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子供のためのオランジュリー美術館(8)マティス・切り絵が生まれた日⑤/元気になってきたマチスおじさん最終回

やる気なくなっちゃったマチスおじさんのおはなしつづき⑤最終回さいしゅうかい 

オランジュリー美術館企画展2023から

みなみしまからアメリカへ。
1930年9月、元気げんきになってきたマチスおじさんは、ここで大きな壁画へきがくことになりました。

そうだ!
あのダンスのを、もう一度いちどこう!

ずっとまえいたおもしたのです。

《La Joie de vivre》Henri Matisse, detail, Bonheur de Vivre (Joy of Life), 1905–06, oil on canvas, 176.5 x 240.7 cm (The Barnes Foundation, Philadelphia)部分

こんなかんじはどうだろう。

大きいかべにもいてみました。
ながながいえんぴつをゆびさきって かるくふわっと もっとふわっと。

photo /Henri Matisse dessinant La Danse, (2001.25.50), 1931, photographe non identifié, collections des photgraphies,archives de la Fondation Barnes (c) 2011

マチスは何度なんどいろえながらかんがえます。

これもちがう。

うーん、これでもない。

どうしても気にいりません。
とうとうマチスは、途中とちゅうで、この壁画へきがを描くのをやめてしまいました。残念ざんねん


それからマチスおじさんはどうしたでしょう。

じつは、イタリアに、ジョットがいたフレスコに行ったのです。

うわぁーなんて素敵すてきなんだ!

神殿から追われるヨアキム

このせん、このいろ、このかたち

アンナへの受胎告知

ジョットのフレスコは、かたちがはっきりしてあざやかな壁画へきがでした。

羊飼いに身を寄せるヨアキム

これだ!

イタリアからもどったマチスは、今度こんどは、かみっていろをぬり、パズルのようにうごかしてわせていきました。
マチスの誕生たんじょうです!

ピンクとあおとグレーとくろ

おもったとおりだ!

そして、かたちのアイデアもいっぱい。どれにする?

Cahiers d' art

番目ばんめのにめた!

Cahiers d' art

マチスおじさんは3ねんというながくて困難こんなんときりこえて、ついに、ダンスの壁画へきが完成かんせいさせたのでした。

La Danse de Mérion, 1933 - Fondation Barnes


Le bonheur de vivre 《La Joie de vivre》
Henri Matisse (Joy of Life), 1905–06, oil on canvas, 176.5 x 240.7 cm (The Barnes Foundation, Philadelphia)  
人生の喜び 今回は部分

  • マティスの写真 photo /Henri Matisse dessinant La Danse, (2001.25.50), 1931, photographe non identifié, collections des photgraphies,archives de la Fondation Barnes (c) 2011

  • La Danse inachevée
    (1930-1931) - Musée d'art moderne de la ville de Paris
    未完のダンス (1990年アトリエから丸めた状態で発見された)パリ市立近代美術館

  • LA DANSE, HARMONIE GRISE グレーのダンス
    LA DANSE, HARMONIE BLEUE ブルーのダンス
    LA DANSE, HARMONIE OCRE オークルのダンス
    1930-1931 Nice musée Matisse 【オランジュリー美術館企画展2023展示】

  • スクロヴェーニ礼拝堂 イタリア パドヴァ
    フレスコ画 ジョット Giotto di Bondone 

  • Étude pour “La Danse ”1932
    ダンスのための習作ガッシェ紙の切り紙を貼る(1作目のダンス習作、本絵は採寸の間違えで後に完成してパリ美術館へ) 1932 【オランジュリー美術館企画展2023展示】

  • Cahiers d’art  Quatre étais de la décoration pour la fondation Barnes ÉTUDE POUR LA DÉCORATION DESTINÉE A LA FONDATION BARNES, MERYON  1926年創刊前衛アート雑誌カイエダール【オランジュリー美術館企画展2023展示】

1930年9月27日、アメリカの富豪バーンズは、フィラデルフィアに近いメリオンにある自身の財団のメインルームに大きな壁画を描くようマティスに依頼した。部屋の装飾の全権を任されたマティスが選んだテーマはダンス。
記念碑的規模の作品に挑戦することで、マティスは自分の芸術の基礎を見直し、表現方法を大胆に変化させた。1906年にバーンズ・コレクションに収められていた《Le bonheur de vivre》ですでに登場していた「ダンス」というテーマに立ち戻る。
この長く困難な創作の過程で、マティスは大きなキャンバスに描かれた最初の作品「未完のダンス」を制作中止した。
その後イタリア、パドヴァに短期滞在し、ジョット(1267-1337)のフレスコ画を鑑賞したマティスは、”その構成の明瞭さ明確さが際立って非常に優れていた“と語っている。
そして、新しいパネル、新しい作業方法で、グワッシュの紙から切り取った形によって構想を練る(ガッシュ紙から切り取った形を使って構図をデザインする)ことから再び始めた。そして全体は、青、ピンク、黒、グレーといった均一な平板色で塗られた。
1933年5月、「ダンス」はメリオンで展示され「パリのダンス」として知られる採寸違いによる最初のバージョンは、その後完成した。
ダンスプロジェクトでの経験は、画家の手法に大きな変化をもたらし、よりコンセプチュアルなものとなった。マティスは1934年にこのように語っている:「私にとって全く新しい想像力の働きに専念したこの時間は、私の心の一面を発展させた」

musée de l’orangerie 

お読みいただきありがとうございました。
2023年からの“やる気なくなっちゃったマチスおじさん”1930年代 ①〜⑤話、ついに最終回です。
60歳を前にして既に華々しい成功を手にしていたにも関わらず、絵のアイデアと描く気力がなくなったマティスは、創作活動を休止。その後異国旅行で感性を新たにモダンで斬新なアイデアを生み出していきます。
息を飲む美しさのジョットのフレスコ画、マティスはどんなに驚いたことでしょう。この出会いが切り絵の発想に繋がったのかもしれません。
前衛アート雑誌 Cahiers d'art『カイエ・ダール』の写真は当時のマティスが写したものですが、マティスは写真撮影がお気に入りだったようです。
このお話の続きは、現在日本で開催中の企画展「マティス 自由なフォルム」をご覧ください。素晴らしい企画展でマティスを堪能できると思います。

ダンスの後に描いた暖炉の壁画「歌唱」 
(“やる気なくなっちゃったマチスおじさん”③話より)

オランジュリー美術館企画展2023展示 詳細記事③

マティス自由なフォルム展 全15話•家庭画報記事

マティス自由なフォルム展、フランス側のオーガナイズを全てした当地の親しい同窓友人の連載記事が、家庭画報web 版にて大変好評です。
昨年のルーブル展連載に続き、美しい画像と共に、現地で直接取材交渉した本人ならではの興味深いお話が楽しめます。全15話
(抽選で展覧会チケットが当たるお楽しみもあります。ふるってご応募ください)


オランジュリー美術館2023マティス企画展のビデオ YouTube自動翻訳から日本語選択可能 マティスの1930年代

“やる気なくなっちゃったマチスおじさん”全①〜⑤話


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