LOG

LOG(ログ)と申します。 ライトノベル作家志望。 不定期にオリジナル小説を更新する予…

LOG

LOG(ログ)と申します。 ライトノベル作家志望。 不定期にオリジナル小説を更新する予定です。

マガジン

  • 光と闇と、魔法使い。

    長編オリジナル小説『光と闇と、魔法使い。』をまとめたものです。 魔法が禁じられた大陸に住む少年の、祖父の失踪から始まる物語。

最近の記事

「光と闇と、魔法使い。」第9話

ワタライ家の過去  何と言われてもいい。  奇流は一つ大きく息を吐いた。  今の状況を黙って受け入れるのは耐えられない。  大きく背伸びをする。  かつて名家と呼ばれたワタライ家。代々医師の仕事を受け継ぎ、ガルディバ大陸全土にワタライの医術は必要とされていた。  復興を願うなら、なぜ黙って受け入れるんだ。なぜ今の状況を打破しようと動かないんだ。  踏み出す足に力が入る。商店街がある通りを真っ直ぐ進み、中央広場に出る。見上げると壮大な階段が待ち構え、その先に目的地である城は存

    • 「光と闇と、魔法使い。」第8話

      父と子   自宅に戻った時、いつもと同じく夕食の匂いが鼻腔をくすぐる。リビングに足を運ぶと、ソファーに腰かける人物に向かって声をかけた。 「父さんただいま」  涼は奇流を一瞥し、しばし黙った後「お帰り」と聞き逃しそうになる程小さな声で返した。  奇流はダイニングの定位置に陣取ると、キッチンに顔を向けて口を開ける。 「雅恵さん、ただいまー」  料理を器に盛り付ける女性。ゆっくり振り返り、「お帰りなさいませ、奇流坊ちゃま」とこれまた小さく返答する。奇流は頬杖をついて料理を待った

      • 「光と闇と、魔法使い。」第7話

        国王即位式 「ところで奇流ちゃんと柚ちゃん。明日の式典に行くの?」  風丸は諦めた様子で溜息をついたが、空乃の言葉にはっとして続けた。 「そうだ。明日は国王即位式だね。僕達は見に行きたいなって思うけど、二人も一緒に行こうよ」  空乃と風丸は、顔を見合わせて微笑んだ。気が付くといつのまにか、四人を取り囲む無数の視線はなくなっている。面倒事に関わりたくない本音が見えた。四人は話を続ける。 「国王即位式」  奇流は思い出した。 「そうか、明日か」  呑気に指を鳴らした奇流に、空乃

        • 「光と闇と、魔法使い。」第6話

          敵意  歩を進めると、賑やかな声が戻る。学校が終わり生徒が校門をくぐっていた。その中から柚の姿を見つけると、向こうも奇流に気が付いた。柚は晴れやかな顔つきになり、小走りで駆ける。 「いつもありがと、奇流」  柚は申し訳なさそうに言った。 「でも、毎日商店街に来るの辛いよね。……本当にごめんなさい」  俯き小さく吐き出す。まだまだ活気が出る店が並んでいた。夕食の支度の買い出しで客が溢れるからだ。商店街を抜けた先が住宅街のため、この通りを歩く子供は多い。そんな中奇流を認めると、

        「光と闇と、魔法使い。」第9話

        マガジン

        • 光と闇と、魔法使い。
          9本

        記事

          「光と闇と、魔法使い。」第5話

          不老不死の研究   ――マリベル村で、全てを終わらせる。  奇流の脳裏に浮かんだ言葉。いつだったか、ドクターは冷たくくぐもった声色で、奇流にそう漏らしたのを鮮明に覚えている。  その時の祖父が、いつもの穏やかな様子とはかけ離れていた。奇流はそれを恐ろしく感じたので、父である涼にそれを告げた。  しかし涼は奇流に何も言わず、背を向けたのだった。涼は普段から無口で、瞳はまるで闇のように輝きを失っていた。それでも奇流は明るく向かって行くが、次第に涼は奇流と距離を置いた。それは奇流が

          「光と闇と、魔法使い。」第5話

          「光と闇と、魔法使い。」第4話

          禁じられし魔法    ガルディバ大陸にあるここ、ヘブンズヒル。大陸の四分の一を領土として保有する、西側の大国だ。 奇流が住む城下町は領土の中央に位置し、人に溢れ、多くの人間が行き来をする。  町の周辺に多く生息するレムと言う僅か五センチ程の生物によって、国は多くの資金を得ていた。レムの体内には親指の爪程の蒼い石が存在し、それが兵士に必要な剣の素材となる。その硬さは加工を困難な物にしたが、古くからの職人の努力によって、この国だけが誇る技術に発展した。これを輸出の柱として様々な国

          「光と闇と、魔法使い。」第4話

          「光と闇と、魔法使い。」第3話

          ドクターワタライ 「ドクター」  奇流はその足で一軒の小さな家に向かった。奇流の自宅のすぐ後ろにあるそこは、古い木造の平屋だった。商店街に行き柚を見送った後、道を戻りここへ来る。日課と言える奇流の行動パターンだ。  ドアノブに手をかける。長い年月のせいなのか建てつけが悪く、ちょっとやそっとの力では開かない事を彼は知っている。一度軽く手前に引いてからノブを右に回す。奇流が知っている、すんなりと開けるコツだった。 「奇流」  みしみしと鳴る廊下の向こう、開きっぱなしの扉の奥から

          「光と闇と、魔法使い。」第3話

          「光と闇と、魔法使い。」第2話

          第一章 国とワタライ家 ワタライ家  靴紐を結び立ち上がると、ワタライ奇流はリビングに向けて声をかけた。 「行ってくるから」  己に向けられた物だとわかっていながら、父である涼は無言を貫いた。いつも通り返事はなかったが、奇流は気にせず外に出る。開けた視界の先は、果てしなく続く青空だ。快晴と呼ぶに相応しいそれが彼を迎えた。清々しさに思わず笑みがこぼれる。  朝の空気が奇流の体を包み、ひんやりと鼻を通る。それがもうすぐ訪れる冬の予感を奇流に伝えた。ふっと吹いた風が彼の銀髪を撫

          「光と闇と、魔法使い。」第2話

          「光と闇と、魔法使い。」第1話

           地がうねる。立つのもままならない程、それは怒涛の勢いで少年の体を打ち付けた。耳を塞ごうにも両手が動かない。その場から逃げ出そうにも、足が言う事を聞かない。完全に少年は圧倒された。 「死刑! 死刑! 死刑!」  人の、いや群衆の叫び声だと気が付いた時、少年はようやく事態を飲み込んだ。 「ワタライに死を! 死の制裁を!」  瞬間、胃の底から込み上げる不快感を堪える。目の前が真っ暗になり、足元がぐらついた。自分の周りが全員敵である絶望感。生まれて初めての事態に、全身から汗が噴き出

          「光と闇と、魔法使い。」第1話