銀行法:規制緩和!?銀行法施行規則等改正!?2023年6月30日パブコメ開始

金融庁は、2023年6月30日、関係業界団体からの規制緩和要望等を受け、複数の規制の見直し(緩和)や一部明確化のため、銀行法施行規則等を改正する内容の内閣府令案等(正確には「銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)」等)を公表した(本稿では「本改正案」という。)。

本稿を執筆している現在(2023年7月6日)において、パブコメに付されているところであるが、本改正案についてざっとかいつまんで紹介する。
2023年7月31日までパブコメを受け付けているため、興味関心があれば是非とも質問してみるとよいだろう。特に2点目から5点目は趣旨や問題意識がわかりづらいため、質問する価値があると思われる。

なお、以下では基本的に銀行に関する点のみ触れるが、他の金融機関においても同様の改正はされるはずである。

本改正案の概要


金融庁のウェブサイトにも記載があるが、本改正案の概要は次のとおりである。

  1. 銀行等の営業所の設置に係る手続の見直し

  2. 銀行等の付随業務にクレカ会社のカード発行業務(キャッシング機能)の媒介を追加

  3. 外国で一般事業を併せ営む金融関連業務会社の業務範囲の緩和

  4. 銀行代理業者等の顧客情報の取扱い・所属銀行が講ずる措置に係る規制の見直し

  5. 銀行等の付随業務として、銀行子会社・兄弟会社が行う他の事業者に対する研修業務、コンサル業務、調査業務等の代理・媒介業務を明確化

1.銀行等の営業所の設置に係る手続の見直し


(1) 事前届出義務の緩和

前提として、銀行は、営業所を設置しようとする場合などには、一定の例外を除き、金融庁長官に届け出をしなければならない(銀行法第8条第1項)。

銀行法
第8条 銀行は、日本において支店その他の営業所の設置、位置の変更(本店の位置の変更を含む。)、種類の変更又は廃止をしようとするときは、内閣府令で定める場合を除き、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に届け出なければならない。

注 銀行法上の「営業所」とは、銀行が銀行法第10条第1項各号に掲げる業務(銀行の固有業務と呼ばれる)の全部又は一部を営む施設又は設備をいうとされている(銀行法施行規則第8条第1項)。銀行の組織として、本店・支店・出張所という区分があるが、いずれもこの「営業所」に含まれ得る。

この銀行法第8条第1項の規定を受け、現状の銀行法施行規則第9条第1項は次のとおりとなっており、その各号に定められた事由は上記「一定の例外」に該当し、金融庁長官への届出が不要となるのである。

第9条 法第8条第1項に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
 営業所(法第15条第1項に規定する休日又は第16条第1項に規定する営業時間以外の時間においてのみその業務を営むものに限る。)の設置、位置の変更又は廃止をする場合
 出張所(前号に規定する営業所に該当するものを除く。)の設置、位置の変更又は廃止をする場合
 増改築その他のやむを得ない理由により営業所の位置の変更をする場合(変更前の位置に復することが明らかな場合に限る。)
 前号に規定する位置の変更に係る営業所を変更前の位置に復する場合

本改正案前の銀行法施行規則第9条第1項

現状の銀行法施行規則第9条第1項をまとめると、休日や営業時間外に営業を行う営業所や平日や営業時間内に営業を行う出張所の設置等、増改築等のやむを得ない理由により営業所を移転することや元の位置に復帰することについては、利用者・預金者への影響が軽微という理由か、金融庁長官への事前届出が不要ということである。

本改正案では、この銀行法施行規則第9条第1項に次の2つの事由が追加されるようである。

三 営業所(第1号に規定する営業所及び前号に規定する出張所を除き、法第15条第1項に規定する休日以外の日の第16条第1項に規定する営業時間の全部においてその業務を営むものに限る。)の設置をする場合
四 出張所の種類の変更をする場合

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

追加される第3号が示す「営業所」は、平日の通常の営業時間内に営業を行う本支店を指すことになる。これと第1号の「営業所…の設置」及び第2号の「出張所…の設置」を合わせ読むと、すべての営業所の設置について金融庁長官への事前届出が不要となるということである。

これは、各銀行の支店や出張所などの対面での営業拠点が続々と廃止・閉鎖されている昨今、営業所を設置することは少なくとも利用者・預金者の不利益にはならないと考えられるため、わざわざお互い手間をかけて事前届出を行うに及ばずという趣旨だと思われる。

ただ、第1号から第3号を合体させないのは、設置だけでなく位置の変更や廃止については、営業所の中でも平日の通常の営業時間内に営業するもの(出張所を除く)とそれ以外のもの(出張所を含む)を分ける必要があるという判断だろう。これも利用者・預金者への影響の多寡を踏まえたものと思われる。つまり、平日の通常の営業時間内に営業する営業所(出張所を除く)の位置の変更や廃止は、少なからず周辺の利用者・預金者に影響があり、金融庁としてはその影響を事前に把握しておきたいということだと思われる。

また、追加される第4号は、「種類の変更」についてであるが、「種類の変更」とは、出張所から支店への変更と支店から出張所への変更を指す(銀行法施行規則第8条第4項)。

そのため、「出張所の種類の変更」は、すなわち出張所から支店への変更を意味する。支店の設置について事前届出の対象外とする追加の第3号と平仄を合わせる趣旨だと思われる。

(2) 事後届出義務の新設

上記のとおり、出張所を含む営業所の設置については、事前に金融庁に届出を行う必要はなくなる。

他方で、金融庁としては、どこにどのような営業所があるのかを金融監督庁として把握/認識しておく必要があることから、事後に届出を行うよう求めている(銀行法第53条第1項第8号、同法施行規則第35条第1項)。

注 この営業所設置等に関する事前・事後の届出については、専門家ですら誤る点であり、要注意。条文をよく読もう。

本改正案では、銀行法施行規則第9条の改正に伴い、事後届出事項に関する同第35条第1項も次のとおり改正される見込みである。

a. 休日営業→平日通常営業時間外営業 or 平日通常営業時間外営業→休日営業

第9条第1項第1号の営業所とは、休日又は通常営業時間以外の時間においてのみその業務を営む営業所であり、それを、それ以外の営業所であり、かつ、平日の通常営業時間内に業務を営む営業所以外の営業所にしたということは、元々休日のみ営業していた営業所を平日の通常営業時間外のみ営業する営業所に変更したか、平日の通常の営業時間外のみ営業していた営業所を休日のみ営業する営業所に変更したことしかない。

銀行法施行規則第35条第1項
三の七 第9条第1項第1号に規定する営業所(出張所を除く。以下この号において同じ。)を当該営業所以外の営業所(同項第3号に規定する営業所を除く。)としようとする場合

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

b. 休日又は平日の通常営業時間外営業の営業所→その他営業所

休日又は通常営業時間以外の時間においてのみその業務を営む営業所を、それ以外の営業所に変更し、それが上記aや下記dの場合以外の場合ということは、平日の通常の営業時間内に営業する営業所か出張所に変更したことしかない。

銀行法施行規則第35条第1項
三の八 第9条第1項第1号に規定する営業所を当該営業所以外の営業所(出張所のうち臨時若しくは巡回型の施設又は無人の設備であるものを除く。)とした場合(前号又は第4号の3に該当する場合を除く。)

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

c. 平日の通常の営業時間内に営業する営業所の設置

本改正案により、銀行法施行規則第9条第1項第3号には平日の通常の営業時間内に営業する営業所が規定されており、それを設置する際の事前届出は不要とされたが、事後届出は当然必要ということである。

銀行法施行規則第35条第1項
四の二 第9条第1項第3号に規定する営業所の設置をした場合

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

d. 出張所の種類変更(出張所→支店)

従前、出張所から支店への種類変更には原則どおり事前届出が必要であったが(銀行法第8条第1項)、本改正案により出張所の種類変更は事前届出の対象外とされることから(銀行法施行規則第9条第1項第4号)、事後届出の対象となったということである。

銀行法施行規則第35条第1項
四の三 出張所の種類の変更をした場合

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

e. 事後届出の時期

一部の届出については、半期ごとに一括して行うことができるとされており(銀行法施行規則第35条第8項各号)、上記b~dの届出についても、半期ごとに一括して届出をすれば足りるよう手当された。

銀行法施行規則第35条第8項
二 第1項第3号の8から第4号の3まで、第5号の2又は第7号の2に該当するときの届出

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

なお、なぜ上記aの届出については半期一括の届出で足りないのかはよくわからない。

2.銀行等の付随業務にクレカ会社のカード発行業務(キャッシング機能)の媒介を追加


銀行には、①異種リスクの混入防止、②本業専念による効率性発揮、③利益相反防止というもっともらしい趣旨から、銀行の固有業務である預金・貸金・為替、それに付随する業務(銀行の付随業務と呼ばれる)や他の法律により特別に許容される業務(法定他業と呼ばれる)以外の業務を営むことを禁ずる他業禁止規制なるものが課されている(銀行法第12条)。

銀行の付随業務の1つに、銀行等の金融業者のための代理や媒介が定められており(銀行法第10条第2項第8号)、具体的な内容は銀行法施行規則に委任されている。

銀行法
第10条第2項
八 銀行その他金融業を行う者(外国の法令に準拠して外国において銀行業を営む者(中略)を除く。)の業務(中略)の代理又は媒介(内閣府令で定めるものに限る。)

それを受けた現状の銀行法施行規則第13条は、銀行等の金融機関、資金移動業者、信託会社・信託銀行、金融商品取引業者、保険会社、政府系金融機関等の代理又は媒介を定めているが、そこに、次のとおり貸金業者のうちクレカ発行業務(イシュア業務)を主として営む会社の媒介(のみ)が追加される予定である。

四の二 貸金業者(貸金業法(中略)第2条第2項に規定する貸金業者をいい、第17条の3第2項第7号に掲げる業務を主として営む会社に限る。)が営む貸金業(同法第2条第1項に規定する貸金業をいい、当該業務に附帯して営むものに限る。)の業務の媒介

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

この改正(追加)に関しては趣旨がよくわからない。

つまり、従前から銀行はグループ内外のクレジットカード会社(イシュア)のためにクレジットカードの発行に関して媒介行為を行ってきていると思われる。それは、銀行法第10条第2項第8号、同法施行規則第13条各号を根拠にしていたわけではなく、同法第10条第2項柱書の「その他の銀行業に付随する業務」として行ってきていたように思われる。

本改正案によりクレカのキャッシング機能についてのみ付随業務として媒介を行うことができるようになるということであるが、銀行としてキャッシング機能のみ焦点を当てて媒介(勧誘等)を行うことは考えづらく、通常のクレカ機能についても媒介を行うことになると思われるものの、その部分については特段手当がない。

クレジットカード会社が行う包括信用購入あっせん業務の実質は与信であり、銀行の貸金を中心とするビジネスと親和性が高く、またキャッシングについては言わずもがなであり、いずれにせよ付随業務で十分読み込めるものと思われるが、何らかキャッシングの媒介に関して不都合でもあったのかもしれない。

本改正案は関係業界団体による規制緩和要望等への対応とのことであり、その要望等を確認すれば趣旨がわかるのかもしれないが、ざっと調べた限りではその要望等は不見当である。

3.外国で一般事業を併せ営む金融関連業務会社の業務範囲の緩和


銀行法上、銀行の他業禁止規制の潜脱を防止するため、銀行子会社についての業務範囲規制が課されているが(同法第16条の2第1項)、現地における競争上の必要性があれば、業務範囲規制にかかわらず継続的に保有することができることとされ(2021年銀行法改正)、外国の銀行・証券・保険・信託といった外国金融機関や「外国特定金融関連業務会社」を子会社とすることにより、銀行子会社が営むことが許容されている業務以外の業務を営む会社を子会社とすることが一定の要件のもとで認められている。

本改正案に係る改正点は、「外国特定金融関連業務会社」の範囲を一部拡張するところにある。

つまり、従前、「外国特定金融関連業務会社」として定められていたのは、①貸金業、②クレジットカード業、③割賦販売業、④リース業を主として営む外国の会社であった(銀行法第16条の2第6項第1号、同法施行規則第17条の3第2項第2号・第7号・第8号・第11号)。

本改正案により、そこに⑤前払式支払手段発行業を主として営む外国の会社が加わった形である。

法第16条の2第6項第1号に規定する内閣府令で定めるものは、第17条の3第2項第2号、第7号から第9号まで及び第11号に掲げる業務並びにこれらに附帯する業務とする。

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

この改正(追加)に関しても趣旨がよくわからない。

そもそも、外国特定金融関連業務会社として定めている会社が「金融関連業務会社」(銀行法第16条の2第2項第2号、同法施行規則第17条の3第2項)と比べて極めて限定的である趣旨もよくわからないし、外国において前払式支払手段(いわゆるプリペイド方式)が普及しているのかどうかも不明である。

4.銀行代理業者等の顧客情報の取扱い・所属銀行が講ずる措置に係る規制の見直し


(1) 顧客情報の取扱い

銀行代理制度において、銀行代理業者は、金融庁の承認を得た上で兼業を営むことが可能であるが(銀行法第52条の42第1項)、顧客保護の観点から、顧客情報の管理に関し次の3つの規制がされている(銀行法施行規則第34条の48)。

  1. 銀行代理業において取り扱う顧客に関する「非公開金融情報」(その役員又は使用人が職務上知り得た顧客の預金等、為替取引又は資金の借入れに関する情報その他の顧客の金融取引又は資産に関する公表されていない情報)を顧客の同意なく兼業業務に利用すること

  2. 兼業業務において取り扱う顧客に関する非公開情報(その兼業業務上知り得た公表されていない情報)を顧客の同意なく銀行代理業及び銀行代理業に付随する業務に利用すること

  3. 兼業業務において取り扱う顧客に関する非公開情報を顧客の同意なく所属銀行に提供すること

本改正案は、この顧客情報の管理に関する規制のうち、1点目につき次のような改正を行うものとなっている(改正点は太字部分)。

銀行法施行規則第34条の48第1項
銀行代理業者(所属銀行又は所属銀行を子会社とする銀行持株会社の子会社であるものを除く。以下この条において同じ。)は、銀行代理業において取り扱う顧客に関する非公開金融情報(中略)が、事前に書面その他の適切な方法により当該顧客の同意を得ることなく兼業業務(中略)に利用されないことを確保するための措置を講じなければならない

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

これも明確な趣旨はよくわからないが、銀行や銀行持株会社のグループにおいて、子会社において銀行代理業を営ませたり、あるいは1つの銀行持株会社の傘下に複数の銀行をもつグループの場合はそれぞれの銀行が互い違いに銀行代理業を営んでいるケースがある。

他方で、多くの銀行や銀行持株会社のグループにおいては、法人個人を問わず、オプトアウト方式による顧客情報の共同利用を行っており、オプトインを要求するこの規制とは実態として整合していなかったことが考えられる。

ちゃんと銀行代理業を営んでいるような銀行や銀行持株会社の子会社については、適切な形で事前同意を得て(オプトインで)、兼業に非公開金融情報を利用していたかもしれないが、グループ傘下にA銀行とB銀行があり、事務効率化等の観点からそれぞれが互いに銀行代理を行っているような場合、例えば、A銀行の顧客からの電話をB銀行が受け付けたときに、その顧客の非公開金融情報をB銀行がB銀行の業務に利用する旨の同意を得ているとは考えづらい(なお、口頭での同意取得も可能だが、その後速やかに書面送付により同意を取得することが必要とされている〔主要行等向けの総合的な監督指針Ⅷ-4-2-3(3)〕)。

ちなみに、この規制は、兼業業務に利用されないことを確保する措置を講じることであり、上記の例でB銀行が実際にはA銀行顧客の非公開金融情報をB銀行の業務に利用していたかどうかは問題とはならず、それを止める手立て(A銀行顧客の非公開金融情報であり同意取得/未取得がわかるようフラグを立てる等の手立て)がないことが問題となる。

もし銀行代理業を営んでいる多くの銀行や銀行持株会社の子会社において、銀行代理業において取り扱う非公開金融情報につきフラグが立つような仕組みを構築しているのであれば、仮に同意を得ていなくても問題ない。

その場合、本改正案により、フラグを立てる必要すらなくなることになり、相応の規制緩和といえるのではないだろうか。

(2) 所属銀行が講ずる措置

銀行代理制度においては、いわゆる「所属銀行制」が設けられており、所属銀行は、銀行代理業者が営む銀行代理業に関し、銀行代理業に係る業務の指導その他の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じなければならなず(銀行法第52条の58第1項)、加えて、所属銀行は、銀行代理業者がその銀行代理行為について顧客に加えた損害を賠償する責任を負う(同第52条の59第1項)。

本改正案では、銀行代理業者の銀行代理業に係る業務の健全かつ適切な運営を確保するための必要な措置のうち、次の点に関して、改正されることになる(改正点は太字部分)。

銀行法施行規則第34条の63第2号
銀行代理業者(所属銀行の属する銀行持株会社グループに属する銀行であるものを除く。以下この号において同じ。)における銀行代理業に係る業務の実施状況を、定期的に又は必要に応じて確認すること等により、銀行代理業者が当該銀行代理業の業務を的確に遂行しているかを検証し、必要に応じ改善させる等、銀行代理業者に対する必要かつ適切な監督等を行うための措置

銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)

これも想定するケースとしては上記(1)のように、1つの銀行持株会社の傘下に複数の銀行をもつグループの場合はそれぞれの銀行が互い違いに銀行代理業を営んでいるケースかと思われる。

このようなケースの場合、同一グループのそれぞれの銀行は、それぞれが銀行法に基づき金融庁等の監督を受けることに加え、銀行持株会社による経営管理も受けることになるため(銀行法第52条の21第1項・第4項)、過剰規制となっているということかもしれない。

ちなみに、本改正案は、銀行法施行規則第34条の63第2号を改正し、第3号以下の「銀行代理業者」から所属銀行の属する銀行持株会社グループに属する銀行を除いているところ、第1号の「銀行代理業者」からは除かれていない。そのため、第1号の研修の実施等の措置は、所属銀行から所属銀行の属する銀行持株会社グループに属する銀行である銀行代理業者に対して行われなければならない点に変わりない。(なぜ研修だけ別なのかよくわからない)

5.銀行等の付随業務として、銀行子会社・兄弟会社が行う他の事業者に対する研修業務、コンサル業務、調査業務等の代理・媒介業務を明確化


2021年銀行法改正における主要行等向けの総合的な監督指針等の改正では実質的な変更はなかったが、本改正案は主要行等向けの総合的な監督指針を実質的に変更するものとなる。(なお、ここでは主要行等向けの総合的な監督指針に言及しているが、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針等においても同様である)

主要行等向けの総合的な監督指針Ⅴ-3-2-2(1)
銀行が行う以下の業務も「その他の付随業務」に該当する。
① 取引先企業に対して行う人材紹介業務、オペレーティングリース(不動産を対象とするものを除く。)の媒介業務、M&Aに関する業務、事務受託業務(取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化の観点から、固有業務と切り離してこれらの業務を行う場合も含む。)
(注)人材紹介業務については、職業安定法に基づく許可が必要であることに留意すること。また、その実施に当たっては、取引上の優越的地位を不当に利用することがないよう留意すること。
② 個人(事業を行う場合におけるものを除く。)に対して行う財産形成に関する相談に応ずる業務
③ 銀行の子会社又は銀行持株会社の子会社が行う他の事業者の役職員に対する教育・研修業務、経営相談業務、金融等に関する調査・研究業務及び個人(事業を行う場合におけるものを除く。)に対して行う財産形成に関する相談に応ずる業務に関する代理・媒介業務

「主要行等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)
(ただし、丸数字は筆者が付けた)

このうち、①②は従前の内容と同じであるが、本改正案により明確化されたのは③である。

これは、金融庁が「見直し」や「追加」ではなく「明確化」といっていることからわかるとおり、従前から銀行や銀行持株会社のグループ内では行われていたことである。

ちなみに、「他の事業者等の役員又は職員に対する教育又は研修を行う業務」は銀行法でいう「従属業務」の1つであり(銀行法第16条の2第2項第1号、同法施行規則第17条の3第1項第18号)、「経営相談等業務」、「金融その他経済に関する調査又は研究を行う業務」、「個人の財産形成に関する相談に応ずる業務」は「金融関連業務」である(銀行法第16条の2第2項第2号、同法施行規則第17条の3第2項第15号・第16号・第17号)。

これらの業務は、特に法改正等がある場合に、銀行や銀行持株会社グループ内のコンサルティング会社(●●総合研究所)が研修等を担っており、銀行の顧客に対しそのセミナー等を案内することは通常よく行われている。

これまでは銀行法第10条第2項柱書の「その他の付随業務」として可能という整理がされてきたと思われるが、どういうわけか、今般、本改正案により明確化されるとのことである。

以上




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