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記事一覧

小説論1 定式:出来事+理由+感覚

小説論、というと大げさだが、2作目の中編を書きながらのメモを連載したいと思う。メモだが、人に読んでもらうとその「圧」によって考えが進むので。 先日、次のような図を描いた。 これは僕が考えるところの小説の基本構造を、アイロニーとユーモアという『勉強の哲学』の二つの軸で整理したものである。 小説にはまず、出来事の進展がある。

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継続するコツ 第3回 作りたいのに作れないというスランプについて

 僕はスランプがないんですね。スランプってわかりますよね、作家にはライターズブロックなんて言葉もありますね。書きたいのに、書けないというものです。作品を作る時には、必ず訪れるらしいあのスランプです。僕はスランプがありません。書きたくない時には書かないから、書けないということがない、というわけです。と言いつつ、書きたいのに書けないと思うことはあります。多々あります。書くことだけじゃないですね、作ること全般に関して考えてみましょう。作りたいのに作れないというスランプについて。  

継続するコツ 第6回 継続仙人と出会う

 しばらく間があきましたけど、この連載もまた継続してみましょう。とは言いつつ、間があいたと書いてはいますが、5日間だけでした。連載といえば、毎月とかでしょう。それも毎月10枚くらいの原稿の量です。普通だと。僕の場合だとそれじゃ遅いので、連載で本にするみたいな仕事はほとんどしてません。現在、連載の仕事といえば、雑誌ポパイでの7枚のエッセイだけです。こちらは2012年にはじめてますので、もう10年になります。続いてますね。何度もやめたくなったり、鬱になって休載したことも何度もあり

変換すること

何かを変換するのである。それが作品をつくるということだ。では変換とはどういうことだろうか。何かきっかけがある。元になるものがある。それが、というかその一部が、いやもっと細かく言えば、その元になるものに飛び飛びに分布するいくつかの点・線・面が、変換される。変換とは、抽象化が働くということだと思う。

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【エヴァ考察第3章】後編:Qが分かれば全て分かるので謎を洗い出してみた

【!】2021/05/04 シンエヴァ考察書き終わりました!さっそく読む【!】 新劇場版最終章シン・エヴァンゲリオンの公開に向けて、難解だと言われているQを中心に、エヴァの世界設定や前提条件、残っている疑問点など大枠を理解するシリーズ第3章の後編です。 こちらは 【第1章】エヴァという物語とは?旧作から概要や設定を今一度理解する 【第2章】アニメ版(旧作)と比較して新劇場版の世界設定を理解する 【第3章】前編:空白の14年間についての考察

即興的に書く

以前、どんな内容でも、「読むこと自体が目的」のテキストであれば、小説だと言えるという話を書いた。内容を完全にオープンにする。 そうした広い意味での小説を、即興的に書くことについて少し説明してみたい。人力で、AIのように生成する。 まず、何かイメージや言葉から出発する。その出発点がどう浮かぶかは、人によりけりだと思う。そこから、芋づる式に何かを引き出していく。 たとえば、トマトが真っ赤だ。というイメージというか文があるとする。非常に些細なものでいいので、自分にとって、ちょ

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自分だけの文体を見つける方法|「文藝賞」坂上陽子&矢島緑

「創刊号以来、86年ぶりの3刷」「大増補の上、単行本化決定」――昨年、こんなニュースをネットで目にした読者も多いはずだ。河出書房新社が年4回刊行する「文藝」。1933年創刊の老舗文芸誌が、2019年4月のリニューアルを期に、稀に見る快進撃を続けている。 同誌が主催する新人賞「文藝賞」は、山田詠美『ベッドタイムアイズ』から長野まゆみ『少年アリス』まで、綿矢りさ『インストール』から若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』まで、ジャンルも著者の年齢もさまざまなベストセラーを世に送り出

夢の解釈について

ここで言う「夢」とは、睡眠時に見る夢のことである。 夢は、無意識の欲望が、すぐにはわからない形に暗号化、圧縮されたものだというのがフロイト以来の精神分析の見方だが、夢にはそうではない面もあるんじゃないかと最近思うようになった。 僕は、無意識についてフロイトとラカンをベースに考えているので、抑圧された無意識のこじれた部分が夢に表れるというのは依然として支持するのだが、夢が100%そうだというわけでもなかろうと思う。夢とは、100%そのように、自己が何者であるかという意味で満

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書くことと無意識

出てくるように書く。「こう書こう」として書くのではない。湧いてくる、というか、なんとなく「浮かぶ」ものから始めて、その次の文へ、と書く。 それを最大限に広げると、小説になる。一部は実際の経験から浮かぶこともあるだろうし、脈絡もなく、謎の「黒い影」みたいなイメージが浮かぶかもしれない。

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これを読めば即ベテラン!?脱地雷作家のための「NG小説あるある大全集」!

作家なら誰もが経験する(したくないが)「駄作」の制作! これらは、後から見返すと分かることがある これは「若さゆえの、みんながやらかす過ち」 だったんだな……と。 そんな「ネット小説のNGあるある」を大辞典的にまとめてみました! 初心者作家は「先人はこれをやってコケてきたんだな」と参考に ベテラン作家は「こんな時代もあったね(遠い目)」という風に 読み専は「あるわー」という風に、気軽に見てくれればなと思いますよ 15年以上ネット小説を毎日のように読み続け、小説家になろう

自分的小説の書き方備忘録

小説を書くことは狂気の発散 私が書く時に気をつけていること、自分の能力不足を感じて努力した時の解決策など。「こうすればいいよ!」というよりは「私はこうしました」という報告の図、もしくは日記のようなものです。  後述しますが、私の小説を書く上での目標は己の中の狂気を言語化し、その狂気を広めることと、読んだ人に一生ものの心の傷を残してやるという殺意です。真似をしない方が賢明なヤツ。 ①ネタ出し  私の場合、小説にするには"何を書きたいか"が重要で、思いついた"一つのシーンを描

芸術作品とは「解けない問題」である

(無料記事です。連続ツイートを元にして書きました。) 芸術作品とは何か。作品に向き合う方法とは。ここでは、作品を見たり読んだりして、まず「ふわっと」感じること、それが大事で、それをいくらか言葉で膨らませる、ということについて説明したいと思います。 それは、作品の「謎解き」ではありません。しばしば、謎解き的に作品を読みたがる傾向があり、それはそれなのだけれども、僕が思うに、芸術鑑賞の「本体」はそうではない。むしろ、「ふわっと」が大事。これはまあ、ものの言い方で、実は、「ふわ

ネタバレ創作考 2020年、最も完璧で今すぐ使えるプロット『クイーンズ・ギャンビット』

2020年にふれた作品群の中で、個人的に最も優れたプロットだと感じたのは『クイーンズ・ギャンビット』である。 また、この作品が話題となったことには別の意義がある。そしてそれがプロットの価値にもなっていることに注目すべきだろう。 どういうことか? まず、本作よりずっと斬新で複雑なプロットを誇るドラマ作品は、数多く存在する。三大ヒット動画『ブレイキング・バッド』『ウォーキング・デッド』『ゲーム・オブ・スローンズ』を筆頭に、たとえば『殺人を無罪にする方法』は巧みに時間軸をシャッフ

「どこを切ってもナボコフだらけ。この『アーダ』は、ナボコフ度200パーセントと言ってもかまわないほどだ」『アーダ〔新訳版〕』若島正・訳者解説、全文公開 Part 1

ウラジーミル・ナボコフ『アーダ〔新訳版〕』 訳者解説 Part1(全2回) 若島正    本書は、1899年にロシアに生まれ、ロシア革命が起こってから、主にベルリンを中心とするヨーロッパでの亡命生活を経た後、1940年にアメリカに渡り、ロシア語作家から英語作家へと転身した稀代の多言語作家ウラジーミル・ナボコフの最大の長篇 Ada or Ardor: A Family Chronicle(1969年)の全訳である。底本としては、後でもう少しくわしく述べることになるが、1