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食べること

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食べることが好きです。子供の頃移民であったり、自分も留学生であったり、夫が外国人であったり。ちょっと国籍不明な食卓になりがちですが、そんなのも楽しい。だって食べることが大好きだか… もっと読む
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新年飯

新年明けましておめでとうございます。 note開始当時は溜まっていたものを掃き出すかのように、書き綴っていたのだけれど、それが一度落ち着いてからは書くことから少し遠のいていた。そして今また再燃してつらつらと書きたい内容を思い浮かべたりしているのだけれど、自叙欲の掃き出し作業が終わってスッキリしたからか、根っからの食いしん坊からか、大概何を思っても食べものから発展したり、起点が違えど最終的に食べ物につながっていったりしている。 困ったものだ。今年もダイエットとは程遠いかもし

年夜飯とおせち②

さて前回につづき、上海のおせちとも言える年夜飯を紹介したいと記憶を辿ってメニュウを調べてみた。この記事ですべてを紹介し切れるかわからないけれど、印象の強いものからとりあえず初めてみよう! 葱油海蜇萝卜丝 これは千切り大根とくらげの葱油和えである。干くらげは80℃でさっと湯どおしして戻しておく。千切りにした大根は塩をしてしんなりさせて水気を絞る。万能ネギは小口に切る。ボールに大根、ネギ、塩、熱した胡麻油入れてひと混ぜ、そこにくらげも加えてさらに和えて完成。 四喜烤麩 干

年夜飯とおせち①

師走ですね。先週の春を思わせる暖かな雨風からうってかわって、12月に入った途端に冷え込み、ぶわっと年末が目前に感じられるようになりました。11月初めから、街を歩けば『おせち承ります』の張り紙を見かけるようになり、12月にもなると『売り切れました』と、そのチラシの上にステッカーが貼り足されていくのを目にして、胃の下あたりがうずうずそわそわ。どうせ作りも、買いもしないのだから、あたふたする必要なんてないのにです。 さて、『おせち』をどうせ作りも買いもしないと書いたのだけれど、そ

おくち嗜好

柿はじゅくじゅく熟れたやわいのが好き だけれど、桃やメロンはシャクシャク硬いのが好き バナナですら外皮に緑が残るくらい硬めが好き 天津甘栗は食べるけど、マロンには興味がない 肉まんもあんまんも皮が好き あんまんに至っては中身をごっそり残したりする トマトは余計に一個多く買って、軽くお塩をふって台所で丸かじり 一番好きな調味料はたぶんお酢 最強の調味料コンボは、ごま油と醤油とお酢に蜂蜜ちょろり 子供の頃好きだったおやつは 『都こんぶ』と『麦ふぁ〜』と『ボンタンアメ』 子供の頃

小籠包

初めて小籠包を食べた日を、今でも覚えている。私は10代の反抗期まっさかり、20世紀末である。場所は上海の観光地として名高い麗しの豫園、その敷地半分を占める商業施設、豫園商城内に店を構える南翔饅頭店である。豫園は、16世紀中頃に孝行息子が愛する父親へのプレゼントとして造園した美しい庭園で(庭園プロジェクトが壮大すぎてが完成したのが父親の没後であったという、なんとも上海らしいオチ付きである)、近年造られた隣接の商業施設も伝統的な建築様式で建てられている。中国の物産品や工芸品を取り

参鶏湯

参鶏湯。読み方はサムゲタン。初めて食べたのはニューヨークのコリアタウン。その時一緒にいた人も、季節も、食べた時間も異様に鮮明に覚えている。雪がぱらつき、氷点下近い寒空の中、深夜に駆け込むように入った店であった。マンハッタン、ウエストサイド32丁目、マルティニークホテル横の縦長の店である。今はもうないかもしれない。 ニューヨークのKタウンは24時間営業である。いつ行っても美味しいご飯が食べられる、ヨアソビし放題の、もしくは寝ずに課題にとりくむ学生にとってはいつでも暖かい食事に

ブレックファースト

一日の始まりにみんなどんなものを食べているのだろう。のぞいてみたい。 子供ができる前、つまりニューヨークに住んでいた頃、朝ごはんは外で買い食いするものだった。早朝からカフェは開店し、道の至る所にベーグルとコーヒーを売る屋台が立ちしのぐ。みな行く先々で気に入りの店があり、授業や仕事が始まる前に買ってサクッと食べていた。私が通ったESLや大学では、生徒や先生もヨーグルトやらリンゴやらを教室に持ち込んで開始ギリギリまで齧っていた。「真面目に授業を聞きなさい」が授業だと思っていた私

干梅

先日小学校から帰宅した娘がやたらと空腹を主張し、お菓子を求めて家捜しするので、どうしたのかと聞いたら給食をあまり食べなかったという。配膳の量が少なかったわけではなく、好き嫌いで減らしてもらったそうなのだ。彼女があっけらかんとしているからなのか、パンデミック帰国を果し、転入して入った私の母校にはやさしい先生ばかりいるようだ。私が五歳で来日し、翌年入学した頃の先生達は厳しかった。隣の席の少年にちょっかいを出され、場違いに騒いでしまって廊下に放り出されたことも幾度とある。特に嫌な思

読みもの、のなかの食べもの

食欲もりもりの秋にみなさん何を食べていますか? ニューヨークに住んでいた頃、邦人も多かったし、日本食ブームも手伝って、日本食には全く困らなかった。それでも素材の違いか、空気感と雰囲気の違いか、口がホームシックになることがある。そんなとき決まって本棚から引っ張り出したのは、ごはんについて書かれているエッセイ集。今でも好きでことある毎に読み返す。東海林さだおさん、安野モヨコさん、角田光代さん、時代を遡れば、檀一雄さん、お嫁さんの檀晴子さん、邱永漢さん、向田邦子さん著の随筆集、エ