誰かのとこに届くこと
20代の頃、製薬会社に勤めてた。
内勤の仕事は社内の人との関わりだけが多いけど
私は卸さんの注文を受ける仕事だったから
卸さんと毎日電話していた。
そう、昔だから注文はFAXで
大きい卸さんは伝送システム(だったかな?)。
とはいえ、急な注文は電話だった。
原材料の関係で在庫が少ししかない手術に使うものがあった。
緊急手術でどうしても必要
そんな電話を受けて
手のひらに乗るそれが誰かの命を救うかもしれないんだと思ったものだ。
たくさん作れたらいいのに。
そう何度も思った。
繊細なそれは原材料が入らなければ作れない。
今は代わりものがあるのかな。
もっと簡単に手に入ってるかな。
30代に派遣で手術用具を扱っている会社で3ヶ月だけ働いた。
緊急手術でその道具がどうしても必要だ、と営業さんから電話がきた。
一人だけの社員の女性は残っていた方がいいから
私が病院まで届けることになった。
片手で軽く持てるその道具を両手で抱え、
タクシーに乗る。
行き先と急いでいることを伝えた。
病院の入り口に営業さんがいた。
私はタクシーを降りることなく、それを渡して
そのまま会社へUターン。
あの時の患者さんは元気かな。
救急車のサイレンを聞くといろんなことを思い出す。
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