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カザフスタンで、何が起こっているのか

11月19日 ベラルーシメディア:(3,635 文字)

恩赦、選挙、改革 トカエフの政策がルカシェンコの政策と大きく異なる理由

https://belsat.eu/ru/news/19-11-2022-i-amnistiya-i-vybory-i-reformy-pochemu-politika-tokaeva-tak-otlichaetsya-ot-dejstvij-lukashenko/

ベラルーシは大規模な抗議活動の後、事実上選挙を中止し、弾圧は強まるばかりだが、カザフスタンの大統領は早期選挙を計画し、2022年1月の抗議活動の参加者にさえ恩赦を与えている

カザフスタンで何が起きているのか、なぜベラルーシとこんなに違うのか

2022年1月上旬、カザフスタンで経済的な理由から大規模な抗議デモが発生した
その結果、警察との血なまぐさい衝突が起こり、政府を支配していた初代大統領ヌルスルタン・ナザルバエフの最終辞任を要求する事態となった
そんな中、ナザルバエフの後継者であるカシムジョマート・トカエフは、前任者とその親族をあらゆる役職から排除することに成功した
その後、カザフスタンで改革が始まった

何が変わるのか

この改革は、特にカザフスタン大統領の権力を制限するものだ
例えば、近親者が政治家になることや、国営・準国営企業の経営を行うことを禁止している
大統領の任期は5年から7年に延長されるが、2期目への出馬を禁止する
首都、国家的に重要な都市、地方の首長の任命には、地方議員の承認が必要になる
また、地域的に重要な区や市の長の選挙も導入される
議会の「大統領推薦枠」は15人から10人に減らされた
2023年1月1日には、全国民が憲法上の権利と自由を訴えることができる憲法裁判所が開始される予定である
さらに、オンブズマン(人権委員)の地位、権限、独立性の保証が初めて明記された
さらに、トカエフは1月の抗議参加者に恩赦を与える法律に署名した
1,1500人のカザフ族がその下に入ることになる
軽・中程度の犯罪を犯した者の刑事事件は終結し、有罪判決を受けた者でも釈放され、刑期を終えた人は前科が抹消される
重犯罪、特に重大な犯罪を犯した者に、大幅な刑期短縮を与えている
恩赦の対象はテロリスト、過激派、汚職犯罪、反逆罪、集団暴動の組織化、拷問、未成年者の性的不可侵に対する犯罪、再犯者に限定していない
(注:公正な裁判システムが無かった)

また、トカエフは早ければ11月20日に民主的な大統領選挙の実施することを発表した
現行の法律上は、あと2年間は実施できないにも関わらずだ
(注:トカエフは独裁者ナザフバエフからその地位を「禅譲」されている)
2023年には、国会議員選挙と地方選挙が行われる 前回の国会議員選挙は昨年である

「元大統領が本当にただの元大統領になった」

カザフスタンの政治アナリスト、ガジズ・アビシェフ氏は、2022年の主な変化は同国の政治的移行が終わると、「すべての権力がトカエフ大統領の手にのみ集中する」ことだとコメントしている
同時に、彼に対抗できるような強力な役者も残っていない
「ナザルバエフ元大統領は、政局に全く影響力のない元大統領になってしまった
ナザルバエフの親族も意思決定から遠ざかり、国は彼らが資産を公正に管理していたかどうかを調査している
ナザルバエフ政権下で存在した大企業と当局の公式・非公式な取り決めが見直されている」という
この専門家によると、トカエフは「かなり自信がある」ようだ
カザフスタンには「公正なカザフスタン」というコンセンサスがあり、人々は主に経済問題に関心を持ち、「古い一族」を一掃する必要性を理解しているという
大統領任期を7年に限定するのは「1人の人間が5期続けて務めることはできないし、すべきでないという考えに国民を慣れさせるため」だとアビシェフ氏は言う
(注:ナザルバエフはソ連時代の1984年から2022年1月まで、5期38年間カザフスタンの最高権力者だった)
しかし、問題は、次の指導者がこの規範を廃止し、「無期限の再選挙」を認めることを望むかもしれないことであり、ポストソビエト空間にはその例が多くあるとアビシェフ氏は指摘する
大統領の近親者が公職に就くことを禁止することについて、アビシェフ氏は「社会が縁故主義に疲れている」と言う
この措置は、よりイデオロギー的なものだという
ただ、例えば国家元首の甥や従兄弟が大統領になることは法律で禁止されていない
「しかし、彼らはどこにも任命されないだろう 大統領自身が国家機関に自分の親族を配置しないようにしようというイデオロギーメッセージがあるからだ
このような政治文化は、下層部にも伝えられるべきである 首相や閣僚が親族を配下に置かないことが非常に重要だ」とアビシェフは強調した
彼によれば、これらの改革を実施できるかは、カザフスタンの政治文化や市民社会が「政治階級と国家機構」に対抗できるかどうかにかかっているという
トカエフの恩赦法は「街頭に立ち、感情を表現した普通の人々」への正義を保証するものだという
しかし、「特殊部隊の高官や、不安を煽って逮捕された犯罪者たちには適用されない」と強調する

社会の分断に賭ける(ルカシェンコ)

このことは、2020年の選挙後のベラルーシの状況とは、まったく対照的である
ベラルーシ内での弾圧は強まるばかりで、一般人が排除された全白露人民会議という官僚機構が新たに作られつつある
政治犯はほとんど恩赦されず、地方選挙と議会選挙はそれぞれ2022年1月18日と2023年11月5日から2024年2月25日まで延期されている
そして、ルカシェンコ自身が認めているように、選挙は完全に廃止して、「当局、特に大統領」を上記の全白露人民会議で選出するという
ベラルーシの政治学者アンドレイ・カザケビッチ氏は、このベラルーシとカザフスタンの違いの原点は、ナザルバエフ政権時代にさかのぼるという
トカエフは「さまざまな政治機関と協力し、政党や連立を作り、より複雑な政治ゲームをする」ことができたのだ
一方、ルカシェンコは、「すべての権力を自分に集中させ、個人的に決定し、むしろ政治機関や親政府政党、公共組織をも破壊しようとした
意図的に対立を生み出し、反対派を分断することによっても」という
このことは外交政策の例にも表れているという
カザフスタンは独立(1991)以来、欧米や露との関係で深刻な危機に陥った時期は一度もない
しかし、ベラルーシは「常に何らかの危機に陥っている」のである
「カザフスタンでは、当局が社会の統合を望み、多数派を自分たちの勢力に取り込み、さまざまな中立的あるいは半忠実なグループを自分たちの政策方針に引き込み、多数派がこのシステムに忠実になって、現在の政治プロセスに関与できるようにしようとしています
今、ロシアの外的脅威を感じているカザフスタンのエリートたちは、これは特に重要なことだと考えています」
ロシアの脅威をどうにかするためには、「公共の平和、当局を中心とした社会の統合が非常に重要」だという
そしてこれは「2022年最初にデモ隊が声を上げたニーズや要求に部分的に答えること」で「明確に政府に反対していないすべての人たち」を取り込むことによって達成される
ベラルーシでは、政治危機が始まって以来「四面楚歌の要塞という、まったく異なる戦略が採用された」とカザケビッチ氏は強調する
「ルカシェンコが望んだのは、多数派の強化でもなく、疑念や中立を持つ人々を自分の勢力に引き込むための譲歩でもなく、ルカシェンコの意志と権力保持の欲求によって社会を破壊することだった
そして、対抗勢力に対する暴力の行使に賭けるようになり、あらゆる不誠実な行為を敵対視するようになったのです
そしてまた、自分の支持者を固め、反対者を体制や、国からすらも追放し、当局は、国家統合ではなく、国家分裂の政策を追求しています」
この政治アナリストによれば、このような戦略を選択できるのは、政権存続のカギがロシアにあるからだという
そのため、ルカシェンコは親欧米の存在を抑えるなど、「ロシアへの忠誠心と魅力を示す必要がある」という
カザケビッチ氏は 「カザフスタンは、ロシアと西側諸国との間で外交的政治バランスを保つことができ、ベラルーシのような社会的分断もない」と指摘する
ベラルーシ当局の安定とその存続は 「ロシアが財政的にも政治的にもプーチン政権を支える準備ができるかどうかに、ほとんど、あるいは大きく依存している」と政治学者は付け加えた
(終わり)

参考:11月20日:カザフスタンの有権者 80% 以上がトカエフに投票 - 出口調査


カザフスタン有権者の 69.43% が選挙に参加した 投票率が最も低かったのはアルマティ (28.72%) で、最も高かったのはジェティス地方 (81.42%) でした

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