ZOZOスーツを試して感じた、適合しすぎることの物足りなさ。

先日ようやくZOZOスーツを着て体格を測定した。ZOZOスーツが届いてからすでに半年が過ぎていた。届いた頃、お腹がだいぶ膨らんでいたので、ある程度元に戻ったら測ろうと思っていたのだが、どうやらいつまでたっても元には戻らず、何が元だったのかさえもはやわからなくなってきたので、ついに観念して、スーツというか怪しい全身タイツを着て我が身を測定してみたのである。

測定は絶対に誰にも見られたくない姿をさらすことになり、途中で誰かにうっかり見られたものなら憤死するのではないかとさえ思われた。羞恥プレイを終え、せっかくここまでやったからには自分サイズの服を着てみたくなり、ちょうど欲しいと思っていた白のオックスフォードシャツをZOZOで注文してみた。

さて、しばらく経った後、いよいよわたしサイズにカスタマイズされたオックスフォードシャツが届いた。品質は予想通り。このお値段にしては悪くないと思う。

シャツを広げてみた印象は、ふーんという感じ。早速来てみて鏡を見る。やはり、ふーんという感じ。確かに私の体型にフィットしていて、それはそれでおもしろい。ただ、なんだかテンションが上がらないのだ。

襟のところのタグにやや遠慮がちに薄い文字でZOZOのロゴが入っており、それがテンションを上げない理由の一つかもしれないが、どうもそれだけではない。なぜテンションが上がらないのだろうと考えているうちに、かつて持っていたシャツのことを思い出した。

それは、中目黒でたまたまふらっと入った店で買ったブルックスブラザーズの白のオックスフォードシャツだった。なんとなく形が気に入り、値段もそれほど高くはなかったから買ってみたのだが、このシャツの形が妙に好きで、洗濯で干すたびに、やっぱりいいなあと眺めたりしていた。ファッションに詳しくないので、どこかどう良かったのか自分でもよくわからないが、とにかく全体的な形が好きだった。

長く愛用していたが、いつからか襟元の黒ずみがひどくなって、何度も対処していたけどもう限界というところまで来て、泣く泣く手放してしまった。あれはどうもアメリカから直輸入していたタイプらしく、普通に日本で売っているブルックスブラザーズのオックスフォードシャツとは微妙に形が異なっている(気がする)ので、同じ物は未だ見つけられていない。

このブルックスブラザーズのシャツと比べると、ZOZOのシャツは私の体型に合わせられているので、端的に言ってフォルムが美しくない。要するに私の体型の美しくなさを的確に反映しているわけである。そりゃあ、テンションが上がらないわけだ。

ファッションというのは、メイクと同じで、「自分+5%」の高揚感というか、それによってちょっとだけ気分が上がるということが大事なんだと思う。毎日の食事が、生きていくのに必要な栄養素を摂取するだけでなく、おいしさという体験が重要であるように。

オシャレ感度が高く、自分である程度パラメーターを設定できる人であればいろいろとやりようもあるのだろうが、私のようにそこまでの技能がない場合は、「守備力+5」という防具のようにある程度能力アップが見込まれている服を選ぶのがせいぜい関の山である。

服というのは、かつてはその人その人に合わせて仕立てるのが普通だったわけだから、ZOZOの取り組みは真っ当な進化だと思うしなんら否定するものではない。むしろこの傾向がもっと広がっていくといいなと思っている。ただその際に、その人に合っているというだけでなく、その人をどう良く見せるかという視点が重要なのであり、そこにはまだ課題があると感じた次第である。

#エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?