見出し画像

【ロッテ】フェニックスリーグまとめ

はじめに

今回行った検証は大きく分けて2つです。
①いつも通りのデータ収集。
②吉井新監督の発言や采配から、各選手の起用意図や吉井監督像まで推察できれば。

開催概要
・10月10日~31日まで
・ロッテは全18試合予定中、実施できたのは17試合。
・登録枠に制限はなく、出場選手の入替えは原則自由

参加選手

フェニックスの参加選手

・意外な不出場選手は西川・八木あたり。
 西川→公式戦でも終盤は欠場。コンディション不良が継続しているか。
 八木→最終登板が9月25日の一軍戦。その後なんらかのアクシデント?
中森も当初は不参加秋季練習組だったが終盤に合流し1試合だけ登板(後述)

守備位置(スタメン)

スタメン守備位置一覧

ポジション別にもまとめました。

ポジション別スタメンランキング

こう見ると、全17試合で特定の選手が10試合以上守ったポジションは1つも無し。吉井監督の色々試したい意図がよく出ていると思います。

他に特筆すべきことは…
山本斗はレフトとライトの2部門で出場トップ。シーズン中から一貫されているDHでは使わない方針が今回のフェニックスでも一貫されました。
佐藤都は捕手での出場は0。サード挑戦も話題に。
松川も捕手出場は0。
彼ら3人のことは最後の項でも後述します。

打順

打順一覧(山本斗を赤く表記)

山本斗は全試合を通じて1~4番の上位打順。
・全試合スタメンは山本斗と佐藤都のみ。
・佐藤都は6番も多かったので、つまり全試合を上位打順で起用されたのは山本斗のみということになる。

各打順ランキング

特筆すべきは以下2点。
・打順においても固定はせず、さまざまなパターンを試した。
・4番の出場1位は藤原。吉井監督も言及してたやつです。(後述)

なお、今回打席数は数えませんでした。理由は2つ。
・確認困難な試合があった為。
・試合数も参加選手も限られていることから、統計をとってもあまり意味あるデータにはならないと判断した為。

投手継投

継投一覧

途中から行方不明っぽいのが2人。
東妻が初戦の登板のみ、成田は10月21日以降登板なし。
廣畑も10月18日を最後に登板がありませんが、その後秋季練習組に移った模様です。

先発ローテーション

先発カレンダー(一部球数は不明)

基本スタイルは、鈴木・秋山・本前・佐藤奨の4人(全員サウスポー)を中5~6日ローテ。秋山は本格的なローテデビューでした。
先発組はいずれも長くても6回までで降板。
10月23日に中6日で鈴木ではなく本来リリーフの小沼がスクランブルっぽくショートスターターをしたこと以外は、おおよそ計画通りのローテ運用で完走できたと思われます。

先発時の通算イニング数ランキング

上位4人組サウスポーは全員3登板タイかつほぼ同じ総イニング数。この4人には均等に登板機会を与えることができたという印象です。

リリーフ

リリーフ登板時に限定した登板数のランキングを示します。

リリーフ登板数ランキング

1位は横山 土居 坂本の3人が1位タイで7登板。

ここでフェニックスにも勝ちパターンはあるの?という一般論的な疑問を検証していきます。
検証ポイントは2つ。①登板するイニングと②点差状況です。(以下の検証では、明らかにリリーフではなく第2先発的な起用だった二木廣畑は省いています)

①登板時のイニング

リリーフ登板時のイニング

・基本的に登場シーンはバラバラで、固定的な起用法ではなさそう。
・通算登板数の多い主力リリーフ(横山 土居 坂本 小沼)ほど終盤イニングを含む幅広い回を任されている傾向。(表中の矢印のイメージ)
・逆に経験の浅い田中楓永島田(ともに5登板)は全て若いイニング。
・その中で種市だけは徹底して9回限定。

⇒まとめると:種市"だけ"は勝ちパ(それもクローザー)として明確な役割設定があった説。
それを踏まえて次の②。

②登板時の点差状況

リリーフ登板時の点差シチュエーション

・0~+3点リード状況限定のいわゆる勝ちパ(A組)は0人。
・ただし種市は、やはりビハインド登板は0。やはりクローザーっぽい。

以上①②よりフェニックスにも勝ちパターンとあるの?という問いには、
・0~+3点差のみに登板する明確な勝ちパターンは無かった。
・ただし横山 土居 坂本 小沼は日替わりで試合終盤も投げていた。
・その中で種市だけは9回&同点以上という条件限定での登板だった。
以上より、種市だけは勝ちパに近い運用だったと考えられます。
この種市の話はいったん終わって続きは後述に回します。

~なお、永島田・田中楓について~
・高卒1年目投手がフェニックスで本格デビューするのは去年の中森の時と酷似。
・2人とも今季は、フェニックスを照準に合わせた計画的育成だった印象すら受けます。今後の高卒投手の育成メソッドの1つが固まってきてる感じです。

個人別評価(吉井監督視点)

今回のフェニックスリーグは吉井新監督の初采配という点でも注目が集まりました。連日発言も記事化されましたので、本項ではそれらを根拠に推察も交えて何人か選手別でまとめてみました。
まず野手から。

佐藤都志也

>「ここはトライできる場所なので。それでやってどうなるか見てみたい」

>「一回壊すというのはセオリー」

これらは佐藤都に限らず今リーグ全体の共通モットーだったかと思います。
佐藤都は4番起用・サード挑戦・最後まで捕手機会なし・HR王と最も目立った選手の一人と言えそうです。
ファンとして気になるのは来季から捕手以外にコンバートするのか?という点かと思われます。ここからは私見です。
今回の奇抜な起用の背景には、FA権を持ち去就に揺れている田村に気持ちよく残留してもらう目的もあったのではないかと推測します。つまり"佐藤都どうこうだけでなく、それを千葉から見ている田村にも訴える起用法だった"という意味です。

①佐藤都は今季捕手として頑張ったが終盤はバテて打力も落ちた。
②田村は必要な戦力だが、今季の成績では大型契約は提示できない
③でも来季佐藤都を捕手以外で起用するプランがある

①②の既成事実に加え、今回のフェニックスで③を明示したことで、田村からしたら残留する理由を明確化しやすくなったのではないかと思います。
なにしろ今季のロッテは松川・佐藤都に続く捕手層が脆弱だったわけで、田村の復活は重要のはずです。

>吉井「でも、残ってほしいなあ」

監督として田村にこうして明確なラブコールを送っているのも良い裏付けかと思います。そもそもこの2人、以前から仲良いみたいだし。

山本大斗

フェニックス開幕当初
⇒ダイナマイト山本と命名

フェニックス終了後
⇒MVPには「佐藤都か山本か…。2人が1番試合出てた」

たしかに全試合スタメンはこの2人のみでした。さらに山本斗に限定すれば全試合で上位打順。
「1番試合に出てた」とは言いつつも出したのは監督本人だったわけなので、監督がリーグ当初からニックネームを付けてかついで、最後にはMVP候補にまで挙げたので、むしろ監督の思惑通りに山本斗が飛躍してくれたと言えそうです。

藤原恭大

吉井監督が藤原を4番候補に挙げた記事が出て話題になりました。

この記事が出たのが10月25日未明。この前後の時系列を振り返ると…
10月18日 7戦目からフェニックス組に合流
 ~21日 打順は流動的に1~4番
  22,23日 コンディション不良(?)で欠場
25日未明 上記の記事が出る
 25日~ 4番抜擢。以降閉幕まで固定。

藤原 打順推移

リアタイで見ていたファンからすると『監督がああ言ってたら本当に4番に使ってて草』的なわけでしたが、吉井監督からしたら「しばらく4番で使うと決めたから事前にああいう発言をした。あとは藤原に気持ちよく打ってほしい」という思考の順番だったのではないかと思います。
また上記の記事には、
>「女性も来てほしい。(選手は)みんなおっちょこちょいなので、張り切ると思う」
とも言っていて、やはり藤原に限らず選手たちのモチベーション維持を重要視した監督さんだと思われます。今後も吉井さんは、選手に記事を読まれていることを意識した発言に徹する監督になるかと予想します。

松川虎生

松川が13日、当初の予定より繰り上げでフェニックス組に合流しました。

しかし、以下のスタメン一覧の通り、松川の出場はほぼリーグ終盤のみでした。また、スタメン外の試合での途中出場も、自分が調べた限りではありませんでした。これではなぜ松川が早々に合流したのか分かりません。

松川スタメン推移

ヒントは現地観戦された瑠璃さんのツイートにありました。松川が出場しなかったゲームの試合前も後も金澤バッテリコーチとマンツーマン練習していたとのことです。

この背景には、井口体制が解散したことで千葉組にバッテリーコーチがおらず、守備練習の為に宮崎まで金澤コーチを追いかけた説が有力かと思われます。(上記の記事でも打撃向上がメインに書かれていますが、しれっと“守備ではブロッキングをしっかりと練習をしていきたい”なんて一文があったりもします。)

なお、打撃面強化に関しては通算5試合のDH出場である程度実現できたかと思われます。また佐藤都と同じく、今リーグでは松川も捕手としての守備機会は0でした。

平沢大河

平沢 ポジション別出場履歴

出場の半分以上は外野かDHでした。これは今季の公式戦までにはなかった挙動の為、フェニックスリーグらしい新たな試みのいち側面と言えます。
背景に、若いショートをドラフトで乱獲したことは確実にありそうです。

他には平沢に関して残念なこともありました。フェニックス開幕時と閉幕後の吉井監督の発言の変化です。

開幕時:平沢をフェニックスリーグのキャプテンに指名

閉幕後:「大河がキャプテンだったんですけど実質、佐藤都がキャプテンみたいな(笑い)」

さらに佐藤都に対しては"「若手の練習も一緒に手伝って引っ張ってくれていた」とリーダー性も評価していた"と続いていました。つまりこの姿勢が平沢に期待を寄せた部分として置き換えることもできそうです。
大卒ショート1人+高卒ショート3人が加入する来季、平沢がこのような立ち位置で存在感を示せるかが吉井監督の一つの観点であり、ファンも注目すべき部分かと思われます。

種市篤暉

つづいて投手編に移ります。

リリーフの項で前述した通り、種市にだけはクローザーという明確な役割が与えられました。
以下では2つの視点で考えていきます。
①なぜ先発からクローザーに転向したのか
②登板間隔について

①なぜ先発からクローザーに転向したのか

まず今年の種市を整理すると、
4月13日 TJリハビリから復帰登板(1イニング)
      以降週1間隔でリリーフ調整
6月12日 二軍戦で初先発
      以降、6度先発
8月11日 一軍戦復帰。先発するも3回KO
      以降、二軍で5度先発しシーズン終了

このように復帰当初はリリーフとして調整していましたが、あくまでも主戦場は先発という方針が明確な一年でした。
一方で一軍登板は1試合にとどまり、完全復活にはまだ遠い状況です。内容的にも(a)制球力や(b)球威に課題が残りました。ともに例を挙げます。

(a) 制球力
 先発時の2例です。
 例1)唯一の一軍登板(8月11日)
            →3回3失点4四球(押し出し含む)
 例2)二軍公式戦最終登板(10月2日)
            →甘いスライダーを拾われ2被弾

(b) 球威
 ○復帰戦の4月13日でいきなり150km/h超を連発したが、
 ○その後の登板では140km/h台中盤がアベレージ
 ○唯一の一軍登板でもMAXは146km/hだった

以上が今季の種市をざっくり振り返った内容です。
さて、そんな中でのリリーフ転向は何を意味するのか。

思い出すのは、2019年の石川歩の一時的なリリーフ配置換えです。不調時に取られた策で、発案は吉井コーチ(当時1年目)だったと考えられます。

この記事の中で首脳陣の意図(おそらく吉井主導)と石川の振り返りが書かれています。
首脳陣側⇒ >現状打破と「本来の投球を取り戻して欲しい」
石川談⇒ >特に再確認したのが「制球力の重要性」 

…今季伸び悩んだ種市とクリソツな感じしませんか?

そしてフェニックスリーグ最終登板となった10月30日夜には、その答え合わせとも言えそうなこんな記事が出ました。

種市「課題にしていた変化球を試せたので良かったと思います」
吉井「まっすぐが全然戻ってこなかったんで。今回は短いイニングでどうなるかやってみよう。そしたらまっすぐが強くなったんで、成果出てると思います」
【ロッテ】種市篤暉が本来の球威へ「課題にしていた変化球を試せたので良かった」(日刊スポーツ)

このように吉井監督としては、かつて石川歩に取った策の流用を、フェニックスで種市に試したのではないかと思われます。

②登板間隔
今季の種市は復帰以降、"リリーフ登板時を含めても中6日以上の登板管理がされており、それより短い登板間隔はシーズン中には一度もなかった"という背景をまずは理解してください。

その上で、フェニックスの9回だけの一覧表を示します。
9回に誰が投げたか & 点差状況はどうだったか をまとめたものです。

9回 登板投手と点差状況

これを見ると、0~+3点差以内の痺れる状況で出来るだけ種市を登板させたいが、登板間隔を配慮して別のピッチャーにクローザーを任せた試合もあった(とくに序盤)という見方ができると思います。
ところがその後徐々に登板間隔は短くなっていき、とうとう最終戦では連投を達成しました。しかもこの30日, 31日は両日ともに3者凡退だけでなくいずれもMAX150km/h以上を記録しています。種市にとってはまさに有終の美と言えそうです。
さらに言えば、ラスト2戦はいずれも点差状況的には圧勝展開だった為、この起用は試合状況に合わせた流動的なものではなく、明らかに種市主体に継投が組まれた連投テストだったと思われます。

では最後に"なぜ最終的に連投までさせたか"です。先発投手には連投能力など基本的には必要がないので、この点は気になるところです。
この起用法はもはや解釈で捉えるしかないので、2つか推論を挙げます。

解釈① 本当に来季リリーフで使う気がある。

以下の記事の通り、種市も「どんな形でもいいので1軍の戦力になりたい」と言っているので、吉井監督としては今後先発のみの縛りは解けた状態で柔軟に起用法を考えることができる、と言えます。
ましてやオスナの去就、益田の状態が不透明、それ以外の明確な勝ちパの不在といったチーム事情もある為、選択肢の一つとして種市の可能性を探ることは有意義だったと考えます。

解釈② 気持ちよくシーズンオフを迎えさせる

今季の成績は種市本人にとっては到底納得のいくものではなかったはずです。同じピッチャー出身の監督としては、迷いをできるだけ消した状態でオフのトレーニングに励んでもらいたい思いもあったのではないだろうか。
その方法として、連投能力は仮に必要なかったとしても、TJからの回復を身に沁みて実感できるであろう『連投を問題なく達成した』というステップを種市に与えて自信を付けさせた、という起用意図も感じました。(ちなみにこの解釈は後述の中森についても同じことを書きます)

廣畑敦也

フェニックスでは1先発・1リリーフの2登板で早々に千葉組に帰還しましたが、それより気になったのは第1回の青空ミーティングの総括役に抜擢されたことです。
この日廣畑は翌日の先発に備えベンチ外だったことから指名されたわけですが、なんなら意図の順番としては実は逆で、”第1回のミーティング総括を任せたかったから初戦の先発からは外した”可能性もあります。

入団当初から私が廣畑に持っている印象はリーダー性です。
入団会見の時から、周囲を和ませる気遣いや明るさは彼の大きな特長だと思っていました。

選手に気持ちよくプレーしてもらうことをコーチ時代から信条としてきた吉井監督なら、廣畑のそういった内面をミーティング総括役として活かしたことで、その後の青空ミーティングのベースを作ったのではないかと予想します。

中森俊介

今季6登板に終わり、当初フェニックスにも不参加だった中森が10月30日に緊急招集で1登板しました。

吉井監督は「ずっとケガしてリハビリにいたんですけど、ほっとくといつまでも出てこない感じだったので、出てきて投げろと。」とコメント。

種市と同じで、吉井監督はオフの重要性が分かっているからこそ、気持ちよく1年を終わらせられるように投げさせたという意図かなと思います。
中森も元々は1年目から15勝すると言っていた投手。なのに入団から2年間、二軍でもまともに投げられなかったとなると、本人としても相当モヤモヤしてるはずです。ここはモチベ重視型の吉井新監督が取った今回の策。
もし中森が来季キャンプからスタートダッシュを決められたとしたら、たった1回だけのこのフェニックス登板が生きた証とも言えるのではないでしょうか。

さいごに

今回も非常に長いnoteになってしまいましたが、以上の内容で一貫して感じたのは、吉井新監督は選手たちのモチベーションアップへの働きかけをものすごくやっている方だということです。
この一言で終わっちゃって良いと思います。まとめ終わり!

最後になりましたが、ツイート掲載を許可してくださいました、瑠璃さん、おかさん、ありがとうございましたm(_ _)m

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?