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自治体システム標準化~高コスト化の温床か?「非機能要件の標準」③スラっと流せよSLA編

共闘プラットフォームで真っ先に話題に出たのがSLAだ。ただ、一般的なそれとは様相が違う。あまり真剣に時間を割く必要もないだろうというのが私の見解だ。ただし、これを機に稼働率とコストの意識改革を自治体、ベンダーとにも求める。


A.1.5.1/可用性/継続性

●メトリクス
稼働率

●メトリクス(説明)
明示された利用条件の下で、情報システムが要求されたサービスを提供できる割合。
明示された利用条件とは、運用スケジュールや、目標復旧水準により定義された業務が稼働している条件を指す。
その稼働時間の中で、サービス中断が発生した時間により稼働率を求める。
一般的にサービス利用料と稼働率は比例関係にある。

●標準選択レベル
3(99.5%)

●選択時の条件
ベンダーのサポート拠点から、車で2時間程度の場所にあることを想定
1回当たり6時間程度停止する故障を年間2回まで許容する。
[+] コストと地理的条件等の実現性を確認した上で、業務への支障が大きいことが明らかである場合
[-] 地理的条件から実現困難な場合。業務停止が許容できる場合。

●備考
【レベル】
稼働時間(バッチ処理等を含む運用時間)を平日のみ1日当たり12時間と想定した場合。
99.99%・・・・年間累計停止時間17分
99.9%・・・・・年間累計停止時間2.9時間
99.5%・・・・・年間累計停止時間14.5時間
99%・・・・・・年間累計停止時間29時間
95%・・・・・・年間累計停止時間145時間

まず、真剣に考えるのが無駄な理由。選択時の条件にある「ベンダーのサポート拠点から、車で2時間程度の場所にあることを想定。」。もはや、パブリッククラウドを利用する想定ではないのだ。まず、AWSを例に言えばデータセンターの所在地は秘密である。秘密の場所に、2時間で我々ベンダーが到着するかどうかもわからないし、そもそも到着しても入れてくれないだろう。
さらに、ベンダーの人間は稼働率と聞くと、直列構成と並列構成の計算式を情報処理試験で勉強した知識から引っ張りだすが、そんな計算をしろとは言っていないのだ。

構成別の稼働率を計算しろとはどこにも記載していない

利用ガイドを見てみよう

「非機能要件の標準」の多くは、平成26年3月に財団法人地方自治情報センターが出した「非機能要件グレード(地方公共団体版)利用ガイド」がもとになってて、ページの紐づけまで記載されている。その利用ガイドには稼働率の計算式は以下の通りとなっている。

利用ガイドにある稼働率の計算式

実サービス稼働時間とは、情報システムが停止せずにサービスを提供した累計の時間である。
ベンダーとの契約に当たっては、情報システムが停止した時間に、情報システムの部分的な停止(端末の故障やネットワークの停止による拠点別の停止)時間を除くか、
天災やベンダー以外の要因による停止時間を除くか等の条件について合意する必要
がある。
また、契約サービス時間とは、ベンダーが情報システムを稼働させる時間として契約において約束する時間である(C.1.1.1/C.1.1.2 運用時間とは必ずしも同じではない)。
通常、業務に利用する時間のほか、バッチ処理やバックアップ処理等を実施する時間が含まれるが、様々な捉え方がある。
稼働率の計算に当たって、どこまで含むかについて、ベンダーと合意する必要がある。
情報システムの稼働率は 100%、すなわち、停止時間はゼロであることが望ましいと考え、要件として示しがちであるが、情報システムの停止を皆無にすることは困難であり、停止時間を短くしようとすると、そのための対策(情報システム面や体制面)にコストが伴う
年間にどのくらいの停止が許容できるかを勘案し、費用対効果も考えて合理的な値を設定することが重要である。
なお、本項目の検収の扱いとしては、継続的に評価を行う対象として取り扱うことが考えられる。
SLM の考え方で継続的な評価を行いながら、その水準の維持・向上を図るよう運用することが望まれる。
情報システム調達仕様書にも「○○を目標とする」「およそ○○とする」等、目標値である旨の表記をすることも考慮する。

自治体とベンダーは"稼働率とコスト"の意識改革を!

自治体側は「何があっても窓口を止めてはならん」。本当にそうだろうか?
止めないためにどれだけの血税を投入しているか意識しているだろうか?そして、オンプレやベンダークラウドだった時代。すべてが売り上げに直結することになるので、高稼働率マンセー!とばかりにベンダーは、過剰な構成を提供していはいないだろうか?今後は、このコスト意識の欠如が、チャリンチャリンとアメリカ様に吸収される。
ベンダーは、稼働率毎の費用の階段表(メニュー表)を自治体に提示し、選択していただく必要があるだろう。
そして、自治体に提案したい。窓口に「たまにシステム停止してご迷惑をお掛けするかもしれません!その代わり、何千万円浮いたので〇〇に予算まわしました!」くらい掲示するくらいあってもよいのではないか?


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