれないぜ」
「何で私が?!」
「いやいや。もし彼氏と結婚したら、ヒナコは子供達の継母になるんだぞ。それを大義名分にして、ヒナコが希望してなくても、彼氏が子育てを強制してくるかもしれない。そんな事もわからないのか?」
 ヒナコは泣き出した。
「うっ・・・そんな・・・でも・・・そうだよね」
 涙を拭くヒナコ。
 ショウはきっぱりと言った。
「ここに彼氏を呼んで話を聞こう」
 
 呼び出されたヨウタは気まずそうにしていた。
 シェパードのシーザーが、歯をむき出しにしてヨウタに吠え掛かるので、アオイが犬を抑える。
「わんわん!うぉん!ぐるるるるるる・・・」
「シーザー、しっ」
「ぐるるるるるるる・・・」
 いつも誰にでもフレンドリーなシーザーが、こんな態度。
 ショウはヨウタに挨拶をすると、事の経緯を説明した。
「・・・という訳で、あんたがバツイチ子持ちなのはみんな知ってる。で、申し開きはある?子持ちなのを隠して、成人したばっかりのヒナコと付き合ったんだよな?ぶっちゃけ、ヒナコが成人するのを待って付き合ったのって、親に通報されたりするのを防ぐためだろ?小賢しいな」
「・・・そこまでばれてるのか」
 ヨウタは観念したように溜息をつく。
 ヒナコは青ざめて問い詰めた。
「ヨウタ!本当なの?!しかも、私にも子育てさせるつもりだったの?!」
 ヨウタはヒナコを見ると、半分バカにしているような目で、
「・・・うんまあ、ヒナコとは再婚するつもりだったけど。子育てもやってもらおうと思ってたよ。元嫁に養育費払うのだるいし。子供達も若いママなら嬉しいかと思って。駄目だった?」
「そんな!私赤ちゃんの面倒何て見れない!」
「・・・じゃあ、ヒナコの俺への気持ちってその程度何だな。好きな男がバツイチ子持ちって知ってがっかりするんだ?」
「・・・・」
 ヒナコは大きな目に涙をためている。
 その瞬間、アオイとヒロシが激怒した。
「てめぇ、うちの娘を何だと思ってるのよ!」
「娘を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
「俺も同意見だ!訴える事はしないが、とっとと出ていけ!」
 ショウもブチギレた。シーザーも怒り、抑えつけられていたのをすり抜け、噛みつくような勢いで、
「ばうばうばう!」
 と威嚇した。
「うわあああああ!」
 ヨウタは悲鳴を上げながら家を出ていき、2度と戻ってくる事は無かった。

 その後、一同は落ち着きを取り戻すと、まずはヒナコへの説教。
 ネットで知り合った男性を簡単に信じてはいけないという事と、バツイチ子持ち男性との交際はいろいろなリスクがある事をこんこんと説明し、ヒナコも反省した。
 ショウは親友をヒナコに紹介し、付き合う事になった。ショウの友人なので信頼できる誠実な人で、両親は安心している。
 しかし・・・この18歳成人制度、本当に正しかったのだろうか?
 従来の20歳成人に戻さなければ、子供を守る事はできないのではないだろうか。
 両親はそう思ってしまうのだった。
                               「完」
 



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