見出し画像

「詩」が嫌いです。


みなさん、詩は好きですか?

私はとても嫌いです。

嫌いな理由の中で一番大きなものは、

訳がわからないから

です。

詩として「人に見てほしい」という動機のもとで発表しているにも関わらず、

人に理解してもらおうという誠意や、努力の痕跡をを全く感じられないのです。

それは、食べ方のルールにいちいちうるさい頑固一徹のラーメン屋に似ています。

うちはうちのスタイルでやるから、従えないヤツは食わなくていい!みたいなスタンス。

この世にそんな店が存在してても全然いいのですし、否定はしませんが、人間の当然の感情として嫌悪します。

でも私はここで毒をはきたいわけではないのです。

このnoteは、私の中の言語芸術に対する飽くなき愛と、それをこじらせた結果としての詩に対する屈折した感情を整理するためのものです。

どうぞお楽しみください。(どうやって…?)

(1)詩は不誠実だ

私は心の底から言語を愛しています。

言語学や文化言語学を学び、神話や古典から、仏典や学術書など様々な文章に出会い、その様々な修辞表現から現出させる色彩豊かな「世界」にうっとりし、驚愕し、戦慄し、絶望し、歓喜させられてきました。

しかし、詩にはある種の不誠実さを感じてしまうのです。

神話や聖典は支離滅裂でいいのです。

それは人智を越えた神々の営みの記録であり、人類の脳内の「論理性」などという小さなスケールに押し込められてはならない代物です。

しかし詩は違います。

それは人が自分を表現し、他者に評価してもらうために(自己満足ならそもそも人目に晒さない)書き出すものであり、

それゆえ多かれ少なかれ他者との感情共有を想定して産み出されたものであるはずだからです。

(2)私にとっての良い詩

『今を生きるための現代詩』渡邊十絲子さん曰く、詩は時空や人称までも自在に越えることができる極めて自由な表現方法であると。

だから詩は意味がわからないのだといいたくなりますが、確かにそこが詩の面白いところでもあります。

例えば私が心底感動した詩に、以下のようなものがあります。以前読書感想で扱った本のタイトルにもなっている詩です。


「空が青いから白を選んだのです。」


この短い詩は、少年刑務所で刑に服している囚人が、亡き母を思って書いた詩です。

解説によると、少年(囚人)の母親は、母さんを思い出したいときは空を見上げるといい。母さんは必ずそこにいるから。という言葉を残してこの世を去ったのだそうです。

この詩のすごいところは、人称を超越しているところだと思います。

この詩を詠んだ人の視点は、母親のようにも取れるし、少年自身のようにもとれます。

いや、この詩の場合、その詮索すら無意味で、鑑賞者はただ母と息子の魂の融合に圧倒されればよいのだと思います。

人称を越えることのできる詩という表現技法だから描ける世界でしょう。

この詩はいいのです。素晴らしいと言えるのです。

解釈する手だてがあるから。

でも(現代)詩のほとんどは「読み手の解釈に委ねる」と言う反駁不可能なキラーフレーズを盾に、逆に鑑賞者の反応を封殺します。

「自由に解釈していい」は、ある程度までちゃんと人の心を動かしうる力ある詩のみが使っていい言葉であり、

支離滅裂な言葉の羅列(のように見える文)で、ほとんどの鑑賞者の脳内に「?」しか生まない文に対してこれを言われちゃうと、なんと言うか… 

…とにかく読み手は非常に困ってしまいます。

(3)詩を理解したい!

わからせてくれ!と言う、無粋だけどとっても切実な願いが私の中にはあるわけです。

「いや、詩は理解するものではなく感じるもn」いやわからせてくれ!!
じゃあ感じさせてくれ!

「詩はみた人が自由に解釈すればいいもn」いやわからせてくれ!!
不自由でもいいからわからせてくれ!(そもそも理解できた詩に対して不自由さは感じない。「宇宙や人間の魂の深淵を見せてくれてありがとう」という感情のどこが不自然であろうか)

「あなたに詩を味わう感性が欠落しているかr」いやわからせてくれ!!
感性が欠落している人にもわからせてくれ!!

(4)何このラーメン屋

美味しいと評判のラーメン屋にウキウキしながら行ったら、トコロテンが出てきて、

「これを美味しいと捉えるか、不味いと捉えるか、ラーメンと捉えるか、トコロテンととらえるかはあなたの自由です。」

と言われているような、なんか切ない感じなのです。

いや、そんな問答をしに来たのではなく、私はラーメンを食べに来たのだと。

さらには「トコロテンをおいしいラーメンと感じられないのは、食べる側の問題だ」と自己反省を求められる始末。

そんな自己反省しなきゃいけないなら、もういいや。(←今ここ)

と言う状況な訳です。

と言うことで、タイトルは釣りで、正確には「詩を愛したいのに愛せないせいで、こじらせています。」が本当のタイトルなのかもしれません。

以後数回、こんな私でも心を揺さぶられた詩をいくつか紹介したいと思います(大体は詩じゃなくて歌詞だけとも)。


関係ないけど、こんな絵を描いてるよ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?