episode 0 : プロローグ
大学生だったころの話をしたい。
僕は大阪にある大学の学生で、それなりに勉強をしながらも、気分的にはふらふらと過ごしていた。
入試に合格し、1週間ほど浮かれた後に出てくる、どうでもいい感じ。
それをずっと引きずっていた。
一応授業には出る。きちんと単位は取る。でもそれだけ。
そんな人は今も多いんじゃないだろうか。
僕はいつしか二つの顔を使い分けるようになる。
一つはとりあえず大学で単位を取るために、真面目に講義に出席するときの顔。
度の強い眼鏡をかけ、とぼとぼと大学の最寄駅から大学の校舎までの道を歩く。
講義が終われば最寄駅に近い喫茶店でコーヒーを飲む。
どうということのない、地味な大学生。
ただ、サービス精神と周りを楽しませたい思いはある。コミュニケーションが苦手というわけではない。
でも・・・派手なコミュニティに絡んでいくタイミングを失ってしまった。
もう一つは、夕方から夜の顔だ。
最寄駅からミナミに移動する。
心斎橋のカラオケボックスで眼鏡を外し、コンタクトに付け替える。アクセサリーをつける。
それがスイッチ。
奇妙なアルバイトがはじまる。
仕事として割り切ったアルバイト、というわけじゃない。
趣味と実益を兼ねて、といった綺麗事でもないような気もする。
言語化しづらい。
若い男性にありがちな欲求に基づいた行動と探究心。
それにスパイスとしての「職業意識」のようなものが加わる。
そのような状況に収入がついてきた・・・というのが精一杯の言語化だ。
「あのころ」を中心にした、満たされていたような、それでいてそうでもなかったような不思議な時期と、少しだけ奇妙な体験を通して当時の心象風景を書き残しておこうと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?