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貧困家庭に産まれて#3訪ねてきたのはお向かいの老婦人

私が住んでいた貸家は、全部で7件の集落。大家さんが地主で、畑の隣に7件建っていた。

玄関が向かい合わせなので、会えば挨拶をしていたので、どんな人かは何となく分かる。

その中のひと家族に、老夫婦が住んでいた。70台後半位、娘が3人いるらしく末娘がよく孫を連れて遊びに来ていた。

いつも2人仲良さそうにしていた老夫婦。穏やかそうな性格のお二人だった。

私が中学生の頃、老夫婦の旦那さんがお亡くなりになったと、母から聞いた。それから暫くして、奥様が少し様子がおかしいと、又もや母から聞いた。老婦人は、炊飯器のスイッチが分からない、電話を掛けられないと、近所の方々に頼んで回っている様だった。

そんな話を聞いたある晩のこと。私が1人で家にいると、その老婦人がうちに訪ねてきた。普段老婦人と挨拶はするが、きちんと話した事がない為戸惑ったが、老婦人の目を見ていると切なくなり話を聞いた。

「電話をかけたいので、番号を押して欲しい」老婦人の家に行き、メモに書かれた番号に電話をかけた。どうやら娘さんの様だ。
「お前かい?寂しいよ〜遊びにきておくれよ〜」電話が切れないといけないので、話終わるまでそばにいた。泣きながら会話する老婦人。あの時の事は未だに鮮明に覚えている。

それから数ヶ月後、老婦人は娘さんの所に引き取られたと聞いた。幸せであって欲しいと願った。

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