かけがえの無いことに気づくのは大体事後
気をつけていってらっしゃい
夜ご飯は冷蔵庫にあるから
おかえりなさい
寒かったね
雨すごかったね
ママが私に行き帰りの際にかけた言葉は思い出せる
心地いい耳に馴染んだその音も
なのに私はそのどれもを今まで他人に言ったことがあまりない
おかえり
私はあえて彼を玄関先で出迎えたりしない
電気が消灯した18時過ぎの部屋は暗い
部屋への侵入の許しを乞うように私は電気を供給する
おかえり
ママは私を
私は彼を
その言葉は部屋で一番有意義のある存在へと変えてしまう
私は「おかえり」の練習中だ
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