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「赤ちゃんポストと銃社会」

森本修代「赤ちゃんポストの真実」読了。熊本県内で初めて設置され、メディアでも大々的に取り上げられた赤ちゃんポストの是非を成立の過程から丹念に追いかけたルポルタージュ。

基本としては中立かつ客観的な視点から赤ちゃんポスト設置の経緯が綴られているが、文章の端々から赤ちゃんポスト否定はであるという雰囲気が伝わってくる。

もちろん、いたずらな感情論から否定するのではなく、赤ちゃんポストと行政の関係をふまえたうえでの批判なため、一読の価値がある。データと客観性に支えられた建設的な批判は赤ちゃんポストだけでなく、行政の不備を浮き彫りにするうえで大きな意味がある。

特に、一方的な理念や感情論に支えられた赤ちゃんポスト推進は危険だ。

赤ちゃんポストと銃社会は、よく似ている。

アメリカ人にとっての銃は、日本の母親たちにとっての赤ちゃんポストではないのか。

自衛のために銃を持つと、アメリカ人は言う。時として銃を持たなければ敵に飲み込まれてしまうのだと、彼らは口をそろえて訴える。

赤ちゃんポストに子どもを預ける母親も、根本的には同じ心理なのではないだろうか。

決して子どもを見捨てるつもりではない。ただ、赤ちゃんポストがなければ子供と一緒に共倒れになってしまう……。

今、赤ちゃんポストを増やそうという動きが増えている。

明日が見えないほど困窮している母親にとって、赤ちゃんポストは本当に救世主となるのだろうか。

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