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#3 呪術的な韓国旅行

2日目の夜に、カンジャンケジャンを食べに行く。

生のワタリガニを醤油に漬け込んだ、カンジャンケジャン。
調べると、明洞の路地裏に良いお店がありそうだった。

今回泊まったコリアナホテルは、明洞の繁華街から歩いて行ける距離だったので、まるで新宿か渋谷のような賑わいの街中を抜けていく。

入ったお店は観光客慣れした、とても親切なお店。
どこの飲食店に行っても思ったが、とにかくオモニのパワーがすごい。
遠慮がなく、なんでも良い放題やり放題。
地獄の獄卒でももうちょっと気を使うんじゃないか。
オモニは閻魔大王にもコントロール不能。

韓国語ペラペラの友人が居たおかげか、店長らしきオモニの中のオモニ、ベスト・オブ・オモニが色々サービスしてくれました。
カンジャンケジャンも全て完成品を作ってくれてとても嬉しかった。
チャミスルもマッコリも美味い。

蟹味噌とご飯を混ぜるところを見つめながら、
「韓国でのお母さんが爆誕したぜ」
なんて軽いおふざけを話していると、オモニは急に会話をぶった切り完成品を口に押し付けてきた。

まさかの強制飲食。

ファーストバイトなみに、モリモリと押し付けてくるオモニ。
オモニは母であると同時に妻でもあったのか。
「いい食べっぷりね」
とでも言わんばかりの笑顔で、次々にやってくる料理もドンドン口に運ばれる。
食べっぷりを強要するな。

しかも、わたしは見逃さなかった。

オモニが運んだ生エビのタレが、わたしの白いパンツに何粒も滴り落ちているのを。
本人は善意でしてくれている。
白のパンツが茶色に染まっていくのも、気付いてなさそうだ。
「これはきっと、わたしの前世の業なのだ」
そういうことにして、誰も責めたり責められたりしない、優しい世界を作ることにした。

店をあとにして、夜の明洞をなんとなくブラブラ歩く。
12月の韓国はさすがに寒い。
オモニから頂いた、温かさとタレのシミとパワフルさを感じながら
「2杯目を飲みに行こうか」
と、汚れたパンツのまま次の店を探した。



あなたがわたしに課金をし、わたしはソシャゲへ課金をします。