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湯けむり夢子はお湯の中 #3 夢子のバスタブ 【お話】

 ーペディキュアをしなくなってから、もう何年くらい経つかしら?
 バスタブの向こう岸に脚をあずけ、自分の足指をまじまじと見つめます。

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 こんばんは。湯川夢子、もうすぐ四十歳。
 今宵は自宅のバスタブよりお届けいたします。

♨️

 ここ数年の足元の装いは、夏でもフラットシューズかスニーカーです。サンダルでお出かけすることはほぼ皆無となりました。

 私は夏だからといって、海にも行きません。避暑地にも行きません。スカート履いておデート?うっふん…ご想像におまかせしますわ…と見栄を張りましたが、デートなんてケンタウルスくらい空想のものだと思っております。

 こんな暮らしぶりだから、ペディキュア塗らなくなったのかな…なんて。

♨️

 せっかくですから、浴室探訪をば。
 私は自他ともに認める風呂好きですが、湯川邸のバスルームは至ってシンプルです。

 観葉植物やキャンドル、洗面器もございません。棚にはシャンプー&トリートメント、ボディソープのみ。
 お風呂では音楽も聴かないし、スマホや本も持ち込みません。

 ただ目の前のお湯と対峙するのみ。
 それが私の自宅での入浴姿勢スタイル

 その代わり、入浴剤にはこだわります。
 バスソルトでのハーバルなひとときに深呼吸したり、日本各地の温泉が味わえる魔法の粉を湯に溶いて白濁させたり、薬湯で腰痛を和らげたり。
 各種小袋取り揃えてあります。
 
 楽しいですね。入浴剤のソムリエになりたい。

♨️

 本日は爽やかな甘い香り、カモミールのバスソルトで癒しのバスタイムです。
 ペディキュアしていた頃は、甘い匂いのシャンプー使ってたなぁ。水面からシンクロナイズドスイミングよろしく爪先が現れると、再びモヤモヤしてくるマイハー。

 わかりました。
 もう回りくどいお話はやめにして、私の心の叫びをこのバスルームに反響させましょう。


「わたしはぁー、わたしのまんまでー、
    いい恋が したぁーーーい!!!」

ワホォオ~ン!! ワフッワフッ!


 おとなりの柴犬ベンくんが、未成年の主張ふう雄叫びに反応してコール&レスポンスしてくれました。
 脳内にカーペンターズの『青春の輝き』が流れ、ますます盛り上がるマイハー。
 そして、あとで調べたサビの和訳に撃たれる夢子。

 ふうぅ…我が家の風呂ながら結構なお湯でございました。本日はこのへんで。


♨️ おしまい ♨️


最後まで読んでいただき、ありがとうございました🍀
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