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福祉職は魔法使いではない~私のスタンス~

 相談支援員は、福祉職はその道のプロかもしれないけど、魔法使いじゃないんだぞ。

 福祉の仕事をするうえで、大前提にしているのはここ。

 言うだけで叶うことはない。条件がそろって初めて解決する
 物事の道理だと思うが、
 福祉は違うと思っている人が一定数居るのに驚き。
 プロなんだから何とかしろ!!何とかするのが仕事だ!それもできない奴はぺろっぺろの役立たずの素人だ!言いたい方はどうぞ、やれる人に支援してもらえばいい。私は自分が追い詰められてまでそんな案件に首を突っ込むことはしません。
 ちなみに、そういった優秀かつ心が広く能力のある支援者は引く手あまたで忙しくて、新規でめんどくさい人間の相手なんぞできないし、人の話も聞かずに勝手なことばかり言う人間に対し、親身になって関わってくれる人間は、福祉職の中でも数少ないよ。自分は迫害される側だと思っているかもだけど、迫害しているのは自分自身かもね。

 さて、いろいろ書きたいことはあるが、まずは私の福祉職として、相談員としてのスタンスから書きたいと思う。

 相談支援員としての私のスタンスは、次の通り。
①やれることをやる。
②できないことはできない。
③①と②の明確化。ライン引きをする。
④利用者、利用者家族、関係機関の納得と同意を得たことしかやらない。
⑤利用者側からのクレームは徹底的に内容を精査。一方的に話は聞かない。施設側も同じく。
⑥引いたラインからはみ出た要求は受け入れない。
⑦不満は聞く。
⑧筋が通らないことはやらない。
⑨支援者相手にでかい顔はしない。
⑩人を信じない

お、結構あるな。
もっと気を付けていることは多いんだろうけど。

項目別に説明しまそ。

利用先前段階

①やれることをやる
②できないことはやらない。
③①と②の明確化。

これらは似て非なるもの。

例えば、
・利用できる施設を探してほしい⇒できる
・利用できる施設の候補を挙げてほしい⇒できる

時間はかかる。ひとりで探すのは時間がかかる。
保護者側でも候補探しは続けてほしい、ってのの同意を受ける。
その場合は、期限を決めて定期的に情報交換と途中経過の話はする。
この場合は、本人の特性に合わせた施設の紹介(こっちが本命)
区分や障害程度という行政区分的に適合し、空きがある施設の紹介
後者は一応探していますよっていうアピールに近いけど。
それぞれのパターン有。

利用できる施設を3日で探してほしい⇒できない
 ※比較的軽度の障害者や児童で、就労系や生活介護系、放課後デイ等の通所先を探すならまだ可能かもしれないけど、家族や本人が訳ありな場合や、コミュニティクラッシャー系の場合、よほど障害が重度な場合の入所先、短期入所先を探すのはなかなか厳しい。見つけられるとすれば、行政が強制力を持って探す場合
この場合だって、行政も相当電話かけまくらないと厳しいと思う。また、一時的な居場所が見つかってもそこに長期間入れるかは別問題なので、問題を解決するのには相当な労力と運が必要となる。

 利用者がひとりひとり違った個性や特性があるように、障害者施設そのものにも施設や事業所ごとの特性が分かれてくる。
そのマッチングがうまく行かないと、本人の状態が悪化し、ますます安住の地が見つかりにくくなってしまうわけ。そこに家族の願いも乗っかってくるからさぁ大変。

 例えば、知的障害者が入所する施設でも、比較的自立度がある人が多い施設と、最重度の人がいる施設では環境が違うし、部屋が個室は二人部屋かでも違う。施設そのものの広さも違う。現状入居している人も違う。
 施設の活動方針も、10分単位でしっかり時間を区切ったきちっきちっとした生活を送る施設もあれば、食事や入浴の時間だけがほぼ固定で、緩やかに時間が過ぎる施設もある。工賃が発生するような軽作業を行なう施設もあれば、作業を行なわず、散歩や余暇といった活動のみ実行する施設もある。

 ご本人が時間にこだわる特性があり、日々の予定や活動、流れをしっかりやり、また作業をこだわるタイプと仮定したときに、きっちと日々の活動が保証されている場所なら安定するが、作業があったりなかったり、だと本人の特性に合わないので、どんどん不安定になるだろう。
 逆に、何かを強制されるのが苦手な人が、きちっきちっとした施設に送り込まれたらホントにしんどいだろう。こういうひとは、比較的緩く、強制がない施設に行けば、そこそこ落ち着くはず。
 あとは、騒がしい人が多い施設に、うるさいのが苦手な人がいるのは不幸だし、静かな環境が好きな人が多い場所に、大声や大きな音を立てる人が入れば、もともと居た人の状況が悪化する。

 お互いがそれぞれ、なんとなく共存できる環境じゃないと、施設生活はなかなかきつい
 でもそれって。健常者が自分の職場や、居住環境を選ぶのと何ら変わりがない作業なのよ。入所したいから、居場所が欲しいから、自宅でみれないから、理由はいろいろあれど、適当な場所に人間をあてこむことの非人道さって、健常者のほうがよくわかるはずなんだけどね
 どこでもいいから入居させろっていう人は、専門にやってる人でも陥りがちなこと。それはしたくない。

 そこに、家族の活動重視か生活重視か、の好みや、親の理想的なものが加わって、それらがある程度バランスできる環境をもとめられる。
 そんな場所がそう簡単に見つかるわけないでしょ。
 それに、精神、知的、身体、特性が全く違う人を、同一の設備や支援力でみるってのもなかなか無理がある。あとは、身体介護が必要な精神や知的の人、重複の障害があるともっと難しくなる。
 政府や当事者団体が強力に運動し、障害者を施設に閉じ込めるのではなく、地域の中でみていこうという方針を固めてから、入所施設はすっかり作れなくなった。高齢者と違い、若いうちから入所する人も多いので、なかなか空きが出ないのよ。回転率は悪い。障害者の入所施設って。そんななかで、本人に合わせた、空きのある施設を探すってのは…ねぇ。

と、困難なことが多いのよ。
でも困ってるから助けを求めている。
見殺しにはしない。門前払いにはしない。
だからこそ、できることはやれるしできないことはできない。その線引きをしっかりしていかないと、路頭に迷うのは利用者自身とその家族になってしまう。

※ちなみに私の施設では名前だけの入所待機はやってない。
入所待機なんぞ、ただの免罪符のことが多いし。
入所させるつもりがないのに、名簿だけ書かせて、その中からえり好みをしている施設の多いこと多いこと。入所待機の名簿には書いてもらっているので、仕事としてやることはやっていますという人がいるけど、じゃあ、順番が来たらしっかり入れる保証があるのかと聞くと、みんな黙りこくる
入所待機がクリア条件となるのは、あと何人後に入所できるかが確約されたときで、名簿に書くのが勝利条件じゃないぞ。
と、腹立つことが多かったので、入所者はその都度決めております。待機者は居るにはいるけど、その人たちが入れるのはほぼ確実。約束破ったことはないよ。一応。

それぞれの役目と役割とその時期と報告のタイミングの明確化。
そして、時間がかかることを説明して、同意を得た場合のみ引き受けます。
これは絶対条件
ですね。はい。

あと、こういった事態になったらこちらは手を引きますんでよろしく
という話も事前にしておきます。
これは、当事者家族だけでなく、
困難事例の場合には行政にも話しときます。

利用決定後

④利用者、利用者家族、関係機関の納得と同意を得たことしかやらない。
⑤利用者側からのクレームは徹底的に内容を精査。一方的に話は聞かない。施設側も同じく。
⑥引いたラインからはみ出た要求は受け入れない。
⑦不満は聞く。

 これらは当たり前なんだけど、意外と徹底的にやっているところは少ないような気がする。気がする、うん。
 同意を得たことしかやらないというのは、それぞれの役割のライン引き日々の活動内容や支援の幅の確認、送迎に関すること、通院に関すること、支払い…重要事項説明に含まれる部分、日々の支援内容についての確認、ストロングポイントの確認。さらに、どんな事態があると、利用継続が難しくなるかをこの段階で、関係者全員で確認する
 言った言わないにならないように、決め事は関係者全員の前で念押しする。ラインからはみ出す人がいる場合は、こちらから指摘し、しっかり決められたことが決められたように稼働するように調整する
 融通を聞かせる部分、動かない部分の確認とか。
 
 例のせようと思ったけどやめよ。
 面倒なことになると面倒だし。

各機関、やれることはやれるだけ、やれないことや出来ないことははっきりさせる。これが基本ってことで。

⑧筋が通らないことはやらない。
⑨支援者相手にでかい顔はしない。
⑩人を信じない

 これは、仕事全般へのスタンス。
 ⑧は、たまに、身勝手なことを行政が決めて、それの尻拭い頼むよ的な依頼もある。こっちの提案や対案も聞かないのに勝手に方針決めて、丸投げなんぞ許さないし、責任持てない。
 
そういう時は、うまく自分の手を離れるように流れを持っていく。いやー、出ていきたいといった施設の人間がいつまでも関わるのは悪いでしょうし、ご家族も嫌な顔すると思いますし…なんて理由付けて、家族から相談切るように仕向ける。大体無茶苦茶するような家族は、相談支援が切れる意味を分かっていないことが多い。逆に行政には、ご家族が嫌がっているので続けられないし、再度やるのも難しいので後はなんとかして。と伝えておしまい。
 逆に、こちらが頼み込んで決めてもらったことは、何としてでもやりきるし、どんなサポートもしっかり行う。必要なら、元居た施設の人員派遣を調整し、うまく行く支援法の勉強会も行った経験ある。
 マッチングが良かろうとも、ご本人の状態が変化し、施設での対応ができなくなって、他に移るってケースもある。これは、うまく行かなかったことに対して、こちらはとやかく言わない。頑張れ、何とかしろとは言えない。きっと、その施設の力を振り絞って何とか対応しようとしてできなかったんだから。その時は素直に、次の場所を探していくしかない。早い段階で。

 ⑨相談支援員は所詮調整役で、実際受け入れるのは施設。支援するのはそこの支援者だから、任せたからにはやってることには文句を言わない。大きな支援方針にいるかは確認するし、モニタリングも行なうけど、基本は、受け入れてくれてありがとうの姿勢は崩さない。だって受け入れてもらえないと仕事にならないし、高圧的に出る相談員と仕事したいと思う施設があるわけない。でも、利用者の利益もしっかりと考える。それぞれの状況のすり合わせをして、円滑な利用が続くように調整する
 これを忘れて、「俺(私)がプランを描くからこの施設に利用者が来ているんだからありがたく思え」といった人間もいる。特にベテラン相談員に多い。いろんな人の尽力で自分の立場があるってことっ忘れてる例だと思う。

 ⑩これは基本。初対面の施設の言うことは信じない。管理者の都合のいいセリフは信じない。行政の担当者の言うことは鵜呑みにしない。特に、新規の施設の管理者に、どんな方の受け入れをしているか?と聞いたときに、区分上該当する人はだれでも受け入れます。っていう人は、マジアウト。株式会社とかで採算を取ろうと、最初に人入れて、ちょっとでも問題のある人はすぐ追い出すから。入口広く、出口も広い。せめて、その方を見てみないと何とも言えないとか、だいたいこのぐらいの人の入居を見込んでいる。すでに決まっている人はこんな方が多い。とか、しっかり状況を説明できる人、対応できる人、できない人を話すような事業所しか信じない。
 誰でもって、区分が一番重いADL全般に支援が必要な重度の身体障害者や、知的障害者を送り込むぞ?断らずにできんのかお前ら!と思えてしまう。誰でもなんて成り立たんよ。一般家屋に毛が生えたような場所で、障害者が共同生活を送るんだから。
 あとは、一緒に困難な事例を乗り越えた人、一緒に難しい仕事をした人、その後でうまい酒を飲んだ人は、基本信用するし、どんなことでも微力ながら力は貸したいと思う。恩には恩を。それが私の信念です。

と、仕事をするうえでのスタンスを書き殴ってみた。
どう考えても、聖人じゃないね。
プロ、と言われるには足りないとこや失格なとこが多いかもしれない。だけど、それぞれの機関には強みも弱みも事情も限界もある。それを無視した進め方は私にはできない。うん、できないしやれないよ。

 それでも続けられるのは、こんな自分でも必要としてくれる場所や、人がいるから。そして、何とか自分が踏ん張らないと生活が成り立たない人がいるからで。

 そんな人の力になりたく、今日もさぼりつつ、息を抜きながら仕事してます。はい。



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