あまりに無職すぎて一日中実家でぶらぶらしていると、ご近所さんに子守を頼まれるようになりました。今さら椎名林檎にハマって目の周りを黒で囲んで赤リップつけてる人間で大丈夫なんでしょうか。常々、約束は要らないわ果たされないことなど大嫌いなのと思っています。

しかしひとたび玄関を出たら可能な限り善良なオバチャンに見られたいので、まず声をなるべく低くします。語尾のすべてから「キャピ♪」感を取り除くことが重要です。社会的に信用される女性というのは総じて声が低いと相場が決まっているためです。

今日は、信用されるオバチャンになるための最速攻略を目指すＲＴＡ（リアルタイムアタック）について説明していきます。

まずは夕方、家の前のプランターに水やりをしていると近所の子供が「何してんのー？」と寄ってきます。

ここでタイマースタートです。

その際「水やりだよ～♪」などというと一発アウトですのでぐっと堪えて「お？何や？」と言って相手の様子を見ます。すると「水やりー？」と言ってくるので、分かってるなら聞くなと言う風に「せや～」と言って下から子供の顔を覗き込んだあとふいににっこりすると完璧です。
まさかにらみをきかせてくるとは思っていなかった子供が、少し固まった後、椎名林檎と一瞬のはげしい視線の交換をして、困ったように笑い出したところでこちらも笑い出すので、最終的に二人でげらげら笑います。
緊張と緩和、お笑いの基本ですね。

ここで、子供と遊んであげていると思ってはいけません。
気を抜いたら「遊んであげている側」に成り下がってしまう大人は、意識的に「遊んでもらう」ことで、初めて両者が対等に遊べるようになるからです。

アクエリの2Lのペットボトルに水道水をドバドバ入れて水やりをすることを「効率的だ」と思ってしまうのが大人ですが、いったん子供の話を聞きましょう。
すると、雨水タンクの水をバケツに入れ、バケツの水を水鉄砲に移し、水鉄砲からプランターに水やりをするという高等テクニックを教えてもらえます。
だいたい的を外れたり、椎名林檎にかけられたりするので命中率６０％ぐらいになりますが、ここで本気で「教えてください」という心持ちでいることで、「なんだこの大人は僕と遊んであげてくれているだけか、しゃらくせえ」と思われてしまうことが避けられるため、大幅なタイムの縮小ができます。

そして、子供が水鉄砲から関心を失い、近所の犬に駆け寄って、その流れで家に入ろうとしたところで「おい、片付けすんで」と言って水鉄砲を指差してにやにやしましょう。ここでもなるべく低い声を出すことが肝心です。
「片付け、する～」と走ってきたらこちらも本気で片付けます。

すると、夕飯の支度を終えたお母さんが出てきて
「すみません、遊んでくださったみたいで…」と恐縮そうにおっしゃるので、当初は意識的に「遊んでもらっていた」つもりが、いつの間にか実際に遊んでもらっていたことに気づき、なんだ楽しかったじゃないかと思っているところで
「もしよかったらなんですが…頼まれてもらえませんか。明後日保育所に送ってもらいたくて…」と言われるので「もちろんです！」と答え、信用されるオバチャンになったという証左に歓喜するので、ここでタイマーストップです。

明日、保育所行ってきます。わーい♪