見出し画像

ベトナムの山間部に暮らす、黒モン族の手仕事を訪ねて。

みなさん、こんにちは!まろです。

「少数民族の暮らしと手仕事」
そう聞くと、全くの別世界を想像しませんか?

今回は、そんな少数民族の暮らしや手仕事が
ちょっと身近になるお話。

ベトナム北部の山間部、サパ。

そこに暮らす少数民族、
黒モン族の家に
ホームステイをさせていただき、

彼らの暮らしや手仕事を
訪ねた話を。

手仕事の話だけではなく、
3泊4日、トレッキングをしたり、

一緒に生活をする上で見えたこと、
感じた手仕事の背景の物語も
書き綴りたいと思います。

noteの他にも、忘れたくない
旅の思い出をコラージュしてます。

旅先で集めたチケットやパンフレットや、
時には箸袋を切り貼りして。



ぜひ、こちらのコラージュの
インスタのアカウントも
見てみてください^^

(ここから飛べます!)

https://www.instagram.com/local_travelnote/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D

また、このような旅のコラージュや
結婚記念アルバム、人生史アルバムの
作成もお仕事として
ココナラでお受けしています。

人生や日々の歩みは、実感できず、
薄れていく川の流れのようで。

そんなあなたのこれまでの物語を、
"アルバム"という形で残しませんか?

ご両親や祖父母の長寿祝いの人生アルバム、
友達へのプレゼントにもぜひ。

詳細はこちらから飛べます^^

それでは本編に戻って、
スタート!


ーーーーーーーーーーーーーー

「手仕事に興味があるなら、
ハノイやサパがいいかもね。」

今回の旅は、ずっとやりたかった
世界の手仕事を訪ねる旅にしようと
決めていた。

1週間の仕事の休み。

航空券の安かった
行ったことのない国がベトナム。

そんな理由で行き先を決めてから、
いろんなご縁を繋いでいただき、
宝物のような時間になった。

知り合いに繋いでいただいた、
以前ベトナムに住んでた方に
手仕事を巡りたいというと、

それならハノイやサパがいいんじゃないか、
と教えてもらった。

「サパ」

初めて聞く地名で調べてみると、
そこは山間部で、
様々な少数民族が暮らしているという。

彼らは刺繍や民族衣装など、
それぞれの文化や手仕事を受け継いで
今も暮らしている。

山の斜面に、切り拓かれた棚田と、
山々に囲まれた景色が素晴らしい場所だという。

迷わず行き先をハノイとサパに決めた。

そしてハノイの宿のスタッフに
明日からサパへ行こうと思うと話すと、

少数民族の家にホームステイできることを
たまたま教えてもらう。

手仕事をめぐりたいと言っても、
英語が恐らく通じないところで、
どこまで、どうやって見に行けるかと
未知であった。

前日の夜。

宿もバスもまだ決まっていなかったが、
そんなご縁が重なって、

黒モン族の家に
ホームステイをさせていただき、
ホストにさらにいろんな場所や人に
繋いでもらう。

そうして、黒モン族と赤ザオ族の家に行き、
手仕事をめぐるこの旅が実現した。

◇◇◇◇◇◇

ホームステイ先に着くと、
そこには山と棚田と、
のどかで異世界の美しさの中に、
どこか懐かしい風景が広がっていた。





そのときの様子はこちらの記事を。

ホストは黒モン族の女性、Co。
旦那さんと一緒に建てたという
伝統的な黒モン族の家に
ホームステイをさせてもらう。

全部で3泊4日。
サパには1泊2日でいいと聞いていたが、
なぜか行く前から
ここに呼ばれている気がして、
3泊にした。

手仕事をめぐりながら、
ゆったりと、そこの暮らしを
感じたいと思った。

◇◇◇◇◇◇

初日は夕方に到着して、
2時間ほどスタッフを待っただろうか。

しばらく1人でこの風景を味わった。

そして夜には
トレッキングからゲストと
ホストのCoが帰ってきた。

スペイン人のカップルが2組、
ドイツ人のカップルが1組、
みんなで黒モン族の
伝統的なごはんとお酒を囲んで
たのしい夜を過ごした。

そのときの話はまた詳しくしたいが、
1つだけ思い出を話すと、
ホストは伝統的なライスワイン
(お米から作るワイン)を
ハッピーウォーターと呼ぶ。笑

みんなで各国の飲みのゲームを紹介しながら
飲み明かす。

山を切り開いて棚田をつくった彼らが
伝統的な家庭で作るお酒もまた、お米である。

ダンスの話になり、
スペイン出身の彼女は、
フラメンコを踊って見せてくれる。

日本の伝統的なダンスを聞かれ、
あまりダンスに精通していないわたしは、
中学校の体育祭で踊った
ソーラン節を歌いながら披露した。

◇◇◇◇◇◇

2日目は、もともとホストの妹さんの家で
刺繍を見に行く予定だったが、
夕方しか予定が合わないということで、
急遽トレッキングに参加することに。


棚田の畦道や山道を歩く。

Coは何やら電話をしながら、
もう1つの手で傘をさし、
獣道を軽々と進む。

一方わたしは、両手で這うように
登るのがやっとである。

お互いのこれまでの暮らしや
日々の中で培ってきたものが
全く違うことをすぐに実感する。



そこら中にいるいろんな種類の
チキンや、カラフルな鳥の姿。

放し飼いをされた犬たちに、
田を耕す水牛の親子。

チキンの赤ちゃん、水牛の赤ちゃん、
犬の赤ちゃん、ヤギの赤ちゃん。

山ではたくさんの生き物の
こどもや赤ちゃんを見た。

それは、ペットの犬が
リードに繋がれて散歩している
街で暮らしているわたしにとって、
とても新鮮な光景だった。

生命が芽吹き、繋がっている。

少し山を進むと、さらに簡素な
家々が見える。

夫婦になると、
もといた家を出て、
夫婦2人で自分達の住む
家を作るという。

自分たちで山を切り開き、
自分たちでつくった土地と家。

竹を切り、担いでいき、
家の一部にしたり、
水道管のようなものにしたり。

平にし、水をひいて、田を作る。

歩くたびに、彼らが
自然と共に生きているのが伝わってくる。


軒先には、竹の洗濯竿に
藍染をされた伝統衣装のパンツや服が並ぶ。

家の犬の様子を見ながら
刺繍をする女の子の姿。

生活に根付いた手仕事に、
心が躍る。


裸足で駆け回るこども達と、
家先に存在感を放つホンダのバイク。


サパの人達は、原付やバイクに乗る人が
とても多い。

ハノイの原付社会の影響だろうか。

でこぼこ、細くアップダウンの激しい
山で暮らす彼らにとって、
原付は便利な乗り物なのだろう。

日本の会社の中古のバイクが、
めぐりめぐって、
ベトナムの山奥の
彼らの生活に根付いている。

彼らもまた、生活が変わりゆく
途中にいるのだ。

木や竹や石でできた彼らの庭先に
大きな古びた中古のバイクが置いてある。

砂ぼこりを被って、
毎日毎日、たくさん乗っているのが
伝わってくる。

質素な暮らしの中の大きなバイクだけが
異質なように見えて、
なのにとても溶け込んで見えた。
もう彼らの生活の一部なのだ。

不思議なめぐりあわせを感じる。

これまでの暮らしを守るのか、
伝統を続けるか、
何か変わりゆくものを受け入れるのか。

時代やいろんな渦の中で、
意志や意思に関係なく、
代わってゆくのだろう。

道には5mほどの切った竹が置いてある。
Coは、これは切った人がおそらく
担いで帰るのだという。

トレッキングをしていて、
雄大な山々と、棚田に囲まれていると、
彼らが人の手で切り開いたという事実に
圧巻とする。


竹を一本一本切り倒し、
土地や家や田んぼを
まさに自分たちの手で
作っていくのだ。

どれほどの時間がかかるのだろうか。
どれほどの日々を積み重ねたのだろうか。


◇◇◇◇◇◇

2時間ほどの獣道とアップダウンを繰り返し、
フラフラになった。
帰れるか心配にもなってきた。

そのとき、大きな川に出た。
今日は温かいし泳いでもいいよとCoが言う。

長靴にペラペラのタイパンツを履いていたので、
膝までたっぷり川に入る。

上流から、冷たい、大量の水が溢れている。
脚をつけると、これまでの疲れが
一気に回復していくのが分かった。

自然の力を直にもらい、
心も身体も軽くなっていく。


お昼休憩の場所は、
眺めのいいテラスのある場所が
用意されていた。

山盛りのご飯はとても美味しかった。
彼らはよく食べる。

夜ご飯でも、ご飯を3.4杯食べるし、
お昼も2.3人前はあるであろう量だった。

ここでの暮らしは、
体力を使い、足を動かし、
たくさんのエネルギーが必要で
お腹がすくのだろう。

そこのこどもは無邪気に話かけてくれる。

7歳くらいだろうか。
小さな体には不釣り合いな
カメラの3つ付いた大きなiPhoneを手に
ケラケラとYouTubeを見て笑う。

彼らは伝統的な暮らしを
続けながらも、
観光客向けにトレッキングツアーと
テラスでの食事を用意してくれ、

裸足のこどもは大きなiPhoneを見て
笑っている。

変化がいいとか悪いとかではなく、
時代の流れを感じるのだ。

旅や観光と、その土地の暮らしとの
ちょうどいいあり方は
どんなものだろうと、
いつも考えてしまう。

どんな風に旅をしたら、
彼らの暮らしを壊さずに、
少しだけおじゃまさせて
もらえるのだろう。

竹の籠を背にしょい、
その中には手仕事で作った
ポーチやミサンガが入っている。

伝統衣装を身にまとい、
街にお土産を売りに行く女性を見かける。

何時間もかけて歩いて山をくだり、
街に売りに行くことも普通だという。

彼女らは手に麻を巻き付け、
歩きながらや空いた時間に
いつでも麻を紡いでいる。

歩いていると、黒モン族の彼らはみな
大人もこどももあいさつをし、
楽しげに会話をしていく。

遊んでいるこども達に、
何してるの、と聞くと、
あっちに魚がいたんだ、と教えてくれる。

地域の中で、大人に見守られながら
のびのびと自然の中で遊びまわる幼少期は
幸せだと思った。

帰り道に、手にビニール袋を提げた
こどもが2人、Coに話しかける。


聞くと、自分たちでとってきたフルーツを
売っているという。

Coは味見をし、私たちにも
勧めてくれる。

ビー玉より少し大きい
不思議なフルーツは、

真ん中をむぎゅっと押すと、
ヘタからぴゅっと
つぶつぶの種と、とろとろしたものが
出てくる。

それをじゅっと吸って、
皮を山に捨てて食べる。

まったく初めてみたそのフルーツは、
少し甘かった。


Coは少し彼らを助けたく、
このフルーツを
買って帰りたいと話す。

先に一本道を進んでていいよと言われ、
ドイツ人カップルは、
一足早く山を下る。

わたしはなんだかもう少し
彼らと一緒にいたいような気がして、
ついていくことにした。

こども達はよろこんで、
一人は裸足で、もう一人は
少し大きなぶかぶかのサンダルで

駆け足で家に小分け用の
ビニール袋を取りに行く。

こども達は目を丸くして、一生懸命、
美味しそうなやつを選びながら
買う方の袋に移していく。

妹だろうか、女の子も1人やってきた。

小さな樹脂製の人形を、
大事そうに、くわえたりして
遊んでいる。

わたしもこの子達に何かできないかと、
フルーツを袋に分けている間に、
持ち歩いていた固めのティッシュで
鶴を折る。

それを3人にと言って
女の子に手渡すと、
大きな目をキラキラ輝かせて、
興味津々で見つめていた。

日本の伝統的な遊びで、
幸運のトリだと伝えてもらう。

女の子の小さく日焼けした
手のひらに、白くふわふわした
少し不格好でやわらかい鶴が乗っている。

女の子やこども達は、
不思議そうに、たのしそうに
目を輝かせてつついて遊んでいる。

今日の家族の夜ご飯の話題や、
小さい彼らの何かの記憶の欠片になれば
うれしいと思った。

プラスチックなどではなく、
壊れても自然に帰るものを
プレゼントできたのも、
なんだかよかったな、と思った。

帰り道に、見晴らしのいい場所で、
Coがあそこに見えるのが
私たちの家だよと教えてくれる。

彼女のホームステイの名は、
”Big Tree Black Hmong Homestay”
大きな木の横に家があり、
シンボルになっていた。

“大きな木” がこの土地の彼女の家の
目印であり、シンボルであることが、
なぜかとても尊く、愛おしく思えた。

自然と共にある暮らしであることが、
いろんなものに散りばめられていた。

◇◇◇◇◇◇

山を下り、街に出ると、
市場のような場所が広がっていた。

砂ぼこりの舞う倉庫の中に、
小分けのスナックや
変な色のジュースが並んでいる。


ゆっくり市場を見て回りたいと思ったが、
団体のトレッキングだったので、
そんな時間や体力はなかった。

そんな市場に、開けた小屋があり、
手仕事の紹介と体験ができる場所があった。

Coはそれぞれの使い方を
実際にやってみせて説明してくれる。

まずこの機械でペダルをこぎながら麻を紡ぐ。
思うようにペダルが進まず、
これが以外とむずかしい。


そして次に、この紡いだ麻糸で
布を織っていくという。

鶴の恩返しででてくるあの機織り機だ。
足と手を使い、交互に器用に
織っていく。

トントン、と糸を押す力加減がむずかしい。
そして、糸1本の幅の分だけ、
重なって布になっていく。

なんとも果てしない、地道な道のりに思えた。


その後に布を藍染するという。
何度も何度も染めて乾かしてを繰り返すことで、
深い黒モン族の伝統的な衣装の
藍染の色になっていく。


そこからさらに刺繍をしていく。

だいたいどの家にも、
この機織り機と、藍染の樽があるという。

横には臼のような機械があり、
トウモロコシを挽くものだという。
てこの原理と回転の力を使って、
木の棒を回しながら臼を回す。

これもかなりコツと根気のいる力仕事だった。


驚いたのは、これらすべてを
Coは何ともなく、
さっとやってみせてくれたことだった。

Coは普段、母国語でない英語を話し、
家事や洗濯や食事の準備に、
ホームステイのゲストのお世話をし、
飲み会を盛り上げ、

トレッキングツアーをして
インスタやYouTubeにアップする動画を編集し、
希望があれば別のツアーを手配をする。

黒モン族の女性のたくましさと、
根気と底力のような強さを感じた。

◇◇◇◇◇◇

帰ってくると、ドイツ人のカップルは、
次の目的地へと旅立っていった。

わたしは予定通り、
少し休んだあと、すぐ近くの妹の家に
藍染を見せにもらいに行く。

よく来たね、と温かく迎えてもらう。
Coの家よりもさらに、
”家” 感が強く、ここもまた素敵な場所だった。


Coの家も伝統的な黒モン族の家だが、
ホームステイとしてゲストがより
心地よく使えるように、
バランスよくなっていた。

こちらの家は、より”生活する家”で
彼らの暮らしが伝わってくる。

ここもまた、
屋根のある半屋外のリビングが
心地よかった。

彼女の名はMaoといい、
火を焚いて、鍋で何かを
温めて準備してくれていた。


家事やらなんやらで忙しそうにしていて、
ちょっと待っててね、と言われた。

家をぐるっと眺めてみると、
トレッキング中に見た
機織り機が置いてある。

そこには織りかけの
麻の布がかけてある。

ほんとうにそれぞれの家にあり、
手仕事が暮らしの一部であることを
実感する。


鶏が鳴き、犬が歩き、山が見える。
夕方の風が心地よい。


家の中には、Maoの作った
伝統衣装やクッションカバーや
ポーチなどがたくさん置いてあった。

息を呑むようなとても繊細な刺繍。
いったいどれほどの時間が
込められているのだろう。

Maoが戻ってきて、
自分が織ったA4ほどの大きさの布を
持って来てくれた。

いまからこれに鍋で溶かした液体で
模様を書くという。

囲炉裏と使いこまれた鍋にも
心が躍る。

これの液体は何かときくと、
蜂蜜からつくったロウだと教えてくれる。

ロウも自然から手仕事で作っている。

あとで調べると、
黒モン族はこの蜜蝋染めが有名だった。

ロウにスタンプやペンのようなものを
浸して、教えてもらいながら
模様を書いていく。

最初はペンでここを囲うように。
さらに内側にもうひとつ四角を。

どんな模様になるか想像もつかない。

次はこのS字のぐるぐるのような
スタンプで囲った間を埋めていく。

この形はおそらく貝を表してる。
水の何かと教えてくれたが、
正確な英語の単語はお互いに分からなかった。

そのあとはいろんなスタンプを
見せてもらい、好きなように
スタンプで絵を描いていいよと言われる。

もしくは、もう少しガイドラインを
教えるでもいいよと。

伝統的な柄模様をもっと
教えてもらいたい気持ちもあったが、
まずはスタンプを見てみる。

牛、ちょうちょ、トンボ、
太陽、猫、丸に四角。

いろんなスタンプがあったが、
一瞬でひらめいた絵が頭に浮かぶ。

この思い出の美しいサパの風景を
書きたい。

水牛と、棚田と、山々。

バランスを見てどんどん決まっていく。

途中でロウを垂らしてしまったが、
そこを利用して空気のキラキラも
描くことにした。

雨上がりのサパの空気が、
本当にキラキラと輝いていたのだ。

この風景を閉じ込めるように、
思い思いに描く、幸せなひと時。


たわいのないおしゃべり。

Maoもホームステイをやっていて、
前に日本人の女性がきて、
自分と娘さんように
伝統衣装を買ってくれたという。

うれしそうにそのときの写真を
見せてくれた。

コロナの前は日本人も来てくれてたけど、
コロナのあとはめっきり見なくなったと。
少しさみしそうにしていた。

ロウが固まると、次は藍染めをしていく。

気が付くと日が暮れていた。

家の屋外に、樽が並んでいた。
ツンと酸っぱい独特の匂い。
藍染めの匂いを初めて知った。

実際にその場でみて、体験しないと
分からないことがある。


Maoはゴム手袋をはめて、
浸してあった布をすくい上げる。

わたしの布も中にいれて見せてくれた。

始めは緑色。次に青。
何度も何度も染めることで、
深い藍色になるという。

20分浸して、20分乾かし、
何度も繰り返すのだそうだ。

外は暗くなっていた。

2度目以降はこうして染めておくから、
また明日取りにおいでと言ってくれた。

お礼を伝え、またCoの家に戻る。

◇◇◇◇◇◇

夜は、昨日のにぎやかさと打って変わって、
わたしとCoの落ち着いた2人の時間だった。

昨日のゲストのために手配したツアーで
ロープウェイが封鎖されていて、
少しトラブルがあったようだった。

宿にツアーにトレッキングに、
食事に家事に。

毎日たくさんのことをしている彼女は
少し疲れているように見えた。

今日は2人だし、
ゲストじゃなくて友達がきたと思って
気楽に過ごしてねと伝える。

ごはんのときに、
Coに少し手伝ってほしいとお願いされた。
それは、英語を読んで、書くことだった。

ハッと驚いた。
普段Coは英語をとても流暢に話すが、
英語の読み書きはできないという。

普段はボイスメッセージが多いが、
今は夜遅いから、そのトラブルがあった
ゲストに、メッセージでやりとりを
したいという。

英語の読み書きを義務教育で
教えてもらい、でも会話は
できないことが多い日本人と、

英語を海外からのゲストに
教えてもらいながら、
会話ができるようになっていった
黒モン族の人達。

同じ”英語” であっても、
日本にいるときには感じない
カルチャーショックがあった。

自分たちにとって当たり前のことは、
別の人にとっては当たり前ではないのだ。

夜は夢の話をしたり、
この宿をオープンした経緯などを聞いたりした。

ここのホームステイの話は、
また別で詳しく書こうと思う。

Coは家族と電話をしたり、
ゆっくりした時間をすごせたようにみえて、
こんな日もあってよかったと思えた。

明日はどうしようか?という話になった。

もともと他の民族の手仕事や暮らしや、
黒モン族の刺繍をCoに教えてもらったり、
いろいろやりたいことを話していた。

明日は急遽別のゲストがくるかもしれなく、
Coもまた忙しそうだった。

「一番やりたいことは何?」

そう聞いてくれて、考える。
別の民族手仕事や暮らしが見たいと思った。

やりたいことや
夢がたくさんあるわたしにとって、

「じゃあ明日は何をする?」
「今一番やりたいことは何?」

というシンプルな問いかけは、
頭をクリアにし、大事なことや
自分の気持ちを引き出してくれるものだった。

◇◇◇◇◇◇

次の日は、ここからバイクで30分ほどの、
赤ザオ族の家に手仕事を
見せてもらいに行くことになった。

サパの山には、様々な少数民族が
暮らしており、民族同士も中がいいという。

日本で暮らしていると、
民族同士は紛争をしたり、
征服されたり、

敵対関係のイメージがあったので、
違う民族同士が
いい関係を築いているのが
新鮮で、ステキに思えた。

それぞれの民族同が
学校も同じ学校に通い、
お互いに話せるようにベトナム語を学び、
ベトナム語で会話をするという。

彼らはそれぞれの言語を持ち、
一緒に話せるようにベトナム語で話す。

そしてわたしたちもお互いに理解し合えるよう、
英語で会話をする。

言語のマトリョーシカのようで、
少しおかしく、愛おしく思えた。

英語が苦手、話せない、と敵のように
ネガティブな印象を持つ人もいるが、

英語は味方であり、
わたしたちを繋いでくれる
架け橋だなと感じた。

赤ザオ族の家では、
刺繍や竹かご作りを見せてもらった。

そのときの話も、別に詳しく書こうと思う。

ここで、刺繍を見て、やらせてもらい、
どれほどの時間がかかったものかを
実感することができた。

◇◇◇◇◇◇

この日の夜は、シンガポールからの
女性のゲストが2人と、
彼女らのガイドの黒モン族の女性が
泊まりにきていた。

シンガポールの女性は40歳前後の方々で、
余計なのもが離れていた。

お互いの国や文化の話もするが、
同じように”日本人”ではなく
ひとりの人としての”わたし”に
興味を持って話してくれる。

旅人との会話では、
どこがよかった?どこが絶景?
美味しかった?日本って○○なの?
と旅の情報交換も多く、
”そのひと”とは別の会話も多い。

わたしは”ひと”が好きで、
興味を持ち、
「どうしてここを旅しているか」
「どんなことが好きか」

相手がどんな人で、どんな物語があって、
どんな夢を持っているのか。

そんなことを聞くことが多い。

シンガポールの女性達も、
”わたし”と向き合ってくれる。
そんな会話が心地よかった。


ガイドの女性はとてもおしゃべりで、
黒モン族の文化を
たくさん話してくれる。

衝撃の話もたくさんあった。

正月は黒モン族にとって非常に重要で、
2週間ほどお祝いをするという。

普段は山で働き、暮らしているが、
街に出てお祝いをし、
ホームパーティーをしたり。

そのときに結婚相手の候補も
探したりするという。

正月の3日間だけは、刺繍をしなくていい。
逆に言うと、1年間のうち、
3日間以外は常に刺繍をしなくては
いけないのだ。

この正月に間に合うように、
毎日毎日一生懸命伝統衣装のために
刺繍をする。

お母さんに手伝ってもらうこともあるらしい。

他にも、女性は結婚したら、
誰よりも早く起きて、
家畜の世話をし、田んぼを耕し、
家族全員分の朝ごはんを
準備しなくてはいけないという。

12時ごろまで家事をして、
夜中の3時に起きてそれをする日々。

早起きのチキンに起こしてもらったり、
3時に起きて鳴くチキン、
4時のチキン、と飼っていて、
遅く鳴くチキンは食べるそうだ。

Coに教えてもらった刺繍の模様に、
”鳥の目”や”鳥の脚”が
多く登場したことを思い出す。


なるほどな、と感じたことがある。

山での生活には、厳しいことがたくさんある。
自ら山を切り開き、家や田を作り、
自給自足に近い自然との生活では、
やることだらけなのだ。

一朝一夕でできることではなく、
毎日毎日、雨の日も風の日も
自らやらなければいけない。

誠実に、堅実な日々を
積み重ねなければいけないのだ。

細かい刺繍はそんな人柄を見抜くのに
役立つように思えた。

毎日毎日、コツコツと積み重ねる。
縫うこと自体は難しくないが、
諦めずに、忍耐力が必要な作業。

もちろん得意不得意はあるだろうが、
針と糸はどこにでもあり、誰でもできる。
性格がものをいう作業だ。

赤ザオ族のお母さんは、
寒く厳しい冬は、やることがないと言っていた。
そんな中で刺繍はいい時間なのかもしれない。

他にも、刺繍は場所を選ばないし、
針と糸さえあればできるし、
取り掛かりのハードルが低い。

隙間時間にもできるし、
教えや意味を込めた模様を
作ることもできる。

調べたときに、このような理由から
一般的に刺繍は民族の工芸品に
なりやすいとあったが、

厳しい生活を送る彼らにとって、
性格や人柄がわかるのも、
ここで刺繍が発達した理由な気がした。

藍染も、虫よけや防虫効果、
殺菌作用などがあり、

山で暮らす彼らにとって、
藍染の衣装を着ることは、
生活の知恵だったに違いない。

蜜蝋も、山や自然から採れるものである。

そこの風土で採れるもので、
そこの風土を活かして、
そこの風土に合わせた
暮らしの知恵が詰まっている。

手仕事やそこに住む人々の暮らしには、
そんな知恵や工夫や物語が詰まっている。

◇◇◇◇◇◇

最終日の朝、Maoの家に書かせてもらった
藍染を取りに行く。

どんな色になっているか、
模様はちゃんと出たか、
とてもワクワクした。

着くと、洗濯物を干している
ところだった。

せっかくなので一緒に手伝う。

大きなシーツには、
囲むように広い範囲で
細かく刺繍が施されていた。

ゲスト用に、一生懸命Maoが刺繍したという。

昨日、赤ザオ族の家で刺繍をやらせてもらい、
これほどの刺繍をするのに、
どれだけ大変だったのかと
思いを馳せる。

その背景の物語を知ると、その手仕事は
全く別のものに見え、
より大切にしたいと思える。

Maoは染めは終わったから、
今からロウを落とすという。

家の中で、自分で火を起こし、
大きな鍋でお湯を沸かしていた。

ここに入れてロウを溶かしていくという。

ロウの部分だけ染まらず、模様になる。

アツアツの鍋の中にいれ、
かき混ぜて、水で洗い流す。

それを何度か繰り返して、
ロウを完全に落とすのだ。

火を当たり前に起こして
熱そうな火に薪をくべる姿が
とてもたくましく、かっこよかった。

キャンプとは違う、
日常生活の中に、こんな姿があるのだ。


今から落とす、Maoが書いた
ロウも見せてもらって、驚愕した。

なんと細かい模様のことか。
言葉がでなかった。





布やクッションカバーにあった
染めの模様は、こうして作られていたのだ。


少しやらせてもらって、
これもどれほど大変なのか想像した。

尊敬が溢れて出た。

麻を紡ぎ、布を織り、藍染をし、
蜜蝋で模様を描き、刺繍をし、
家事も家畜の世話も田畑もやる。

どこにそんな時間があるのか。

Maoに、このロウの模様も書いたの!?
「どれほど忙しいのか、、」
と言うと、

「We are so busy!
many many many many things to do everyday!!」

と笑って答えてくれる。

横では旦那さんが桶を洗い、
30kg以上はありそうな
家畜用の乾燥したトウモロコシが入った
袋を肩に担いで運んでいる。

肩に乗せるのも一苦労に見えた。

1つ運ぶのもかなりの重労働であり、
2階にはその袋が何十も積んである。

休むことなく2人は働いていた。


そんな暮らしや
1つ1つの手仕事を見せてもらった。

もう一度、クッションカバーなど
Maoの作った作品を見せてもらうと、
全く別のものに思えてきた。

いろいろ教えてくれたり、
幸せな体験をさせてくれたMaoやCoへのお礼も兼ねて、
そして何より素敵なものだったので、
最終日にクッションカバー買おうと決めていた。

だけど、これだけのものを
買わせてもらっていいのか分からなかった。
これだけ時間をかけて、大切に作られたものに、
値段がどうして付けられよう。

決して安くはないが、
これらの手仕事の時間に見合った値段には
思えなかったので、
買っていいのか分からなかった。

これをわたしたちが買わせてもらうことは、
彼らにとってプラスや幸せになるのか。
搾取にはならないだろうか。

そんなことを考えたが、
Maoは笑顔でお土産にどう?
と言ってくれる。

前に見せてもらった、
伝統衣装を買っていったという
日本人女性のことを、
嬉しそうに話してくれたことを思い出す。

彼女たちから買うことで、
中間搾取もなく、彼女たちの収入にもなるし、
自分たちで納得のいく値段を
つけてくれてると思えた。

そして、この宝物のような
手仕事を買わせてもらうことにした。

宿に帰り、Coからも
クッションカバーを買わせてもらう。

街で同じようにクッションカバーを
売っている場所がたくさんあり、
どこも最初の値段は同じようだったけれど、
何も言わなくてもディスカウントするよ、
買っていって、と言ってくるのだった。

ベトナムやいろんな地域の売買が
交渉文化なのは知っているし、
値下げ交渉が悪いことではない。

けど、これだけのことを知ったあと、
ディスカウントはなく買わせてほしいと思った。

お金持ちではないけれど、
飛行機代を払って
旅にこれる時間とお金の余裕は
ある立場。

だから、ここでも最初の値段で
そのまま買おうと思ったが、
3つ買うと話すと、
Coは少しディスカウントをしてくれた。

Coはとくに、自分のホームステイに
ヨーロッパからもたくさんの人が来て、
羽振りよく買っていく人もいるはずで、

わたしに無理に買ってもらう必要は
なかったように思うが、わたしに
買わせてくれたことがうれしかった。

ここでの旅と経験で、
これまで普通にしていた
”ものを買う”という行為が、
”買わせてもらえる”という、
感謝の気持ちが溢れるようになった。

また一つ、
心を豊かにしてもらえた気がした。


◇◇◇◇◇◇

出発の直前。

Coに電話がかかってきて、
何やら話している。

Coは電話をしながら、
もうひとつの空いた手で、

バナナの皮を脇の山に投げ捨て、
目の前の枝をむしり、
器用に蜘蛛の巣を取る。

いつでも自然と繋がっていた。
愛おしい日常だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後まで読んでくださり
ありがとうございます♡

今回の”世界の手仕事をめぐる旅”を
YouTubeにもアップしています!

この記事の写真だけでなく、
動画も多く、よりリアルな手仕事や暮らしを
感じてもらえると思います。

ぜひ見てみてください!
チャンネル登録や感想のコメントも
とってもうれしく、お待ちしております。

①黒モン族の手仕事をめぐる旅
~刺繍と藍染め~

②赤ザオ族の手仕事をめぐる旅
~刺繍と竹かご~
(記事はのちほどアップします!おたのしみに!)

最後に、黒モン族の言葉で、
ありがとうをCoとMaoに。

Ochau!Co & Mao!


それではまた!♡

◆おまけ◆

Coの黒モン族の家に泊まれるホームステイ
「Big Tree Hmong Homestay」

黒モン族の生活や、
サパでのホームステイに興味がある方は、
Coの場所が本当におすすめです。

詳細は別の記事で書きたいと思います!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?