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時々ポエマーになります。 書き手は説明抜きで情景や感情を表現でき、受け取る側は、書き手と同じ風景は見えていなくても、言葉からその人自身の風景を見ることができると思う。そう言う意味… もっと読む
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熱帯

35度を越え 窓から入る柔らかいかぜ ザクザクと小気味よい若者の足音 遠く聞こえる電車のリズム 表皮から侵入しようとまとわる生ぬるい熱膜 あらがう私の皮下細胞 氷の入った飲み物はガラス越しに冷気を発し、水滴を集める ずっとなんてまやかし すべてはうつろう こんな当たり前のことわりから、いとも簡単に視線を逸らす 維持のためには現在を直視しないのが堅実な身のほどこし 熱にあらがえず、温度を迎え入れてしまう私の皮膚 一刻前の冷たいシャワーが足首に少し残る 熱帯で生を失った体

沈む洗面所

ああ ああ すべてがいやになる  もういやだ でもね、気がついてしまうのだ まわりをいやだいやだと思うのは 根底で1ミリも自分を許容できないからだ どんなに即席の自己肯定感でコーティングしてみても 豚のような下肢、壁のように広がる肩、ずんぐりどんぐり手指、まとまりを欠く肉塊 いやだいやだ 行動力を欠いた決意、層の浅い思考、偽善、無知、弱さ どんなに刷り込みによる思い込みだといわれても 実は恵まれているといわれても 根底で否定する、拒絶している でも

グランマ

けだかい貴女 慈しみをかけ育てた者から 弱さを隠すあなた やさしい貴女 弱さを見せてしまった先の 彼らの哀しみを 腕の中に抱え込んで 出てこないように 出てこないように そんなこと 気にしなくてもいいのにと 私なんかが思ったところで あなたは静かに包み込む 私があなたの美しい庭先で 必死に愛想を振り巻いて 必死で隠そうとした 居心地の悪さを あなたは色素の薄い透き通った目で見透かして 何も言わずに抱きしめたように あの時、どんなに救われたことか 貴女を今思うとき 貴