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どの食材から書き始めるか悩んだ。
調べれば調べるほど、いずれの食材も
どうやって人々生活の中に受け入れられ
知恵と工夫が施されたか、はたまた廃れたかがわかりいつまででも調べていられそうだった。興味はつきない。

とはいえトップバッターは、と考えたところ今年の寄席はじめはお正月だったのでお祝いごとに相応しい『鯛』からはじめる。

江戸時代に鯛は人々にとってどんな食材だったかググってみた。

鯛は「大位」。鯉は「高位」。
保存技術が無く、海から遠い内陸部では
鯛より鯉が好まれたらしい。
中国由来の「出世」の象徴として、
鯉の人気は高かったが、それでもやはり
鯛の人気も劣らずだった。

青く光る魚の美しさにもちろん良さは認められるが、鯛の色合いは実に華やかだ。
紅白を想起し祝祭感がある。

そしてなにしろ見栄えがよい。
魚河岸で薄紅色は目を引き、食卓では彩りを与える。気持ちを盛り上げるのを助けてくれる。お祝いごとに打ってつけの魚だ。

『寄合酒』を取り上げたい理由をかねがね考えている。
ふと思い浮かぶのは噺全体の雰囲気が
「なんだかめでたい」からかも、と思う。

現代の私たちと同じく昔の人にとっても高級魚だったわけだが、この話に出てくる人たちは酒にも、食べものにも金を出していない。
だのに鯛を筆頭に登場する食材はどれもある程度、手に入れるのに金で解決するか、労力が掛かるかする。
それを容易く「持ってきましたー!」と抱えてやって来る。買う、以外の方法で入手したと町人たちは語り、話は進む。
「むちゃくちゃやな!」と突っ込む気持ちのお客を次から次へと笑わせてくれる噺だ。

貧しくとも知恵を活かして生きている?(酒の肴の手に入れ方が、そんな良いやり方ではないところも良い)人間を見ると、
知らぬ間に元気になれる。

鯛色は祝いの色。
静かさが好みな人でも、わいわいがやがやの騒がしさが愛おしくなるのは、「寄合酒」に鯛色が混じっているから、か。

↓参考HP

創作の製作過程を覗きみて、楽しんでいただけたら。