美男の話 ノブその1

親しい女性実業家が居ました。
夫君を早く亡くされ、一人会社を
守り大きくして来ました。
男性に互して仕事をするので、ハッキリ・サッパリした性格。

ある日共通の友人から(大川君、彼女に大変な変化が!今まで構わなかった髪型・化粧・洋服に、気を配っているのよ。誰か良い人が…)緊急報告が。

(そりゃ一大事。私が確かめよう、丁度食事に誘われているから)迎えの車を出してくれるとの事で、明治通りに立って居ました。

車に乗り込み、運転手の顔を見てビックリ!!向こうから先に「博、何でお前が~」(それはこっちのセリフ)
何と大学時代の親友でした。

ものスゴい美男で、男女両方の恋人がいると、噂の奴でした。感の良い私は、直ぐ彼女の変化は美男が原因と
気付きました。

途中から乗って来た彼女に「この信男君は、大学の頃からの遊び仲間で親友。
彼も食事を一緒でも良い?)水を向けると、嬉しげに頷きました。

食事中ノブの失敗談などを披露して、盛り上がりました。時折彼女の様子を見ると、完全に恋する人の表情です。

「大川君、それなら車必要な時
遠慮なしで、言ってね」との事で、随分アチコチ送迎してもらいました。
その度に(彼女を悲しませる様な事、しないでね。浮気も上手に)ノブに声かけしました。

美しい人は、やはり長生きできませんでした。再会から三年後、交通事故で彼は旅立ちました。
内心彼女の為には、これで良かったと
秘かに思いました。