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「(どうしようもなさ)という救い」

映画「タイトル、拒絶」鑑賞。劇団「□字ック」の同名舞台を座付き作家である山田佳奈脚本、伊藤沙莉主演によって映画化。

雑居ビルに入った派遣型風俗店の待機室を主な舞台に、コンパニオンとして働く数名の女性と彼女たちを搾取しつつ、コントロールしている男性スタッフたちの人間模様をリアルに描いていく。

風俗の女たち……という1点だけを切り取れば、よくある業界の裏事情的なストーリーだが、本作はそんな陳腐なカテゴライズなど嘲笑とともに退けるほどの凄みを持っている。

複数の男に捨てられながらも、刹那的な人生から抜け出せない女、男は生きるための手段とクールに割り切る女、中絶を繰り返しながら男を利用し、自分だけは愚かではないと自分に言い聞かせている女……。

作中で描かれる女(男も含めて)は皆、ことごとくどうしようもない人間だ。

どうしようもなく刹那的で、滑稽な人生なのだが、皮肉にも、その「どうしようもなさ」こそが彼女たちにとって唯一の救いであり、せめてもの希望になっているのだ。

客観的に見れば途方もなく悲惨で、救いのない人生なのだが、少なくとも彼女たちにとっては「目の前の現実」であり、ありきたりな日常なのだ。

人生に後悔はつきものだが、彼女たちにかぎっては「こんなはずじゃなかった」とすら思っていないのかもしれない。

もちろんそれは、男の勝手な想像であり、妄想にすぎないのだが。

本作がもともと舞台劇であることも興味深い。特に待機室のシーンでは舞台的な構図が活かされており、女たちのかわいたセリフと滑稽な掛け合いによって序盤からテンポよく進んでいく。

伊藤沙莉はもちろんのこと、女優陣の凄みが発揮された力作である。

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